著者
下 絵津子
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.149-167, 2006

ポートフォリオとは基本的には「ある目的のもとに学習者の作品などを収集したもの」であるが、それを有効に活用するためには、「収集・選択・内省」(Hamp-Lyons & Condon,2000)などの特徴を考慮しなければならない。本稿では、まず、語学教室においてポートフォリオを効果的に活用するためのこのような特徴を整理し、ヨーロッパ各国の第二言語教育において組織的なポートフォリオの導入を試みるヨーロッパ言語ポートフォリオ(ELP)を紹介する。さらに、「評価用ポートフォリオ」を利用した筆者の授業におけるその使用を考察し、日本の語学教室におけるポートフォリオの活用・普及にむけての課題を整理する。ポートフォリオは、学習者と教師の「協働評価」であり、その活用によって、両者が自らの活動に対して互いからフィードバックを受け取るという構図が実現できる。また、それは、学習者オートノミー、教師オートノミーを促進することにつながる。ELPプロジェクトがそうであるように、ポートフォリオ活用は語学教育にプラスの効果をもたらす可能性は非常に高い。そのようなポートフォリオ活用への理解を促進するために、また、日本の語学教室での効果的な活用方法をさらに吟味するために、日本の中学、高校、大学の語学教育の現場でのポートフォリオ活用例を集めることが必要だろう。普及にあたっては、その機能を明確化し、ポートフォリオの特徴の整理や、その活用の流れ、具体的な方法の提示が必須だと考える。