- 著者
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坂本 亘
上野 正博
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1988
魚類の遊泳行動に見られる日周活動リズムの持つ役割を、魚群形成過程の面から検討した。カタクチイワシは活動機能が低下すると浮上し、機能が活発になると沈降し深い層に移動する。この傾向は比較的初期の仔魚期からあらわれることを確かめた。さらにこの浮上・沈降の日周性と流れの鉛直シア-とを組み合せると種ごとに移動して行く方向に差が生じ、次第に魚種ごとの群となって行くことを確かめるため、海洋において実験を行なった。鉛直シア-、つまり表層から次第に深い層に行くにつれ流向が変る傾向は若狭湾西部において明確にあらわれていることを確かめた。特に表層と10mとで比較すると、表層では沖合へ、10m層ではそれと全く逆の湾奥方向へ流れていることを実測により見出した。また、この流れの測定と同時に表層と10m層のカタクチイワシ仔魚の分布密度を比較したところ、表層に分布する仔魚は流れの収束・発散の影響を受けて、集中分布をする傾向が強いことがわかった。仔魚は微細なため、長時間連続的に遊泳行動を記録するための特殊な自動記録装置を開発した。これは発光ダイオ-ドと光トランジスタを230個組合せて作られており、仔魚が発光部を通過すると、その位置・時刻が自動的にマイクロコンピュ-タの中に記録として取り込まれるようになっている。測器の開発及びプログラムに1年半を要したために、カタクチイワシの仔魚発生時期(6月から8月)の研究の間に合わなかったが、カワムツを用いた実験では日周活動リズムを記録することに成功した。これらのカタクチイワシによる日周活動リズムの解析と並行して、実際に海洋を回遊しているアカウミガメの日周活動リズムの解析にも成功し、この活動リズムが大規模な回遊をする際の定位と深いかかわりのあることを確かめた。この部分はすでに学会誌に報告した。