著者
伊藤 淳士 郭 威 田口 和憲 平藤 雅之
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.28-38, 2018 (Released:2018-06-29)
参考文献数
8

近年,作物試験圃場などでフィールドフェノタイピングにドローンを活用する事例が増加している.そのような目的を持った空撮においては,低空で複数の画像を撮影しオルソモザイク処理をしたのち,位置情報を付加してGeoTIFFで保存するといった処理が行われる.GeoTIFFは,画像サイズが大きくなる傾向にあり,一般的な画像ビューアでは閲覧が円滑に行えない場合も多い.さらに,ウェブ上でそれらの画像を配信し閲覧させることは非常に困難である.そこで,筆者らはIIIFの技術を活用し,ウェブ上で高解像度画像を円滑に配信する手法を開発した.本手法は,GeoTIFFをあらかじめ地図タイルに変換しておくことで,画像をIIIFの仕様に従い円滑に配信できる.本手法は,配信された画像が既存のIIIF対応の画像ビューアでも閲覧できるという点で汎用性が高い.また,IIIF対応の既存のライブラリを活用し独自のビューアの実装も行い,柔軟性の高い運用が可能であることを示した.
著者
野口 良造 関根 千里
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.86-94, 2010 (Released:2010-12-27)
参考文献数
26

飲食店・食品加工場,清掃業者,地方自治体を対象にアンケートを行い,グリストラップの清掃頻度と費用,排水中の動植物性油脂を利用したCO 2排出量の削減をともなうエネルギー利用の可能性,公共下水道の建設・維持管理について検討を行った.飲食店・食品加工場は,動植物性油脂を含む排水に対する問題意識が低いが,グリストラップ清掃業者や地方自治体は,このような排水に対して高い問題意識があった.排水管の閉塞による追加的な維持管理費用や,環境汚染による社会的費用を,動植物性油脂を排出していた飲食店・食品加工場が負担することになれば,油脂回収装置の導入が進む可能性があることが示された.また,油脂回収装置によって回収できた油脂によって,CO 2排出量の削減をともなうエネルギー利用が可能であれば,油脂回収装置の導入経費の削減に寄与できることが示された.さらに,公共下水道を管理する地方自治体の立場からみれば,排水中の動植物性油脂が引き起こす公共下水道の閉塞を改善するためには,現在の下水道を改善するよりも,排出側のモラルを向上させるととともに,排出規制を厳しくしたほうが効果的であることが明らかとなった.
著者
高山 太輔 中谷 朋昭
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-25, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
12
被引用文献数
6 2

耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において,農業生産の維持を図りつつ,多面的機能を確保するという観点から,2000年度より「中山間地域等直接支払制度」(以下,直払い制度)が導入された.直払い制度の効果については,耕作放棄の防止,集落・地域活動の維持活性化,多面的機能の確保等があげられている.本稿の目的は,北海道の農業集落を対象として,政策効果が発揮されると予想される項目の中から,耕作放棄地率に着目して,直払い制度によって耕作放棄地率の増加がどの程度抑制されたのかを計測することである.この目的を達成するためには,地域農業の現状を記録した農業情報を必要とするが,本稿では2000年と2005年の農林業センサスの農業集落カードを利用した.また計測にあたっては,政策効果をより偏りなく推定する方法として利用される「差分の差」推定法を用いた.処置群の直払い制度前後の変化を対照群と比較した「差分の差」推定の結果,直払い制度は,北海道の全集落,上川空知の水田集落ともに耕作放棄地率の悪化を緩和する効果があることが認められた.
著者
朱 成敏 小出 誠二 武田 英明 法隆 大輔 竹崎 あかね 吉田 智一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.143-156, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
19

