著者
下田 薫菜 田中 共子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学
巻号頁・発行日
vol.3, pp.33-52, 2006

「ホストとの文化間距離が近い留学生はより適応に有利」とする予測を背景に、日本ホストと留学生を対象とするシリーズ研究の一環として、今回は留学生の比較対照となるホスト集団の情報を得ることを目的に、留学生版と同様の項目構成による調査を行った。集団主義-個人主義と高-低コンテクストコミュニケーションの「自己評定」と、周囲の人たちを評価する「日本人評定」を、日本人学生に求めた。集団の平均値と各自のスコアとの差(集合的文化間距離)、周囲の人への評価と自己評価の差(日本内文化間距離)を算出し、適応との関連を検討した。高コンテクスト度合いが、集団の平均値より自己評価の方が高い人は、平均と同じか低い人と比べて、対人関係や日本的規範への適応が良い。周囲の人より自分の方が集団主義度合いが高い、あるいは高コンテクスト度合いが高いと評価する人は、同じか低いとする人よりも、対人関係の適応が良い。留学生ではこれらの特性が日本人の平均に近いと適応的と推測されるが、日本人学生ではより高く持つ方が適応的であり、社会的に望ましい特性を備える有利さが示唆された。