著者
倉持 卓司 上野 香菜子 厚井 晶子 長沼 毅
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.45-50, 2013

日本の代表的な内海である瀬戸内海より得られたドングリシャミセンガイLingula rostrum (Shaw,1798)の外部形態,および,分子生物学的な比較検討を行った。試料は瀬戸内海の岡山県沖備讃瀬戸より得られたドングリシャミセンガイを用い,倉持ら(2012)によるミドリシャミセンガイLingula anatina (奄美大島産)とウスバシャミセンガイLingula reevii (有明海産)の報告と比較した。ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,殻の形態,および,生時の肉茎の色彩により,外部形態でミドリシャミセンガイ,ウスバシャミセンガイと区分される。また,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)の18S rRNA遺伝子の塩基配列を,ミドリシャミセンガイ(奄美大島産)とウスバシャミセンガイ(有明海産)と比較したところ,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,ミドリシャミセンガイ,および,ウスバシャミセンガイの両種とは異なるクレードに属することがわかり,分子系統的にも離れた分類群として扱われるべきであることが示唆された。