本研究では農業ICTシステムのデータ連携における標準語彙として農作業基本オントロジーを提案する.農作業基本オントロジーは,様々な農作業に対して記述論理に基づく定義と構造化を⾏うことで,農作業名称が持つ意味の多様性を明確に記述している.また,同義語や関連情報も収録されており,データ間の連携や統合における基準情報として活⽤することができる.これにより,異なる農業ICTシステムからのデータを連携させて分析することが可能となる.さらに,農作業同⼠の意味関係を論理的に定義することにより,農業データの意味把握と分析も容易となる.農作業基本オントロジーはLinked Open Data(LOD)形式でも公開されており,相互運⽤性と機械可読性が確保されている.農作業基本オントロジーは農作物に関する情報や国内外の農業に関連する情報体系とも連携されており,⾼度な知識処理が可能な農業分野における知識基盤としての利活⽤が期待される.最後に農作業基本オントロジーの応⽤事例として統計調査の⾃動化とオントロジーによる農作業の推論を紹介し,その有⽤性と可能性について検討する.
著者
井口 信和 横前 拓磨 溝渕 昭二 向井 苑生
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.39-52, 2011 (Released:2011-07-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

多くの組織において,環境計測などを目的にセンサデータの活用が進められている.計測サイト間でセンサデータを交換するためには,Webサーバ等によって,センサデータがインターネット上に公開されている必要がある.しかし,Webサーバやデータベースの運用上の問題やセキュリティ上の問題があるため,すべての計測サイトがWebサーバ等を運用できるとは限らない.さらに,NAT問題への対応や多くの種類のセンサへの対応も必要となる.そこで本研究では,センサデータの容易な交換を可能とするシステムを開発した.本システムによって,センサデータの効率的な検索と取得が可能となる.また,開発したノード用機能を導入することで,NAT環境においてもセンサデータの公開が可能なため,Webサーバ等の運用は必要ない.さらに,センサの種類の追加が簡単に行える機能を実装した.このシステムをハイブリッドP2P技術に基づいて開発した.本システムの基本的な能力を確認する実験を行ったので,本論文でその結果について報告する.
著者
崔 炳玉 永木 正和
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.91-102, 2006 (Released:2007-05-11)
参考文献数
10

卸売市場の価格決定方法は, 従来のセリ方式にかわって, 相対方式が増大している. 近年の川下の流通環境の変化に対応するものであるが, こうした卸売市場における形成価格が変遷する中, 現在の卸売市場の価格がさまざまな取引形態に対して適切な指標価格として機能しているかどうかを検証してみる必要がある. そこで本研究は, 東京都中央卸売市場の9卸売市場における主要野菜品目の卸売市場平均価格に関する「価格効率性」を, Fama (1976) の弱度効率性仮説に基づいて, 時系列分析法の援用によって計量的に検証する. 分析期間は1989年から2002年までの14年間で, 卸売市場の価格決定方式が大きく変遷した2期に区分して, 価格効率性の比較分析を行った. 分析手順は, Engle and Granger (1987) が提示した2段階推定手続きによる.分析結果によると, 相対取引がかなり伸長した現在の東京都中央卸売市場は, 入荷量変動に起因して短期には価格変動を起こしているが, 長期均衡の観点からは, 外的ショックを回復させようとする価格挙動が統計的に確認され, 以前よりも価格安定指向を強めていた. また, その結果でもあるが, 東京都内の中央卸売市場間の, いわば空間的価格格差も縮小していた. 時系列的にも, 空間的にも価格均衡を指向する作用が機能していて, 現在の卸売市場価格は効率的であると結論づけた.
著者
吉田 晋 植野 慎介
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.65-76, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
16

農業分野におけるICT活用の研究が進められているが,環境センサネットワークシステムのコスト高や,圃場での電源確保の課題により,まだ広く普及していない.農業ICTの活用事例を増やし広く普及させるためには,環境センサネットワークの低価格化だけでなく,それと組み合わせる独立電源の低価格化が必要である.近年,太陽電池価格は急激に低下してきたが,独立電源システムの選定方法が明らかでない.本研究では,低価格環境センサ用独立電源について,低電圧直流負荷装置の電流に対する太陽電池および蓄電池の選択手法について検討し,その選定手順を明らかにした.センサ部用と,データ収集の為のゲートウェイ用の低価格独立電源を設計した.また,センサ部の負荷電流の低減検討と発電用太陽電池を日射計と兼ねることで環境センサ部全体のコスト低減を行った.製作した独立電源を用いた環境センサの実証実験を行った結果から安定した電源確保が確認できた.
著者
上西 良廣
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.127-142, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
24

