著者
中上 晨介
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.115-158, 2019 (Released:2019-06-11)
参考文献数
5

本稿では,不平等回避モデルを拡張し,ネットワーク上のcontribution gameにおけるプレイヤーの利得関数に不満と罪悪感のパラメータを用いて新たなモデルを構築し,ナッシュ均衡とabsorbing setを導出した.ネットワーク上でcontribution gameを行った研究では,プレイヤーは隣り合う2人のプレイヤーとつながりを持つサークルの形をした社会的ネットワーク上で公共財への拠出にContributionするかDefectするかの戦略の決定を行う.また,プレイヤーの利得関数はつながりを持つ周囲のプレイヤーの戦略に基づいて決まる.本稿では,不満と罪悪感のパラメータの範囲によっては,多くの人が貢献する状態もナッシュ均衡,absorbing setとして実現することを示した.結果の解釈としては,ある条件下で,人々が持つ罪悪感が不満よりも大きいとき,多くの人がネットワーク上のcontribution gameにおいて協力的行動をとるということである.