著者
下茂 徹朗 村岡 富美子 染川 賢一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1765-1771, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
8

3種の2-ピロン-5-カルボン酸エステルと鎖状ビニルエーテル類とのDiels-Alder(DA)反応を60~80℃で行い,それぞれ主生成物の6種のen40-8-アルコキシ-3-オキソ-2-オキサビシクロ[2,2,2]オクト-5-エン-6-カルボン酸エステル(endo一体)〔1〕と6種のexo一体(2)を得た。また,2-ピロン-5-カルボン酸メチルと環状ビニルエーテルである2,3-ジヒドロフランとの反応では9-オキソ-3,8-ジオキサトリシクロ[5,2.2.02,6]ウンデク-10-エン-11-カルボン酸メチル(endo一体)〔3〕とexo一体〔4〕を得た。いずれも付加配向は特異的で生成物は安定である。一方,フマロニトリルとの反応はより高温条件を必要とし,endo-7,exo-8-ジシアノ-3-オキソ-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-6-カルボン酸メチル〔5〕を与え,テトラシアノエチレンと廉反応しなかった。その他定量的分析およびMINDO/2からの計算も行い,2-ピロン-5-カルボン酸エステルは逆電子要求型のDA反応性をもつこと,および反応点の立体効果および極性効果を受けることなどが推定された,また二,三のDA付加体の加水分解を行い,この方法ではベンゼン環のメタ位二置換もしくは1,3,5-三置換のポリカルボン酸誘導体が選択的に得られることがわかった。
著者
植村 寿子 下茂 徹朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

南九州一帯に広く賦存するシラスは反応性に富む火山ガラスが8〜9割含まれ、量的にも豊富で、工業材料として極めて魅力のある研究対象である。しかしこれまで主に建築資材としてだけ利用され、高度な利用がなされていなかった。最近シラスが見直され、SPG(シラスポーラスガラス)等その特性を活かした利用開発がなされつつある。我々はシラス中のSiO_2(75%)、Al_2O_3(13%)に注目して、これを原料に安価なゼオライトの合成法の研究を行った。しかしシラスには約3%のFe_2O_3が含まれており、これが製品に混入、着色の原因になる事が分かった。シラスの脱鉄法が種々試みられているが、我々は次の系統的に各種のゼオライトを合成する方法でこの問題を解決した。まずシラス(100g)にNaOHとH_2Oの添加だけでNa-P型ゼオライト(60g、Fe_2O_3=1〜2.7%)を合成した。これは黄色を呈するが、高いイオン交換能を有するので廃液処理等着色が不利にならない分野での用途を考える。次に脱鉄されたケイ酸分に富むこの濾液(P型濾液1lが得られる)から各種の高純度ゼオライトを系統的に合成し、それぞれ適した分野での用途に供するものである。例えばP型濾液1lに120gのNaAlO_2を添加して6時間反応させる(100℃)と190gの高純度A型が得られる。同じくP型は5gのNaAlO_2を添加して5g得られる。X型は生成領域が狭く単一相としては合成し難くかった^<1)>。またP型濾液1lに各種の酸を添加して塩を含むゲル状沈澱物(Aゲル80g)を得た。これは水洗すると35g(Bゲル)に減る。Aゲルからは13〜50g、Bゲルからは25gのモルデナイトが得られる^<2)>。この2段階合成法では多種の製品が得られるので、単品コストが緩和され、また広範囲な用途開発が望めるので有利な合成法と思われる。1.植村、四元、染川、隈元、日本化学会誌、3月号掲載決定(1989)2.植村、村田、染川、日本化学会58春季年会発表予定1989年4月