著者
小山 政史 上野 宗久
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.23-28, 2011 (Released:2014-02-07)
参考文献数
20

5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた術中光力学的診断(PDD)は通常光では視認困難な腫瘍の同定やサージカルマージンの検索に有用である.泌尿器科領域では従来,膀胱癌に対して5-ALAを膀胱内注入してきたが,内服が可能なことより,最近では腎細胞癌に応用され5-ALAの腫瘍特異性が確認されている.また,腹腔鏡下腎部分切除術に5-ALA-PDDを併用することでサージカルマージンの蛍光発色部位に病理組織学的に癌細胞が確認されている.5-ALA-PDDが手術中リアルタイムにサージカルマージン同定に寄与する可能性が示唆された.尚,5-ALAによる有害事象は本稿で紹介した報告では認めていない.
著者
青沼 佳代 矢内原 仁 上野 宗久 出口 修宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.745-751, 2007-09-20

(目的) PlasmaKinetic (PK) system<sup>®</sup> は生理食塩水で灌流を行う TUR system である. そのため術中に低ナトリウム血症を発症しないという従来の monopolar 電気メスでは解決できなかった大きな利点がある. PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った46例における1年間の臨床経過を報告する.<br>(対象と方法) 2004年6月22日から2005年11月17日までの間に PK system<sup>®</sup> を用いてTUR-Pを行った前立腺肥大症を有する46症例について安全性, 有用性を検討した. 麻酔は腰椎麻酔40例, 仙骨部硬膜外麻酔6例に施行した. 臨床成績として国際前立腺症状スコア (IPSS), QOLスコア, 最大尿流量率 (Qmax), 残尿量 (RUV) の各項目を評価し, 術前, 術後1ヵ月, 3ヵ月, 1年のデータを比較した. れ性機能につき国際勃起機能スコア (IIEF5) で術前と術後1年を比較した. また, PK system<sup>®</sup> の切除凝固能について従来の monopolar TUR と比較し, 組織学的検討を加えた.<br>(結果) すべての症例で術中低ナトリウム血症などの合併症を認めず安全に手術が施行でき, 術後経過においても良好な臨床経過を得られた. 手術時間は99.0±43.2分, 灌流液使用量は28.2±16.3L, 前立腺切除重量は35.3±19.4gであった. 尿道カテーテル抜去までの日数は1.7±1.0日, 術後入院日数は4.3±2.4日であった.<br>術前と術後1ヵ月, 3ヵ月及び1年の時点におけるIPSSは28.2±7.4から6.1±5.9, 2.7±3.5, 6.6±5.3, QOLスコアは5.4±1.0から0.9±1.2, 0.6±0.9, 1.3±1.1と有意に低下した. また最大尿流量率 (ml/s) は3.7±4.0ml/sから19.5±9.6, 17.9±7.3, 18.7±9.9ml/sと有意に増加した. 排尿後残尿量は104.8±83.6mlから19.4±25.0, 11.1±247, 17.9±28.5mlと有意に減少した.<br>性機能についてはIIEF5による術前, 術後1年の統計を調査し, それぞれ6.2±5.2, 6.0±5.3であった. 術後勃起障害を訴えたのは2例であった.<br>組織学的検討ではPK system<sup>®</sup> の切開面は出力を上げても切開面における炭化組織の付着は認められなかった.<br>(結論) PK system<sup>®</sup> は従来の monopolar TURに匹敵する切除, 凝固能を有しており安全にTUR-P行うことが可能であると考えられた. 一年間の経過観察において, 良好な結果を得られたことからも, 今後広く普及するものと考えられた.