本稿では,近年注目される「生物多様性保全型技術」を対象とし,効果的かつ効率的な普及方法を解明することを目的とした.新潟県佐渡市において普及活動が進められている「朱鷺と暮らす郷認証米」を対象事例とし,技術導入に関する試行段階と確認段階の意思決定,さらに中断,非導入の理由に注目して分析した.まず導入者と非導入者の特徴を比較した結果,居住集落や水稲経営面積,経営理念,シンボルとの関係性などに違いが見られることが明らかとなった.次に,導入動機の分析から,先行導入者は主にシンボルである生物への貢献や商品の差別化などの側面に価値を見出して技術を導入していた.また,中断者による中断理由を分析した結果,中断者をなるべく出さないようにするためには,トキ米の生産者を対象とした研修会を開催して栽培要件や栽培方法に関する情報を提供することや,高い精算金の実現などが有効であると考えられる.最後に,非導入理由の分析から,新規導入者を確保するにあたっては,トキ米の説明会を開催し,トキ米やエコファーマーの申請方法,さらには栽培要件に含まれる生き物調査の実施方法に関する情報を提供することが有効であると考えられる.
著者
朴 壽永 安江 紘幸 中尾 宏
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-13, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
30

多量の情報がインターネットでやり取りされるIoT(Internet of Things)の時代で,ICT(Information and Communication Technology)を利活用した実用性の高いウェブ型SWOTやTOWS分析ツールはまだ見当たらない.また,参加者以外によるアイディア発想を促す手法も確立されていない.日本の農業は,高齢化に伴う離農や耕作放棄地の増大,グローバル規模での市場開放など大きな変化に直面しており,これらの課題解決と農業振興を図る上で従来にない様々なアイディアが求められている.そこで本稿では,豊かなアイディアの発想を促すため,インターネット上でブレインストーミングやKJ法によるアイディア発想が具現できるiSWOT(internet SWOT analysis tool)を開発した.そして,アイディアとアイディアが互いに干渉して第2のアイディア発想を促すことを干渉作用と呼んでいることから,参加者による干渉を内部干渉に,プログラムによる干渉を外部干渉に分け,内部や外部干渉作用を果たす複数の機能をiSWOTに実装した.若手農業生産者と普及指導員を対象にiSWOTを用いて機能テストを行った結果,その有用性が示唆された.
著者
Dongpo Li Teruaki Nanseki Yuji Matsue Yosuke Chomei Shuichi Yokota
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39-46, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2

Paddy production in Japan is currently undergoing a transition, moving away from the former acreage reduction policies of the 1970s to improve the sector’s efficiency and competitiveness. Meanwhile, agricultural production corporations and the adoption of information and communications technology (ICT) and good agricultural practices (GAP) have been steadily increasing over last decades. This study aims to identify the determinants of paddy yield measured by IT combine within large-scale farms. The sample includes 351 paddy fields from a farm corporation scaled over 113 hectares, located in the Kanto Region of Japan. The candidate determinants include the continuous variables of field area and condition evaluation scores, transplanting or sowing time, and amount of nitrogen, as well as stage-specific growth indicators for chlorophyll contain, number of panicles, plant height, and leaf plate value. Meanwhile, three discrete variables including variety, cultivation method, and soil type are also adopted. Empirical analysis is conducted using a multivariate linear regression, with logarithmic transformations of the continuous variables. Of the continuous variables, transplanting or sowing time is identified as possessing the largest absolute standardized regression coefficient, and thus be the most important determinant. The negative coefficient indicates that earlier transplanting or sowing benefits vegetative growth, thus panicle number and plant height in heading stage, which are identified as positively significant together with field area, and amount of nitrogen. Of the discrete determinants, Akidawara is measured as a productive variety; while the well-drained and submerged direct sowing methods are identified as negatively affecting the yield.
著者
井元 智子 北本 朝展
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.236-246, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1

