著者
下総台地研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.359-373, 1999-09-25 (Released:2017-07-14)

東京低地の北東部に位置する坂川低地では,縄文海進によって古奥東京湾の溺れ谷の1つである古流山湾が成立し,その周辺部に典型的な砂嘴・波食棚が発達する.古流山湾において,湾口部の砂嘴構成層や湾内の沖積層中に,標高+2.5mの侵食面が確認された.^<14>C年代および珪藻化石・貝化石の解析から,完新世後半の海面変動には,この侵食面の形成期(縄文中期の海退期)をはさんで2つの高海面期が見い出され,それぞれ古い方から第1高海面期(約5,800y.B.P.),第2高海面期(約4,000y.B.P.)とした.ボーリング資料の解析から,下総台地の縁辺には下総層群の団結泥岩からなる標高0〜+3mの埋没平坦面が広く分布することが示された.この埋没平坦面は,第1高海面期から形成が始まった波食棚で,湾内に分布するものは縄文中期まで,湾外のものは第2高海面期までその形成が続いた.一方,湾口部の砂嘴は,その内部構造や貝化石の解析から,第2高海面期に南東へ向かう沿岸流によって成長を始め,約600年で湾口を封鎖したことがわかった.
著者
下総台地研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.155-173, 2011-07-25 (Released:2017-05-16)

茨城県南東部の行方・鹿島台地に分布する中・上部更新統の層序について検討した.堆積相解析に加えて,珪藻,有孔虫,貝化石の分析結果から,本地域の主に海成層からなる更新統は4つの堆積シーケンス(累層)に区分されることがわかった.隣接する茨城県稲敷台地および千葉県下総台地北部における層序区分との対応関係から,これら4堆積シーケンス(累層)は下位より,八日市場層,神崎層,上岩橋層,木下層に対比される.八日市場層上部層・下部層境界面,および上岩橋層中のラビンメント面の高度分布は,本地域の地質構造が西方への単純な同斜構造ではなく,相対的な隆起・沈降域をもつ"ブロック状"を示す.神崎層や上岩橋層の分布,層厚および堆積様式はこの構造に規制される.例えば,上岩橋層基底の大規模埋没谷(河川流路)はこの沈降域に沿い,上岩橋層上部層の層厚はこの沈降域で厚く,隆起域で薄くなる.また,上岩橋層の大型のフォアセット層理の発達する砂層もこの沈降域に分布しており,強制海退の進行とともに沈降域に向かって前進しながら形成したと考えられる.