著者
長沼 毅
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
資源と素材 (ISSN:09161740)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.1-9, 2004 (Released:2006-04-11)
参考文献数
46
被引用文献数
1

The Earth is the miraculous body, where its planetary conditions fit the conditions for life and the Sun's mercy gives rise to the prosperity of life. The eat-eaten connection of life is known as food chain, and almost all of the food chains on Earth start from photosynthesis, and photosynthesis depends in turn on the radiation from the Sun. In this sense, most of the Earth's organisms are Sun-eaters ultimately. However, recent studies proposed the significance of the lives independent of photosynthesis such as the ones in deep-sea and deep subsurface. Findings of the life in the dark facilitate the recognition of Earth-eaters, and the idea that deep subsurface of the Earth (and possibly other planetary bodies) serves as the cradle and nursery for life.The idea of deep subsurface life is not necessarily new, however, it is since 1980's that the idea has been scientifically hypothesized and tested. By now, the existence of deep subsurface biosphere is scientifically recognized, and current interests are placed on: the abundance (biomass), diversity, biological limit (potentials), involvement in biogeochemical cyclings, and association with the origin(s) of life. Even astrobiological curiosity relates the ubiquity of "life in the dark" in deep subsurface to the presumed presence of extraterrestial life. This communication provides the geo-biological background of the deep subsurface biosphere and reviews some important topics from recent studies.
著者
長沼 毅 Takeshi NAGANUMA
出版者
創価大学人間学会
雑誌
創価人間学論集 (ISSN:18827942)
巻号頁・発行日
no.9, pp.51-79, 2016-03-16
著者
長沼 毅
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ハオリムシ(有鬚動物)は、後生動物にも関わらず口・腸・肛門といった消化器官を欠き、自ら食べることを放棄した生物である。その代わり、トロフォソーム(栄養体)という組織にイオウ酸化細菌を共生させている。本研究ではハオリムシの体内細菌(共生細菌かどうかは調査中)の多様性について遺伝子からの解析を行った。ハオリムシの採取は潜水調査船「しんかい2000」を用いて行った。相模湾の初島沖メタン湧水域(水深1170m)に生息するハオリムシ(Lamellibrachia sp.)とその周辺の堆積物を採取した。ハオリムシのトロフォソーム内容物と堆積物よりそれぞれDNAを抽出し、PCRにより16S rDNAクローン・ライブラリー(>110株)を作成し、塩基配列解析を行った。この結果、ハオリムシ体内の微生物相からRhodobacter (硫黄酸化細菌)やEnterobacter(腸内細菌科に属しメタン酸化細菌に近縁)といった化学合成細菌を含む複数種(>6種)の存在が確認された。これらの細菌は、ハオリムシのトロフォソーム内でmicrobial consortiumを構成し、メタンや硫化水素といった数種類の化学物質を利用した代謝経路により、宿主ハオリムシに有機栄養を供給していると考えられる。また、ハオリムシ体内細菌相と周辺の堆積物中の細菌相には、類似性のあることもわかった。今まで、ハオリムシの精子や卵から共生細菌が見つかっていないことや、ハオリムシは浮遊生活をおくる幼生初期段階には口や腸を一時的に持つことなどから、共生細菌は周囲の環境中から体内に取り込まれた可能性がある。しかし、今回シーケンスによって得られたハオリムシ体内細菌相と堆積物中の細菌相では構成種の存在比率が異なることから、比較的共生しやすい細菌とそうでない細菌がいると思われる。
著者
長沼 毅
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.363-384, 2013
被引用文献数
2

&emsp;The deep subsurface biosphere has been regarded as an emerging topic in geo-bioscience and industry for the past few decades, and has been approached by terrestrial and seafloor drillings. Terrestrial sites have better proximity and greater relevance to the anthroposphere and technosphere, <i>i.e.</i>, human habitats and societies, than do seafloor sites. Therefore, understanding the subterranean biosphere has more direct importance to issues related to a sustainable civilization, and issues such as formation/maturation of hydrocarbon reservoirs and ore deposits, disposal of radioactive wastes and carbon dioxide, and postulated association between seismogenic and microbial activities. Microbiological studies in the terrestrial deep subsurface have been prompted to respond to such human-related issues, and microbial life in sedimentary and crystalline rocks as well as pore-filling fluids has been studied to evaluate rock stability and (im) mobilization of redox-sensitive elements/nuclides, for instance. This is in contrast to subseafloor microbiology, which focuses more on microbial interactions with hydrothermal circulation, relevant biogeochemical processes including gas hydrate formation, associated diversity of life, and modern analogs of origin-of-life.<br>&emsp;Avoiding man-induced contamination of cored samples and pumped fluids has been a microbiological issue. Technical (both instrumental and operational) measures to minimize contamination were first developed in subterranean microbiology, because of easier accesses to test sites for repetition, evaluation, improvement, etc. of attempted measures on land. Then, anti-contamination expertise was introduced into subseafloor practices, and anti-contamination protocols and facilities are now better developed by the Integrated Ocean Drilling Program (IODP) than the International Continental Scientific Drilling Program (ICDP). Newly developed techniques are also applied to measure/monitor geological and geochemical parameters that are used to characterize microbial habitats and processes occurring there.<br>&emsp;Lessons from subterranean microbiology are directly applicable to subglacial microbiology that may retrieve microbial life from sub-million-year-old ice cores, although additional measures are needed for glacier drilling. Because land and icy surfaces are common in Earth-like planets or potentially life-bearing satellites, lessons (experiences and expertise) from subterranean microbiology should be applicable to astrobiological searches for extraterrestrial life.
著者
倉持 卓司 上野 香菜子 厚井 晶子 長沼 毅
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.45-50, 2013

