著者
河野 又四 吉田 靖彦 板谷 恭史 下坊 和也 吉川 賢太郎 寺下 隆夫 獅山 慈孝
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.11-19, 1995-03-15

Allyl isothiocyanate (AIT)および数種香辛料精油成分のAsp. oryzae No. 508, Sacch. cerevisiae IFO 0231およびBac. subtilis IFO 3009に対する抗菌性をろ紙円盤拡散法によって調べた結果,AITが最も優れた効果を示し,carvacrol (CAR), salicylaldehyde(SAL)がこれに次いで有効であった。また,これらの変異原性をS. typhimuriumを用いAmes testで調べたところ,TA98とTA100の両菌ともS-9 mixの添加によっても有意の変異原性を示さなかった。ショウジョウバエ,Drosophyla melanogasterのBINSC型とOregon-R型を用い精油成分の濃度による毒性(仮死または致死到着時間)を比較したところ,AITとSALの毒性が大であった。さらにハエの短毛についてspot testを行ったところ変異翅毛(炎毛)がOregon-R型において0.18ppmAITの処理10日後の供試虫10%に認められた。ミジンコ,Daphnia pulexに対する毒性を調べたところ,形態の変化は認められなかったが,環境悪化の時に出現する有殼卵(有性生殖で抵抗性が強い冬卵)の発現が0.04と0.06ppm AIT処理区の10日後のミジンコ5%に認められた。現在,AITによる発がん性は否定されているが,低濃度での血液,組織,器官などには影響があるので注意する必要がある。AITのガス接触による食品保存料が開発されているが,この場合の量は少なく濃度も低いので安全であると考えられるが,低濃度での多頻度使用の場合には,なお問題があるのではないかと考えられるので今後さらに検討する必要があろう。