著者
下平 剛司
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.91-96, 2023-12-09 (Released:2023-12-07)
参考文献数
12

科学の健全な発展のためには,科学や研究における適切な行動規範,研究倫理が重要である.科学の行動規範や研究倫理は記述的であり,それらを包括して理解するための理論的枠組みの検討は研究倫理に関する議論を深めるための重要な基礎的作業である.本研究では科学の営みとその倫理の関係性を捉えるための理論的枠組みを模索し検討するために,科学における倫理的行動について定式化を行った.倫理や規範に関する行動(文化形質)と,科学コミュニティへの所属・アイデンティティの認識に焦点を当てて定式化し,これらの関係性についてマトリクス形式での整理と解釈を検討した.また,倫理的立場の違いや規範とアイデンティティの衝突について議論できる可能性や,科学的活動のプロジェクトにおいて倫理的行動を取るための方策の議論やシミュレーション研究への発展の可能性など,本研究の発展可能性について検討した.
著者
下平 剛司
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.123-128, 2022-12-18 (Released:2022-12-15)
参考文献数
26

文化的コンテンツの1つであるマンガは,娯楽の文脈だけでなく,科学教育の文脈でも活用されている.ここで,マンガ内の描写は科学的事柄だけでなくフィクションを含むことから,マンガの科学教育の活用においては,読み手が科学的事柄とフィクションの境界を認識できる必要がある.本研究では,科学教育の観点からのマンガ研究の土台を整理するために,これらの論点に関して理論的な検討を行った.まず,マンガのストーリーの構成要素内における科学的事柄とフィクションの描写について検討し,作品によってその境界にグラデーションがあることを確認した.次に,グライスの推意の理論を援用して,「学習マンガ」と「学習マンガと見做した娯楽マンガ」に対して読み手が行う推定の相違を示した.最後に,これらの議論を踏まえた上で,”学習マンガ” としてマンガを位置づける際のステークホルダーの役割と,科学教育におけるマンガ研究の今後の展望を整理した.