著者
黒田 誠 大場 邦弘 濱田 洋通 関塚 剛史
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

川崎病患者28人について、入院時・半年後(充分な回復期)の2ポイントで便を採取し、次世代シークエンサーによるメタゲノム解析の結果、入院急性期ではStreptococcus 属に顕著な検出率を認め、回復後の遠隔期では Ruminococcus属の増加が顕著であった。 (Front Microbiol. 2015 Aug 11;6:824.) 川崎病を4回再燃発症した患児の便からも同様に Streptococcus spp. が有意に検出され、上記成果と関連した結果が示唆された。(JMM Case Rep. 2016 Feb 1;3(1):e005019.)
著者
岩田 奈織子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

重症急性呼吸器症候群 (SARS) コロナウイルス(SARS-CoV)は重症呼吸器疾患を引き起こす新興ウイルスである。ワクチンや治療薬はまだ開発されていない。UV不活化SARS-CoV全粒子(UV-V)は多くのエピトープやタンパクを含んでおり、SARSのワクチン候補とされている。しかしながら、ヌクレオカプシドタンパクを含む不活化SARSワクチンはウイルス感染後マウスの肺に好酸球浸潤を示すことが報告されている。今回、Toll-like receptor (TLR) アゴニストがUV-Vワクチンの副反応を軽減するか半年齢のBALB/cマウスで調べた。UV-V、水酸化アルミニウム(Alum)添加UV-Vで免疫した半年齢マウスは、マウス馴化SARS-CoVの感染に対して一部防御を示し、組織学的に肺で肺胞傷害像は見られなかったが、血管周囲に広汎な好酸球浸潤が見られた。一方、リポポリサッカライド、Poly(I:C)、PolyUを含むTLRアゴニストを添加したUV-V(UV-V+TLR)で免疫したマウスでは、肺での好酸球浸潤が著しく減少した。そして肺のサイトカイン量の測定で好酸球誘導に関わるIL-4およびIL-13の値がUV-V免疫マウスよりも低いことが示された。加えて、マイクロアレイ解析でUV-V免疫マウスでは好酸球誘導に関わる遺伝子の発現が高くなっていたのに対し、UV-V+TLR免疫マウスではそれらは低く、むしろTLR3および4の下流に位置する遺伝子の発現が高くなっていることが分かった。これらの結果から、SARS-CoV感染により引き起こされる肺のワクチン誘発性好酸球浸潤はTLRアゴニストをアジュバントにすることにより、回避できると示唆された。
著者
松山 州徳
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

我々の2016年の報告では、ヒトの風邪の病原体、ヒトコロナウイルスHCoV-229Eは、患者検体から分離された直後は、細胞表面のプロテアーゼ(TMPRSS2)を利用して細胞表面から侵入するが、培養細胞で継代することにより、エンドソーム経路を通りエンドソームのプロテアーゼ(カテプシンL)を利用するように変異することを示した。さらにこの変異ウイルスは、分化したヒト呼吸器上皮細胞(HBTE細胞)では感染力が著しく弱くなることを示した。これらの結果は、HCoV-229Eは生体内ではエンドソーム経路を避けていることを示唆している。本研究においてこれまでに、HCoV-229Eに加え他のヒトコロナウイルス、HCoV-OC43、HCoV-HKU1も臨床分離ウイルスは細胞表面のTMPRSS2を利用して積極的に侵入することを論文報告した。これで我々の仮説である「生体内ではヒトコロナウイルスはエンドソーム経路を避ける」が正しいことが三種のウイルスで確認されたことになる。一方、米国のグループは、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)がゴルジ体のプロテアーゼFurinを利用して細胞侵入することを報告している。この報告について我々は否定的な見解をもっており、我々の研究を進めるうえで、どうしてもFurin経路を否定しておく必要に迫られることとなった。すこし回り道をすることとなったが、MERS-CoV及び他のコロナウイルスはFurinを使って細胞侵入しないことの証明に成功し、論文報告をおこなった。現在我々は、「ウイルスの細胞侵入経路が自然免疫誘導に及ぼす影響」を調べるために、準備を行っている。また解析で得られた知見をもとに、抗ウイルス薬の作用機序の解析も行っている。
著者
山崎 浩 倉持 利明
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

