著者
中尾 龍馬
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

Porphyromonas gingivalisの血球凝集素HagBが糖修飾を受け、バイオフィルム形成に関与することを明らかにした。また、P. gingivalis培養上清から外膜ヴェシクルを精製し、これを解析したところ、その構成要素には、Rgp、Kgp等の病原因子のほか、メジャー線毛、およびマイナー線毛の構成タンパクFimA、MfaIが豊富に含まれていた。外膜ヴェシクルは口腔上皮細胞に対しRgpに依存した強力な脱離活性を示した。以上より、P. gingivalisのHagBを介したバイオフィルム形成や、外膜ヴェシクルを介した組織傷害が、歯周病の病態形成に関与する可能性が示唆された。
著者
中尾 龍馬
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

Porphyromonas gingivalisは主たる歯周病原性細菌であり,近年は動脈硬化や冠状動脈疾患の発症,早産の誘発などにも関与することが示されている。本疾患形成には,菌体外膜にあるLPSやある種のタンパクが関連すると考えられている。本研究では,菌体外へ放出される外膜ヴェシクル(OMV)と糖合成系経路で機能するUDP-galactose 4-epimerase(GalE)に着目し,galE変異に伴うOMV産生への影響について調べた。野生株(ATCC 33277株),galE変異株,galE相補株の培養上清に含まれるOMVの形態と量を電子顕微鏡にて経時的に観察した。培養上清中のLPSはリムラス試験法にて定量した。野生株の培養上清中のOMV量は培養開始から3日間は経時的に増加し,その後死菌由来と思われるデブリスを増した。一方,galE変異株は培養開始から3日間はほとんどOMVを産生せず,その後デブリスが増した。また,galE変異株の培養上清中のLPS量も同様に,野生株に比べて著しく減少した。しかしgalE遺伝子の相補によりOMV産生は回復しなかった。以前のP.gingivalis galE変異株の解析から,GalEはP.gingivalisの生育に影響しないこと,LPSや外膜タンパクの糖化に関与することが明らかになっている^<1.2>。一方,本研究において,galE変異株のOMV産生はほとんど失われたが,galE遺伝子を相補してもOMV産生の回復がみられなかったことから,OMV産生にはgalE以外の遺伝子が関連するものと推察された。