著者
伊藤 麻子 草苅 尚志 大田 健太郎 下斗米 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1041, 2007

【目的】脳血管障害患者の理学療法では早期から歩行獲得のため装具療法を用いるという報告が多くされている。しかし、その作製時期や種類の決定には様々な意見がある。そこで今回、装具作製からの経時的な変化、患者が感じている装具とはどのようなものなのかについてアンケート調査を行い、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】対象は平成18年10月10日から10月25日の間に協力を得られた当院に外来通院、または通所リハビリテーションを利用され、これまでに下肢装具(以下、装具)を作製したことのある脳血管障害患者46名(平均年齢64.6±17歳、男性26名、女性20名、発症からの経過7.3±26年)。方法は項目1.装具作製時期2.装具の種類3.使用状況4.満足度5.修理や再作製の有無6.今後の使用継続の有無について口述選択式によりアンケート調査を実施した。<BR>【結果】1.装具作製時期は発症から5~6ヶ月以内が約半数であった。2.装具の種類はプラスチック短下肢装具が67%と最も多かった。3.装具を現在も使用している(以下、使用者)83%、使用しなくなった(以下、不使用者)17%であり理由は装具を使用しなくても歩行が可能となったが最も多く、その他痛みや痺れ、靴の問題などが挙げられた。使用状況は常時使用58%、外出のみ34%、リハビリテーション時のみ8%、使用する理由は足部の内反を防ぐ、安心感があるという回答が多かった。4.現在の装具に不満を感じているのは26%、理由は装具の形や重量、靴の問題、装着の手間などであった。5.装具の再作製や修理は71%が行っていた。6.今後も装具を使い続ける87%、できるなら使いたくない13%、理由は合う靴が少ないや装着の手間などであった。<BR>【考察】当院では3年前より回復期病棟が開設され、以前よりも早期に歩行獲得のため装具が作製されるようになっている。医療制度の改定に伴いリハビリテーション実施日数が限られてきているため、今後もこれまで以上に装具の適合判定を入院後早期から定期的に考慮・検討し、移動能力、ADLの獲得を目指していくことが重要であると考える。今回の調査では使用者のうち装具を常時使用し、今後も使用継続を希望している患者が多く、装具が患者の生活の中でとても重要な役割りを果たしていることがわかった。しかし、装具に対して形や重量、靴の問題など不満を感じる使用者もいることから、それらの問題を改善していくためにも機能の向上、作製後のフォローアップの必要性を感じ、またそれを担うのも理学療法士の役目であると改めて感じた。