南米チリは世界有数の養殖サケ・マスの生産国であり、わが国はそのサケ・マスの主要な消費国である。チリに分布するサケ・マスにはヒトに寄生する裂頭条虫の感染が知られており、これらのサケ・マスを感染源とする裂頭条虫症の発生が懸念されている。本研究では、チリ南部のプエルト・モンのジャンキウエ湖、ならびにパンギプジ湖に生息するサケ属や在来魚における裂頭条虫幼虫の寄生状況等を調査した。その結果、ギンザケやニジマスに多数の裂頭条虫幼虫の感染が確認され、筋肉内からも幼虫が検出されたことから、チリでは広節裂頭条虫による感染源がサケ類と推定された。
著者
竹田 美文 山崎 伸二 濱端 崇 牧野 壮一
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

腸管出血性大腸菌は、ヒトだけではなく家畜からも多数分離されており、ウシやブタの腸管出血性大腸菌感染症は畜産業界では大きな問題となっている。本感染症の感染源は、主として食肉で感染した家畜の糞便中の腸管出血性大腸菌が何らかの経路でヒトへ感染すると考えられている。従って、家畜の腸管出血性大腸菌感染を予防できるワクチンの開発は畜産業界に有用であるばかりでなく、ヒトの腸管出血性大腸菌感染、それに引き続く出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群の予防にも有効である。本研究では、ブタの浮腫病の原因である腸管出血性大腸菌に対するワクチン株を構築し、その有効性を証明した。すなわち、浮腫病のブタから分離したベロ毒素(VT2eまたはVT2vp1)を産生する腸管出血性大腸菌について、抗原性は保有するが毒素活性の喪失した変異毒素を産生する変異株を作出した。まず、VT2vp1のAサブユニットN末端から167番目のグルタミン酸(E167)と170番目のアルギニン(R170)を、それぞれグルタミン(Q167)とロイシン(L170)に置換したVT2vp1変異毒素を産生するような遺伝子を作出した。この遺伝子と野生型の毒素遺伝子を相同組換えにより置き換え、変異株を作出した。この変異株は野生型の毒素と同様の抗原性は保持していたが、ベロ細胞を用いた試験により毒素活性が喪夫していた。また、この変異株の豚への毒力を野生株を対照にして調べた結果、病原性は喪失していた。この変異株をワクチン候補株として、感染防御能を調べたところ、変異株を投与した豚群(n=20)は浮腫病由来の野生株の投与に対して浮腫病の発症はみられなかったが、ワクチン株を投与しなかった豚群(n=20)では、12頭が浮腫病を発症し、死亡した。また、変異株投与豚において、血中IgG価および糞便中IgA価の上昇も確認された。
著者
有田 峰太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ポリオウイルス(PV)擬似粒子を用いてPVレセプター発現マウス(TgPVR21マウス)に残存性ポリオ様麻痺を生じさせる条件を確立し、残存性ポリオ様麻痺を長期間生じさせたマウスについて解析した。また、ポリオ後症候群の発症に関与する宿主遺伝子群を同定することを目的とし、PVの複製を阻害する化合物の探索を行った。結果、4.1×10^6感染単位以上のポリオウイルス擬似粒子を脊髄内に接種した場合、ほぼ全てのマウスが重篤な残存性ポリオ様麻痺を呈した。このマウスを運動負荷の有無で6ヶ月間飼育したが、誘導されたポリオ様麻痺と運動負荷を原因とする異常を確認することができなかった。PV複製を阻害する化合物として、GW5074(Raf-1阻害剤)を同定し、GW5074と協調的に働くキナーゼ阻害剤としてMEK1/2阻害剤、EGFR阻害剤、PI3K阻害剤を同定した。GW5074に対する耐性変異を同定し、阻害機構が不明である既知の抗ピコルナウイルス化合物enviroximeに対する耐性変異と同じ変異であることを見出した。さらに、GW5074が宿主のphosphatidylinositol 4-kinase III beta (PI4KB)の活性を阻害することによりPVの複製を阻害することを見出し、PI4KBがenviroxime様化合物のエンテロウイルス複製阻害活性の標的の一つであることを明らかにした。
著者
横田 恭子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

HIV-1 Nefのエイズ病態における役割を明らかにするため、Nef発現で抑制されたTLR5とIL-10受容体(ベータ鎖)に注目し、これらの分子を介するマクロファージの自然免疫応答について解析した。TLR5やIL-10受容体からのシグナルはマクロファージのサイトカイン産生バランスに影響しており、Nefが自然免疫監視機能を障害する可能性が示唆された。一方、ヒト造血幹細胞移入免疫不全マウスはHIVに感染するもののマクロファージの分化発達が不十分であり、病態解析のモデルには適さなかった。
著者
加来 義浩 河原 正浩 浅井 知浩
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

