著者
田中 共子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.61-75, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
22

ソーシャルスキルは,対人関係の形成・維持・発展に役立つ技能を指す心理学の概念であり,内容や機能に関する調査や実験が蓄積され,教育訓練の方法が発達している。異文化圏では,挨拶,主張,遠慮,社交辞令などの対人行動が未知であると,困難や誤解が生じる。そこで,文化的行動の背景や異文化交流の要領として,異文化圏での人付き合いに役立つ認知や行動を抽出し,社会的行動の学習を試みるのが,異文化間ソーシャルスキル学習である。本稿では,在日留学生を対象とした研究をもとに異文化適応とソーシャルスキルの関わりを論じ,この心理教育を異文化間教育として使う場合の概念枠組みと学習セッションの概略を紹介する。そして,将来的な研究課題を述べる。ソーシャルスキルが適応にどのように関わるのか,ホストとの対人関係形成,およびホスト文化への関わり方の観点から考察し,日本語教育との接点を探る。
著者
田中 共子 兵藤 好美 田中 宏二
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-50, 2002
被引用文献数
3

This study analyzed 251 completed questionnaires concerning the social support network of caregivers for elderly family members. The hierarchy of social support resources was assumed to be in the order of co-resident family members, non-resident family members, friends, and neighbors to professional caregivers. Using the subcategory comparison method showed that a lower member compensates for a higher member's absence for emotional and instrumental support, and thus a hierarchical compensation model was supported. Social support network members conformed to the task specificity model regarding emotional, minor and major instrumental support, companionship, and informational support. Further, for companionship and informational support, particular resources indicated that compensation depends upon task specificity. Therefore, revision of the hierarchical compensation model is suggested. Caregiver levels of life satisfaction in cases of coresident family support are than those of non-resident family support. The importance of family support, the possibilities of compensation, and the differences of social support networks that depend on the relationships between caregivers and caretakers, are discussed.
著者
田中 共子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.61-75, 2010

<p> ソーシャルスキルは,対人関係の形成・維持・発展に役立つ技能を指す心理学の概念であり,内容や機能に関する調査や実験が蓄積され,教育訓練の方法が発達している。異文化圏では,挨拶,主張,遠慮,社交辞令などの対人行動が未知であると,困難や誤解が生じる。そこで,文化的行動の背景や異文化交流の要領として,異文化圏での人付き合いに役立つ認知や行動を抽出し,社会的行動の学習を試みるのが,異文化間ソーシャルスキル学習である。本稿では,在日留学生を対象とした研究をもとに異文化適応とソーシャルスキルの関わりを論じ,この心理教育を異文化間教育として使う場合の概念枠組みと学習セッションの概略を紹介する。そして,将来的な研究課題を述べる。ソーシャルスキルが適応にどのように関わるのか,ホストとの対人関係形成,およびホスト文化への関わり方の観点から考察し,日本語教育との接点を探る。</p>
著者
田中 宏二 兵藤 好美 田中 共子
出版者
岡山大学
雑誌
研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.181-192, 1996-11

これまでに筆者らは、若・中年齢女性あるいは高年齢女性の取り結ぶソーシャルサポートネットワーク(SNWと略す)の特性が、精神的健康にどのような影響を及ぼしているかについて検討してきた(田中・野邊、1994;田中、1995;兵頭・田中、1995)。特に高齢者に対しては、SNWの重要性が注目されてきている。高齢者の福祉と医療の基本原則は、住み慣れた地域の住民と積極的に関わり合いながら、対象者が住宅のまま地域生活を可能な限り続けることであるという認識が確立されてきている。(那須、1980)。そういった意味から、地域での生活を継続してゆくために、高齢者と地域とを取り結ぶSNWは、不可欠な要素となってくる。そしてケアの概念は生活に根ざした概念として把えられ、対象者に対して包括的なものであり、日常的でかつ直接的な対応が重要視されるようになってきている。とりわけ栄養摂取については生活の中枢をなすものであり、日常的でかつ直接的な対応が求められる。多くの研究者により、独居群がそれ以外の居住形態に属する高齢者と比較して、食物摂取行動の面で問題を多く抱えていることが指摘されている。また、杉澤(1993a)は、独居群の場合、別居子や友人・近隣などとの社会的紐帯の多寡が、独居家族の代替として保健行動面での問題の解消に寄与するという仮説の検証を行い、支持する結果を得ている。これらのことにより、独居者に対するソーシャルサポートネットワークが今後益々重要になってくるものと思われる。ところで岡山市では平成6年10月から、65歳以上の虚弱な高齢者で、かつ自力で調理が困難な場合又は調理の援助が得られない場合を対象とし、「一人暮らし老人等給食サービス促進事業」(給食サービスと略す)が始められている。この事業の主旨として直接的には、要援護高齢者の食生活安定、栄養バランスの補足と栄養改善、調理の負担軽減、楽しめる食事の提供等による高齢者の日常生活の支援を目的としている。また間接的には地域ボランティアの養成、地域交流、安否確認、孤独感の解消、生活リズムの把握、配食者による受給者の保健福祉ニーズの発見及び住宅保健福祉サービスへの仲介を通しての地域福祉の高揚を目的とするものである。給食サービスの形態は月~金曜日迄の週5日間、日1食昼食を配達する毎日型を基本としている。なお、配食体制は、調理業者から配食拠点施設へ社会福祉協議会職員又は配達運転手が配送し、その配色拠点施設からボランティア配食協力員(以降、ボランティア協力員と略す)が受給者宅へ配食を行うという方法をとっている。本調査では、地域のボランティア協力員が利用住宅の高齢者に昼食を届け始めて、1年半を経過した平成8年3月時点で調査を行った。本報告の目的は、給食サービス及び受給者-ボランティア協力員間のサポート授受関係が高齢者のSNWや精神的健康に対して、どのような影響を及ぼしているかについて、検討を行うものである。
著者
奥西 有理 田中 共子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-16, 2008