農業分野におけるITの適用は集約的作物に多く,粗放的作物にはほとんどみられない.本研究では,南西諸島における主要作物のサトウキビを対象とし,粗放的作物に対するITの活用,特にリアルタイム情報共有の効果を検討する.サトウキビは収穫後に製糖工場にて加工される.この工芸作物としての特徴に着目し,サトウキビ収穫作業を支援するための携帯端末型アプリケーション“しゅがなび”を開発した.収穫機械の作業オペレーターが“しゅがなび”を使用することで,その位置情報と作業情報がサーバーに送られ可視化される.“しゅがなび”を使用することにより,天候などによる収穫計画の遅れに対して収穫機械を適正に,かつ迅速に再配置するための支援が可能となった.次に,収穫作業に関係する農家・オペレーター・製糖工場の,収穫期間において刻々と変化する収穫状況に関する情報の共有状況を精査した.その結果,一部でのみ共有されている情報が多く,“しゅがなび”による情報の共有化が,収穫順番における三者の合意形成に活用可能であることが示唆された.最後に,関係者全員が収穫期間を通して“しゅがなび”を使用することにより,実際の導入における問題点を明らかにした.
著者
藤井 吉隆 南石 晃明 小林 一 小嶋 俊彦
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.142-158, 2013 (Released:2013-10-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1 4

本研究は,大規模水田作経営の作業計画に関わる熟練ノウハウの内容と特徴を解明するとともに,雇用型法人経営における従業員の能力養成方策確立の指針を提示することを目的とする.調査は滋賀県の雇用型法人経営を対象に実施した.その結果,作業計画に関わる知識・技能数はかなり多く,知識では,(1)農作業と同様に経営固有知識の占める割合が高く,多様な状況に応じて使い分ける内容が多いこと,(2)経営固有知識は知識の固有性の程度に応じて応用型,固有型に大別できることなどを明らかにした.また,技能では知的管理系技能が中心的であり,(1)判断の性質に応じて確定判断型,予測判断型に大別できること,(2)関連する知識・技能や情報を考慮して総合的に判断する技能であることを明らかにした.そして,非熟練者は経営固有知識や知的管理系技能の習得状況が低く,雇用型法人経営における従業員の能力養成に際しては,(1)経営固有知識などの准暗黙知を形式知化して体系的に整理する取り組み,(2)知的管理系技能の判断に必要な要因の全体像の把握を支援する取り組み,(3)予測判断型の知的管理系技能の判断に必要な状況変化の予測を支援する取り組み,(4)実践的なOJT(On the Job Training:職場内教育訓練)や計画的な労務管理の実施が重要になることを明らかにし,これらの具体的な取り組み方策を提案した.
著者
橋本 仁 内海 富博 行松 健一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.9-21, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