日本の代表的な内海である瀬戸内海より得られたドングリシャミセンガイLingula rostrum (Shaw,1798)の外部形態,および,分子生物学的な比較検討を行った。試料は瀬戸内海の岡山県沖備讃瀬戸より得られたドングリシャミセンガイを用い,倉持ら(2012)によるミドリシャミセンガイLingula anatina (奄美大島産)とウスバシャミセンガイLingula reevii (有明海産)の報告と比較した。ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,殻の形態,および,生時の肉茎の色彩により,外部形態でミドリシャミセンガイ,ウスバシャミセンガイと区分される。また,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)の18S rRNA遺伝子の塩基配列を,ミドリシャミセンガイ(奄美大島産)とウスバシャミセンガイ(有明海産)と比較したところ,ドングリシャミセンガイ(備讃瀬戸産)は,ミドリシャミセンガイ,および,ウスバシャミセンガイの両種とは異なるクレードに属することがわかり,分子系統的にも離れた分類群として扱われるべきであることが示唆された。
著者
倉持 卓司 倉持 敦子 厚井 晶子 長沼 毅
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.23-26, 2014

高知県土佐湾を模式産地として記載されたアッキガイ科のトサパイプヨウラクMonstrotyphis tosaensis(Azuma,1960)が,鹿児島県薩摩硫黄島沖の水深239-240mより採集された。本種はこれまでに模式産地のほか和歌山県沖から記録されている。本報告は,この海域からの本種の採集初記録となる。
著者
長沼 毅 山崎 敬人 平賀 博之 丸本 浩 沓脱 侑記 岡本 英治 小茂田 聖士 山下 雅文 柏原 林造 田中 伸也 林 靖弘
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.39, pp.291-296, 2010

本研究では, 地球外生命という未知の課題を解決するために, 理科で学習した内容や既知の学問を活用して, 「クリティカルシンキング」の手法を使いながら, もっとも確からしい答えに辿り着くための体験を生徒に講義し, それを通して, どのような思考の展開が必要となるかを伝える方法を研究した。ここでいう「クリティカルシンキング」とは, 「適切な基準や根拠に基づき, 論理的で偏りのない思考をする」, 「よりよい解決に向けて複眼的に思考し, より深く考えること」を意図している。具体的には, 「地球外生命探査」をテーマとして, 科学者が学問を探究していく上で, どのように思考し, その思考を発展させ, どのように証明していくか, そうした思考の過程を授業の対象として盛り込むことで, 科学者の思考を生徒に追体験させることを意図した高大連携の授業を構築することができた。この授業の内容そのものがこの研究の最大の成果だと考える。
著者
倉持 卓司 須藤 裕介 小川 麻里 玉城 英信 長沼 毅
出版者
広島大学
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.11-14, 2003-11-30

深層水取水施設にはしばしば深海生物が迷入するので,深海生物研究の定点観測施設としての意義もある。このたび,深海魚の一種であるミツクリエナガテョウチンアンコウが沖縄県深層水研究所(久米島)で採取された。この深層水取水施設の取水口は久木島沖の東シナ海,水深612mにある。ミツクリエナガチョウチンアンコウの分布域にはまだ不明な点が多いが,本種が東シナ海にまで分布することが初めて分かったので報告する。
著者
長沼 毅 伊村 智 辻本 惠 中井 亮佑
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