在日外国人留学生の受け入れに関わるホストとして、日本人学生による留学生へのソーシャルサポートの提供について、特に文化的側面に焦点を当て、実証的な解明を試みた。従来、ソーシャルサポートが異文化滞在者の適応促進に有効とする証左は多いが、ホストの視点は希薄であり、今回は留学生と親しい日本人ホスト学生をペアで質問紙調査の対象者として、50組の回答を得た。ソーシャルサポートのニーズと実際の授受の量的把握のため、留学生にはサポートして欲しいと思う心理的なニーズ、日本人学生にはその予測、及び実際のサポートが授受されたと思う個人の認識を両者に、評定してもらった。次いで提供した文化的サポートの具体的な内容をホストに自由記述してもらい、内容分析をするという質的手法で整理した。文化的サポートは、各種のサポートの中で比較的上位に位置した。ニーズと実際の提供の間や、ホストとゲストの認識の間のずれは、わりと小さかった。外国文化を理解する、日本文化の理解を導く、の2方向の文化的サポートを想定したが、前者では、日本人学生によるニーズ認識やサポート提供意識は、留学生より高めであった。後者に関しては、留学生のニーズ認識やサポート受領意識では前者より高く、ホストのサポート提供意識では前者より低い傾向があった。ホストには、ゲストと受け入れ社会を結ぶ、文化的な説明、調整、仲介の能力の涵養が課題と考えられた。
著者
下田 薫菜 田中 共子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学
巻号頁・発行日
vol.3, pp.33-52, 2006

「ホストとの文化間距離が近い留学生はより適応に有利」とする予測を背景に、日本ホストと留学生を対象とするシリーズ研究の一環として、今回は留学生の比較対照となるホスト集団の情報を得ることを目的に、留学生版と同様の項目構成による調査を行った。集団主義-個人主義と高-低コンテクストコミュニケーションの「自己評定」と、周囲の人たちを評価する「日本人評定」を、日本人学生に求めた。集団の平均値と各自のスコアとの差(集合的文化間距離)、周囲の人への評価と自己評価の差(日本内文化間距離)を算出し、適応との関連を検討した。高コンテクスト度合いが、集団の平均値より自己評価の方が高い人は、平均と同じか低い人と比べて、対人関係や日本的規範への適応が良い。周囲の人より自分の方が集団主義度合いが高い、あるいは高コンテクスト度合いが高いと評価する人は、同じか低いとする人よりも、対人関係の適応が良い。留学生ではこれらの特性が日本人の平均に近いと適応的と推測されるが、日本人学生ではより高く持つ方が適応的であり、社会的に望ましい特性を備える有利さが示唆された。
著者
兵藤 好美 田中 共子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、「医療事故生成プロセス防御モデル」を背景理論に、リスク認知を中心とした新たな「医療安全の心理教育」を開発することであった。2009~ 2011年度において事故生成プロセスを反映した疑似体験を工夫し、体感と具体的理解をもたらす人工空間の創作を試みた。そして、人間のヒューマンエラーに関するバイアスやヒューリスティック、環境要因の影響をシミュレーションゲーム法を適用し、医療安全教育に使用した。さらに効果の検証も行った。
著者
田中 共子
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

従来の異文化適応のための心理学的介入は、「医学モデル」的な対症療法が主であったが、本研究では「心理教育モデル」に基づいて、異文化適応能力を向上させる介入方略を開発することを試みた。具体的には、在日外国人にとって、異文化環境下において必要になるソーシャル・スキルを明らかにしたうえで、その学習プログラムを構成し、実験的に試行し、ソーシャル・スキル学習プログラムの開発を試みた。セッション形式の介入実験を企画し、教材を作成して、実験協力者の参加を得てプログラムを試行した。そしてセッションの効果と構成について検討した。さらに、ソーシャル・スキル獲得の異文化適応促進仮説について検討するため、異文化滞在者を対象とした面接調査を実施した。協力者は、在日外国人であるATL、すなわち外国語学習のための外国人補助教員、および在日留学生であった。彼らに自分自身の異文化適応過程について振り返ってもらい、特にソーシャル・スキルの向上とその実施との関わりについて振り返ってもらった。次いで在米日本人留学生及び、在米日本人入居住者を対象として面接を実施した。上記と同様に、ソーシャル・スキルと異文化適応を中心に体験を振り返ってもらった。その結果、海外から日本への異文化移動と、日本から海外への移動との異文化移動にみられる共通点と相違点が明らかにされた。これはソーシャル・スキル学習のプログラム構成に反映すべき知見である。
著者
田中共子
出版者
広島大学総合科学部
雑誌
広島大学総合科学部紀要. III, 情報行動科学研究 (ISSN:03851478)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.77-94, 1991-02-28
被引用文献数
1

Psychological studies on adjustment of international students in Japan has become increasingly important in recent years because of the abrupt inflow of students from abroad. The results of existing research in this area, however, are not consistent over studies. One reason for this inconsistency is sampling bias due to limited subject numbers and under representation. A second reason is the wide variety of instruments used to measure the concept of cross-cultural adjustment, which has been defined differently by the investigators concerned. This study approaches adjustment through various scales, attempting to grasp as many factors as possible that may underlie the concept, and by attaining a sample that is as close to the characteristics of the international student population in Japan. This report deals with some descriptive statistics and results of factor analysis done on the adjustment scales.