本論文は,秋田県大潟村を適用対象と想定した農業支援のための情報ネットワーク構築に関する検討結果を述べるものである.当面の実現目標は,リアルタイムビデオ信号も伝送しうる10 Mbpsオーダの通信ネットワークであり,現状では電力供給手段のない圃場全体をいかに安価にカバーするかが,最大の研究課題である.具体的には,IEEE 802.11 b/g規格の公衆無線LAN用機器と小型風力/太陽光発電システムを用いた系を考え,現地での気象条件や地理的条件を考慮したシステム設計法を検討した.さらに,検討結果の妥当性を検証するため,実験システムを大潟村に構築し,実機による動作実験を行った.技術的には,IEEE 802.11 b/g規格の機器を用いて通信速度10 Mbps以上での長距離無線伝送を達成することが最も大きな課題であったが,3区間構成のマルチホップ無線伝送によって,排水路の水位を測定するための水位計と監視用ビデオカメラの情報を,約8 km離れたサーバに正常に伝送できることを確認した.
著者
北村 豊 杉山 純一 佐竹 隆顕
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.91-98, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Webベースで登録された農産物・加工食品の生産情報およびレシピ情報をインターネット接続したパソコン(ICタグ端末)に転送・閲覧できる情報開示システムを構築した.ICタグ端末は,ICタグを封入した農産物や加工食品,レシピカードを付設のリーダーにかざすことにより,ICタグの固有番号にリンクされる情報を画面上に表示する.ICタグ端末をつくばみらい市のモデル住宅の台所に設置して,500名弱の男女からその試用体験に関するアンケート調査を実施した.回答結果の解析により,情報開示システムの利用可能性や情報の有用性,ICタグ端末の設置場所およびその利用形態の考え方など,今後の改良および用途開発のための基礎資料が得られた.
著者
宮﨑 達郎 松下 秀介 氏家 清和
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.42-49, 2012
被引用文献数
1

東海地震は発生が予想される国内有数の震災であるが,その家庭対策の1つとして食料品備蓄が挙げられている.本研究は家庭による食料品備蓄の普及のために,食料品備蓄の便益と費用に対する家庭の評価の形成要因を明らかにすることを目的とした.分析に用いたデータは2011年5月に静岡県静岡市において実施した調査より収集した.分析結果より,食料品備蓄が実施されない理由として,食料品備蓄の必要性が十分に家庭に認識されていないこと,備蓄の計画を立てる能力が不足していることが考えられた.また,食料品備蓄を実施しても継続を断念してしまう家庭が存在するが,その理由として,食料品の買い出しの手間や備蓄食料品の消費の問題,備蓄スペース等の負担が,食料品備蓄を実施した経験により増幅され,顕在化した可能性が考えられた.他方,食料品備蓄の知識が豊富な家庭ほど,食料品備蓄の必要性を認識し,食料品備蓄実施に伴う様々な負担も感じにくい傾向があることが指摘された.さらに,各家庭が持つ備蓄食料品の食味や消費期限に関するイメージが,食料品備蓄の費用に対する評価に大きく影響することが分かった.以上より,地方公共団体や農林水産省等関係機関による情報提供や,備蓄食料品の食味の改良等,高品質化による食料品備蓄の普及の可能性が指摘された.<br>
著者
緒方 裕大 南石 晃明 長命 洋佑
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

農業経営における情報通信技術ICTの活用が進んでおり,今後もその重要性は増していくと考えられる.ICT機器の開発や試用は行われているが,ICTを活用している経営による費用対効果の評価を分析した研究は少ない.本稿では全国の農業法人経営を対象にしたアンケート調査をもとに,農業法人経営のICT費用対効果に対する評価の「背後に潜む構造」を明らかにした.まずICT費用対効果の潜在因子を抽出するために因子分析を行った結果,「生産の見える化」,「経営の見える化」,「利益確保」の3因子が抽出された.人材育成に対するICT活用の評価は「生産の見える化」,「経営の見える化」という2つの因子に高い因子負荷量を示しており,求める人材によって異なる因子の影響を受けることが示唆された.次いで,経営属性と因子との関係を分析した結果,ICT活用の評価が高いのは,経営類型別では「利益確保」における畜産経営であった.売上高別では「生産の見える化」と「経営の見える化」において売上高が高いほどICT活用の評価が高くなる傾向があり,「利益確保」においては「1–3億円」の経営が費用対効果が最も高かった.従事者数別では「生産の見える化」において従事者数が多いほどICT活用の費用対効果が高くなる傾向があった.
著者
吉田 智一 高橋 英博 寺元 郁博
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.187-198, 2009 (Released:2009-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
8 4

