著者
高橋 肇 千田 圭一 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.327-333, 1990-06-05

春播コムギ3品種 (長稈ハルヒカリ, 半矮性ハルユタカおよび長稈・晩生Selpek) の主稈3部位 (穂首節間, 第2節間および下位節間) における構成物質 (細胞壁構成物質, 純細胞内容物質および可溶性糖) の推移を開花期から成熟期まで調査した。開花後, 細胞壁構成物質と純細胞内容物質は穂首節間と第2節間で伸長生長に伴い増加したものの, 開花時に伸長の停止している下位節間ではほとんど増加しなかった (第2図) 。これに対し, 貯蔵物質と考えられている糖は, 各節間とも乳熟期まで増加した後穂への転流とともに減少し, 成熟期にはほぼ0の値を示した。糖は, 下位節間では開花前にかなりの量が蓄積していたのに対し, 穂首節間と第2節間では開花期に蓄積し始め, 下位節間では乳熟期の1週間ほど前に, 第2節間では乳熟期に, 穂首節間では乳熟期の数日後に最大値に達した。乳熟期の糖の含有率は全品種とも第2節間で高く, さらに含有量は下位節間で高いため, 第2節間と下位節間が主要な貯蔵器官であると考えられた。一方, 糖の含有率, 含有量ともに半矮性のハルユタカで長稈のハルヒカリ, Selpekよりも高かった。