著者
宇山 拓澄 田崎 達也 上神 慎之介 香山 茂平 佐々木 秀 中光 篤志
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.541-544, 2019-03-31 (Released:2020-04-11)
参考文献数
18

症例は32歳,男性。悪戯でエアーガンをズボン越しに肛門に注入された直後より腹痛と腹部膨満感を訴えたため,当院へ救急搬送された。腹部CT検査で腹腔内に多量の遊離ガス像を認めたが,穿孔部位は特定できなかった。気腹の解除目的で,針穿刺による経皮的ドレナージを施行した後,緊急開腹手術を施行した。横行結腸穿孔による腹膜炎の所見で,さらに,広範囲の結腸腸間膜対側に漿膜の裂傷を認めた。また,上行結腸からS状結腸までの腸間膜に気腫を認め,腸間膜側の損傷部位すべての同定は困難なため,結腸亜全摘を行った。回腸断端で一時的ストーマを作成し,残存したS状結腸を挙上し,粘液瘻造設とした。術後74日目に回腸―S状結腸吻合を行い,人工肛門を閉鎖した。圧搾空気による大腸穿孔に対する治療では,術中,下部消化管全体にわたり,慎重に損傷部位を検索する必要がある。
著者
湯浅 吉夫 角 重信 中光 篤志 今村 祐司 香山 茂平 羽田野 直人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.548-553, 2009-02-25
参考文献数
24
被引用文献数
5 5

今回われわれは,膵内副脾に発生したepidermoid cystの1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.平成13年9月,検診の超音波検査で膵尾部に嚢胞性病変を指摘され,近医にて経過観察されていた.しかし,腫瘤の増大傾向を認めたため,精査目的にて当院紹介となった.血液生化学検査では異常は認めなかった.CT検査では,膵尾部に大きさ2×2cm,単胞性で,壁に造影効果を認める嚢胞性病変を認めた.また,MRIではT1強調像で低吸収域,T2強調像で等吸収域を示していた.画像所見から膵嚢胞性疾患と診断し,悪性疾患も否定できないと判断,平成14年8月,手術を施行した.術中迅速病理診断を行ったところ,副脾を原発とするepidermoid cystとの結果であったため,腫瘤核出術のみ施行した.副脾の存在は珍しくないが,嚢胞性疾患の発生は極めて珍しい.過去の報告例を集計し,若干の文献的考察を加えて報告する.