著者
世羅 史子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-80, 1989-03-11

「教育とは,共に未来を語ること。」大学時代胸に刻んだこの言葉を今ほど切ない位の願いを込めて繰り返した事があっただろうか。 かって,6年生を担任した時,次々と自分を追い抜いていく子ども達をくやしがって見せながらも,夢を,希望を,理想を,未来を,いずれ共に日本を築いていく仲間としての思いを込めて語り合う事は,たまらない喜びであった。1年生を受け持った時,仲間と共に社会に生きる力を一つ一つ身につけていく子ども達のけなげさに大人になる事の意味を重ね合わせ,愛おしさを募らせた。そして,たんぽぽ学級の子ども達と出会って5年。自らの語るべき未来がいかに狭く貧しいものであったか,生きるべき社会,子ども達の生活をいかに知らなかったか思い知らされた。子ども達は今現在を生きている。今を楽しく,豊かに伸び伸びと,その伸びやかさが未来に続いて拓かれる地域・社会であってほしい。全ての母親がこの子を生んでよかったと思える日本であってほしい。栗山に生まれ育った子ども達が通ってくる「たんぽぽ学級」。父母が働き生活する地域の中で遊び,学び,体を,心を鍛え,みがいてほしい。そんな出会いのできる学級,毎日のふれ合い,授業ができたら,こんな嬉しい事はない。その為の教育課程づくり,課題は大きく荷は重い。