- 著者
-
上西 良廣
- 出版者
- 農業情報学会
- 雑誌
- 農業情報研究 (ISSN:09169482)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.3, pp.127-142, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
-
2
本稿では,近年注目される「生物多様性保全型技術」を対象とし,効果的かつ効率的な普及方法を解明することを目的とした.新潟県佐渡市において普及活動が進められている「朱鷺と暮らす郷認証米」を対象事例とし,技術導入に関する試行段階と確認段階の意思決定,さらに中断,非導入の理由に注目して分析した.まず導入者と非導入者の特徴を比較した結果,居住集落や水稲経営面積,経営理念,シンボルとの関係性などに違いが見られることが明らかとなった.次に,導入動機の分析から,先行導入者は主にシンボルである生物への貢献や商品の差別化などの側面に価値を見出して技術を導入していた.また,中断者による中断理由を分析した結果,中断者をなるべく出さないようにするためには,トキ米の生産者を対象とした研修会を開催して栽培要件や栽培方法に関する情報を提供することや,高い精算金の実現などが有効であると考えられる.最後に,非導入理由の分析から,新規導入者を確保するにあたっては,トキ米の説明会を開催し,トキ米やエコファーマーの申請方法,さらには栽培要件に含まれる生き物調査の実施方法に関する情報を提供することが有効であると考えられる.