著者
ゴツシュ ナビンアナンダ 後藤 寛治 中世古 公男 森 義雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.624-629, 1976-12-30

ダイズ矮化病ウイルスの生育・収量に及ぼす影響を明らかにするため, 品種アダムス, ゆうづるおよびそのF_3系統13系統を供試し, 接種区および防除区における生育・収量の差異について比較, 検討した。1) 接種区における全乾物重および葉面積は, ウイルス接種約1ケ月後の7月17日において, すでに防除区に比し劣り, その差は生育とともに拡大した。2) 生育期間中の個体当乾物増加速度および葉面積は接種区が劣ったが, 純同化率は8月6日を中心に前期では防除区が, 後期では接種区がまさった。また, 接種区では比葉面積および葉身の窒素含有率が低く, 乾物率は逆に高い傾向を示し, ウイルス感染による葉の肥厚, 転流の阻害が認められた。3) 接種区における個体当平均子実重は防除区に比べ約70%減少した。また, 接種区では子実重と各生育時期における葉面積との間に有意な正の相関関係が認められ, 子実収量の系統間差異は葉面積の差によることが明らかとなった。4) 相対葉面積生長率が純同化率および比葉面積と有意な正の相関を示すことから, 接種区における葉面積の減少は, ウイルス感染による光合成率の低下と葉の肥厚に起因するものと考えられる。
著者
高橋 肇 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-27, 1992-03-05
被引用文献数
7

北海道育成の新旧品種(ハルユタカ, ハルヒカリ)およびドイツ育成の品種(Selek)を供試し, 標準播種期(4月25日, 中播区)を中心に前後2週間間隔で播種し(早播区-4月11日, 晩播区-5月10日), 播種期による生育相の変動, 穂の形態形成ならびに登熟期間の乾物生産の差異から, 品種による収量性の違いについて検討した. 各品種とも播種期の遅れに伴い出芽から幼穂分化期に至る生育相Iに日数が短縮し, 全生育日数も短縮した. これに伴い, 小穂分化期間が短縮し, 小穂数が減少したことからシンク容量の減少がみられた. さらに, 登熟期後半のCGRおよびNARが著しく低下したことで, 全乾物重ならびに子実収量が減少した. ドイツ品種Selpekは, 北海道の2品種に比べ穂重型で播種期の遅れに伴う穂数の減少がみられなかった. また, 小穂分化期間が長く, 晩播に伴う小穂数の減少が小さく, さらに, 登熟期後半の老化の進行が遅く, 他の2品種よりもNAR, CGRを高く維持したことにより, 早播区に対する晩播区の子実収量の減少程度も小さく(ハルヒカリ-34%, ハルユタカ-36%, Selpek-14%), 晩播区ではSelpekが最も多収を示した(ハルヒカリ-418g・m^<-2>, ハルユタカ-523g・m^<-2>, Selpek-551g・m^<-2>). 以上のことから, 北海道の晩播用品種としては穂重型品種が適することが示唆された.
著者
高橋 肇 千田 圭一 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.327-333, 1990-06-05

春播コムギ3品種 (長稈ハルヒカリ, 半矮性ハルユタカおよび長稈・晩生Selpek) の主稈3部位 (穂首節間, 第2節間および下位節間) における構成物質 (細胞壁構成物質, 純細胞内容物質および可溶性糖) の推移を開花期から成熟期まで調査した。開花後, 細胞壁構成物質と純細胞内容物質は穂首節間と第2節間で伸長生長に伴い増加したものの, 開花時に伸長の停止している下位節間ではほとんど増加しなかった (第2図) 。これに対し, 貯蔵物質と考えられている糖は, 各節間とも乳熟期まで増加した後穂への転流とともに減少し, 成熟期にはほぼ0の値を示した。糖は, 下位節間では開花前にかなりの量が蓄積していたのに対し, 穂首節間と第2節間では開花期に蓄積し始め, 下位節間では乳熟期の1週間ほど前に, 第2節間では乳熟期に, 穂首節間では乳熟期の数日後に最大値に達した。乳熟期の糖の含有率は全品種とも第2節間で高く, さらに含有量は下位節間で高いため, 第2節間と下位節間が主要な貯蔵器官であると考えられた。一方, 糖の含有率, 含有量ともに半矮性のハルユタカで長稈のハルヒカリ, Selpekよりも高かった。