多数の圃場を管理する地域農業の担い手が直面している栽培管理事務作業を効率化し負担を軽減する目的で,GIS互換の圃場地図を使用した作業計画管理ソフトを開発している.このソフトは作物生産に関係する圃場や作付から一連の栽培作業,収穫後の調製・出荷に至るまでの様々な生産過程で発生する情報をデータベース化して管理することを基本とし,そのユーザインタフェイスにGIS互換の圃場地図を使用して直感的に分かりやすい視覚的なデータ入力および表示を実現しているところに一つの特長がある.同様の機能は市販のGISソフトを用いても構築可能であるが,本ソフトではデータベースエンジンやマップ表示にランタイムライセンスフリーのコンポーネントを使用し,その上に圃場管理や農作業管理に必要なユーザインタフェイスを実装していることから,無償配布可能となっていることにもう一つの特長がある.本ソフトはWeb公開による利用者からのフィードバックに基づき機能を改良・拡充しながら,現場農業者への普及を進めている.
著者
建本 聡 原田 陽子 今井 健司
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.108-114, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
22

本研究では,深層学習による物体検出(SSD)と熟度判定用の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を組み合わせ,画像からウメの果実の熟期を判断する方法を検討した.2018年6〜7月に,ウメ「露茜」の樹上の果実についてデジタルカメラにより静止画及び動画を取得した.果実領域を切り出すためのSSDの学習は,撮影した画像443枚を用いた.学習したネットワークの性能は,しきい値0.47で,F値0.88であった.次に熟度判定用のCNNの学習のため,SSDにより切り出した5,823枚の画像を熟度別に肉眼で5クラスに分類し教師とした.学習したネットワークの識別の精度は94%であった.これらを組み合わせた精度を判定するために,学習に用いていない画像から,SSDによりしきい値0.47で366枚の果実画像を切り出し,続けて画像を熟度判定用のCNNで分類したところ,識別の精度は96%であった.よって,撮影画像から本手法により果実領域を切り出し,熟度判定が良好に行えることが示唆された.
著者
戸板 裕康 小林 一晴
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

ユビキタス環境制御システム(UECS)の通信実用規約1.00-E10(実用規約)に対応し,シングルボードコンピュータRaspberry Piで動作するオープンプラットホーム「UECS-Pi(ウエックスパイ)」を開発した.栽培施設等で利用される汎用的な計測・制御機能があらかじめ実装された基本パッケージを利用すれば,短期間でノードを製作可能である.さらに,オープンソースのソフトウェア開発キット(SDK)を用意し,ユーザ独自の機能を追加可能にした.UECS-Piを用いて外気象計測ノードと複合制御ノードを製作し,トマト温室にて3ヶ月間の実証試験を行った.本試験ではノードの製作期間,コスト,可用性,ソフトウェアの有用性を評価した.評価の結果,低コストで実用可能なUECSノードを製作可能であることが示された.本プラットホームによって,特定メーカに依存しない低コストUECS対応トータルシステムを構築可能となった.
著者
磯島 昭代
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-60, 2006 (Released:2007-05-11)
参考文献数
16
被引用文献数
5 2

米に関する消費者意識を解明する研究として, これまで主に選択肢式のアンケート調査やグループインタビューなど少人数を対象とした面接調査が行われてきた. アンケート調査で得られる自由記述回答文は, 大量の定性的データであり, 新たな知見を得る重要な情報源と考えることができる. これまでこうしたデータを分析する有効な手法がなかったが, テキストマイニング手法の開発により, 大量の文章データを計量的に分析することが可能となった. そこで, アンケート調査で得た自由記述回答文にテキストマイニングを適用し, 米に関する消費者意識の解明を試みた. その結果, 消費者の米に対する関心は「米購入」, 「日本の米と農業」, 「安全性」に大きく分けられることがわかった. さらに, 「米購入」に関しては専業主婦層が, 「日本の米と農業」に関しては60歳以上の男性が, 「安全性」に関しては農薬の使用に敏感な人がよく記述する傾向にあることが明らかとなった.