著者
杉本 あおい 杉野 弘明 上田 昌子 船坂 香菜子
出版者
日本沿岸域学会
雑誌
沿岸域学会誌 (ISSN:13496123)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.49-58, 2020-12-31 (Released:2023-04-17)
参考文献数
36

要旨:超高齢化社会の到来を前に,農山漁村を含む地域の活性化が喫緊の課題として叫ばれている。この課題解決の一方策として「関係人口」の創出と活用が社会的に注目されているが,これについての実証研究はまだ十分ではない。そこで本稿は,この実態を実証的に明らかにし,これが地域活性化に貢献すべく今後深められるべきテーマについて論じることを目的とする。全国5,000人に対するアンケートの結果,「関わりのある地域(関係地)」を有していると回答したのは40.4%(うち漁村部3.5%,郊外部34.6%,都市部48.6%,農村部11.1%,その他2.2%)であった。関わり方としては血縁関係やライフイベント(就学,就労など)を介したものと共に,それらを介さない関わり方も多く存在し,そうした関わりによって高い地域愛着を有する人々が日本全国に存在すること,他方で血縁を介した地域に負の愛着を有する人々も多く存在することが示された。人と地域の関係性には血縁の有無に関わらず正負双方の多様性があり,農山漁村を含む地域の活性化方策を検討する際には単に人口の量的拡大でなく,地域愛着を含む関係性の「内実」により着目した議論が発展する必要がある。