著者
小槻 日吉三 市川 善康 上田 忠治 中野 啓二
出版者
高知大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、高効率な官能基変換プロセス実現のために、超高圧反応場の有用性を明らかにするとともに、そこから得られる情報を最大限に活用し、革新的な有機合成反応の開発に繋げることにある。その結果、以下の成果を得ることに成功した。1.アセタール類の無触媒的シアノ化反応の開発:アセタール類のシアノ化反応は、通常ルイス酸触媒存在下、アセタールとシアノ化剤との組み合わせで行われる。これに対し、Me_3SiCNをシアノ化剤とし、ニトロメタン溶媒中高圧反応を行うと、無触媒でも望むシアノ化反応がきれいに進行することを見つけた。2.アントラキノン類の高圧縮合反応を基軸とするステントリンの直接合成:我々は、ペリレンキノン系色素の構造と生理活性に興味をもちそれらの合成研究を行っている。今回、アントラキノン誘導体の二量化反応による直接的な合成を検討し、アルカリ条件下、過剰のヒドロキノンを加え高圧反応を行うと、目的とするジメチルステントリンCが好牧率で得られることを見つけた。3.尿素類の高圧縮合反応を基軸とするBiginelliタイプの多成分連結反応:Biginelli反応は尿素と活性メチレン化合物、アルデヒドとの3成分連結反応として、ジヒドロピリミジノン系化合物合成の重要な反応である。今回、低反応性ケトンを基質として、脱水剤となる(MeO)_4Si及び酸触媒存在下高圧縮合反応を行うと、期待する多成分連結生成物が牧率よく得られることを見つけた。4.新規屋根型キラルアリールプロリン触媒の開発:有機不斉触媒の開発と利用を目的とした合成研究の一環として、アントラセンのDiels-Alder反応を出発とする新規屋根型キラルアリールプロリン触媒を分子設計した。この計画を実行に移すため、アントラセンと無水マレイン酸とのDiels-Alder付加物を出発として、光学分割を経由する方法で不斉触媒の開発を行った。