著者
下川 尚子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.413-417, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
12

小児における軽症頭部外傷は 「よく見られる疾患」 で, 一般臨床医は日常的に頭部CTを撮像する適否を決定しなければならない. 日本はCT検査装置も多く検査がすぐに行える潤沢なる環境にあるが, 被曝によってがんが発生するリスクは欧米に比較して日本では高いとの報告もある. これまでに頭部CT適応基準として米国のPECARN, カナダのCATCH, イギリスのCHALICE (NICE2014) が報告されている. いづれも受傷機転, 病歴, 診察所見などの複数項目を検討し, 臨床的重度頭部外傷 (clinical significant head injury) となる症例を判別するための頭部CT適応基準である. これらの基準は頭部CT撮像の適否を決める根拠となると同時に不要な放射線被曝を避けることを支持するが, 法学的視点からは家族の強い希望があれば頭部CT検査を施行することに躊躇してはならないとの意見もある. 臨床医に大切なことは, これらのアルゴリズムを参考にした医学的根拠のある頭部CT検査適否の決定と, 頭部外傷後の自宅生活上の注意点を丁寧に情報提供することと考える.