初年度(H28、2016年度)は予定通りエジプトで調査を行った。しかし、当初希望していた地域には保安上の理由で入れなかったので、同国内の他地域で地衣類サンプリングを試みたが、そこでも希望するロケーションには到達できず、不首尾に終わった。一方、予定外の地衣類サンプルとして、フィンランドの北極圏・亜北極圏および赤道域のギアナ高地(標高2500 m)からイワタケ類の地衣類を得ることができた。2年度目のH29年度(2017年度)は、国立極地研究所とカナダ・ラバール大学などの国際共同研究「北極域研究推進プロジェクト(ArCS)」の協力を得て、カナダ亜北極域のサルイットにおいてイワタケ類の地衣類を採集することができた。これらの地衣類サンプルの菌類・藻類の構成種および共在微生物相について、18Sおよび16S rRNA遺伝子をターゲットとした標準的なクローン解析を行ったほか、次世代シークエンシングによる16S rRNA遺伝子の網羅的マイクロバイオミクス解析を行った。その結果、南極域と非南極域の間に生物地理的な境界線、いわば地衣類微生物の「ウォレス線」が引けることが示唆された。ただし、藻類・菌類種と共在微生物種のコンビネーションについての傾向性はまだ得られておらず、さらなる調査と解析を待たねばならない。また、南極と非南極の間の「ウォレス線」についてはまだ検証の余地があり、今後はアフリカ南端部および南アメリカ南端部でのサンプリングを計画する必要がある。
著者
長沼 毅
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.226-233, 2003-04-25
参考文献数
45
被引用文献数
4 3

The search for life on the edges (frontiers) of the global biosphere bridges earth-bound biology and exobiology. This communication reviews recent microbiological studies on selected "frontiers", <I>i.e</I>., deep-sea, deep subsurface, and Antarctica. Deep-sea is characterized as the aphotic (non-photosynthetic) habitat, and the primary production is mostly due to the chemosynthetic autotrophy at the hydrothermal vents and methane-rich seeps. Formation of the chemosynthesis-dependent animal communities in the deep leads to the idea that such communities may be found in the "ocean" of the Jovian satellite, Europa. An anoxic (no-O<SUB>2</SUB>), as well as aphotic, condition is characteristic of the deep subsurface biosphere. Microorganisms in the deep subsurface biosphere exploit every available oxidant for anaerobic respiration. Sulfate, nitrate, iron (III) and CO<SUB>2</SUB> are the representative oxidants in the deep subsurface. Below the 3000 m-thick glacier on Antarctica, >70 lakes having liquid water are entombed. One of such sub-glacial lakes, Lake Vostok, has been a target of "life in extreme environments" and is about to be drill-penetrated for microbiological studies. These biospheric frontiers will provide new knowledge about the diversity and the potential of life on Earth and facilitate the capability of astrobiologial exploration.
著者
長沼 毅
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

通常の表層海水試料に加えて、深部地下水ならびにトカラ列島や口永良部島などの火山域、サハラ・ゴビ砂漠、北極・南極等の極限環境試料から孔径0.2ミクロン(μm)通過菌(すなわちナノバクテリア)の単離・培養を試みた。上記試料液あるいは懸濁液を三連にした孔径0.2ミクロンSterivexフィルターで濾過し、その濾液を貧栄養の1/100LB液体培地に接種した後、濁りの生じた培地をさらに1/100LB寒天培地に塗布し、形成した単コロニーからの釣菌および画線を繰り返して、0.2ミクロン通過菌、(極微小菌)の単離を行い、6株を取得することができた。このうち好気・室温条件で増殖が比較的速い深部地下水由来の3株の分子系統を16S rRNA遺伝子で調べたところ、それぞれ既知の属(Acidovorax、Micrococcusおよび phaeospirillum)に帰属することが分かった。この深部地下水由来の3株について、一酸化炭素と二酸化炭素の変換および亜硫酸と硫酸の変換という地球化学的な機能を有する酵素の遺伝子を得ることができた。また、一本鎖DNAの分解、突然変異源である酸化ヌクレオチドの分解酵素、トレハロース生合成の最終段階、グルタミン酸の生成(synthetaseではなく、糖代謝とアミノ酸代謝を結ぶsynthase)など、種々の代謝に関わる酵素の遺伝子も得ることができ、極微小生物の生理に関する基礎知見を拡充することができた。
著者
長沼 毅 今中 忠行 伊村 智 内田 雅己 大谷 修司 神田 啓史 黒沢 則夫 幸島 司郎 高野 淑識 東條 元昭 伴 修平 福井 学 星野 保 宮下 英明 吉村 義隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は地球環境の健康診断「国際極年」の中核計画として実施されたものである。地球環境変動のうち温暖化の影響は南北両極、特に環境変動に鋭敏に応答する微生物の生態に顕著に現れる。そこで本研究では初めて総合的な極地微生物の生態調査を行った。極域および高山氷河域に生息する微生物の種類と現存量および固有種・汎存種を調べることで、今後の変遷を評価する上で必要になる「国際極年参照データ」を残すことができた。