狂犬病ウイルス(Rabies virus: RABV)に感染すると、ウイルスは血流を介さず、末梢神経細胞を経由して中枢神経へと伝達され、狂犬病を発症する。発症後の致死率は100%であり、有効な治療法はない。本研究では、狂犬病発症後の治療法の開発を目的として、RABV感染細胞内でウイルス蛋白質に結合できる人工小型抗体を複数作出し、一部についてはウイルスの増殖阻害効果を有することを確認した。また人工小型抗体の遺伝子をナノ粒子に封入し、神経細胞へのin vitroデリバリー系の構築を行った。
著者
竹田 誠 永田 典代 福原 秀雄
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

肺炎や下気道炎を起こすウイルスは多様である。しかしながら、これら呼吸器ウイルスは、ウイルス種としては多様であるものの、それら呼吸器ウイルスの膜融合蛋白が宿主気道上皮のプロテアーゼで活性化するという共通の性質を持つと考えられる。申請者らは「プロテアーゼ依存性トロピズム」理論に立脚した考えのもとに、ウイルス活性化に関する研究を推進してきた。その結果、ノックアウトマウス技術を用いることで、呼吸器上皮細胞に発現しているセリンプロテアーゼTMPRSS2が、インフルエンザウイルスの生体内活性化酵素であることを証明した。本研究では、TMPRSS2の生理機能や細胞内動態の解析、TMPRSS2の阻害化合物の大規模スクリーニングを実施し、TMPRSS2阻害化合物の呼吸器ウイルス感染阻害効果を検証することを目的に実験を行なっている。また、MERSコロナウイルス受容体(CD26)導入遺伝子改変マウスならびにTMPRSS2 KOマウスを用いて、MERSコロナウイルスのin vivo増殖、病原性発現におけるTMPRSS2の役割を解明するとともに、TMPRSS2の阻害化合物による各種呼吸器ウイルスやMERSコロナウイルスの生体内での増殖抑制効果を明らかにすることを目的に実験を行った。本研究開始以前に、MERSコロナウイルス受容体(CD26)導入遺伝子改変マウス(CD26-tgマウス)を作出することによって、すでにMERSコロナウイルスのin vivo(マウス)モデルを確立していたので、本マウスとTMPRSS2 KOマウスを交配されることによって作出されるマウス(CD26-tg/TMPRSS2 KOマウス)を用いて、MERSコロナウイルスのin vivo増殖におけるTMPRSS2の役割を解析した。の結果、TMPRSS2がMERSコロナウイルスの気道での増殖ならびに気道で起こる免疫反応に重要な意義があることが確認された。
著者
上野 圭吾
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

病原性真菌<i>Cryptococcus gattii</i>は、健常人に感染し予後不良なクリプトコックス症を引き起こす。申請者は、本感染症の予後を改善する樹状細胞 (DC)ワクチンを開発し、その作用機構を解析している。昨年度は、DCワクチンが肺常在性記憶型Th17細胞 (lung TRM17)を誘導することや、lung TRM17の分化維持機構に必要な因子について、国際誌に報告した (Ueno et al., Mucosal Immunol, 2019)。lung TRM17の誘導前期 (ワクチン後2週目) と誘導後期 (ワクチン後15週目)について、IL-17A欠損マウスでの挙動を評価したところ、IL-17A欠損マウスではどちらの時期もlung TRM17の数は有意に少なかった。特に、誘導後期のIL-17A欠損マウスでは、lung TRM17に発現するCD127の発現量が有意に低下し、lung TRM17の数はワクチン非投与群の場合と同等であった。このことは、IL-17Aがlung TRM17の発達や維持に関与することを示唆している。その他、DCワクチンを事前にMHC-II阻害抗体で処理するとlung TRM17の発達が阻害されたことから、DCワクチンによる抗原提示活性がlung TRM17の発達に必要であることも明らかになった。上記の論文では、lung TRM17が好中球の活性化を介して本感染症を制御するモデルを示した。その後の研究では好中球の殺菌機構や分化制御機構についても国際誌に報告した (Ueno et al., Med Mycol, 2019: Sci Rep, 2018)。初年度で開発した新規経鼻 (IN) ワクチンについて、DCワクチン同様に感染予後を改善することが明らかになった (上野ら, 第62回 日本医真菌学会総会, 2018年)。
著者
岩田 奈織子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV) 及び中東呼吸器症候群コロナウイルス (MERS-CoV) に対する新規ワクチン開発のため、平成29年度は平成28年度に引き続き免疫原とするSARS-CoVのスパイク (S) タンパク質を作製し、その中和抗体誘導能をマウスで確認した。平成28年度に作製したSARS-CoV S タンパク質は精製度が低かったため中和抗体誘導能が低かったため、平成29年度は精製度の高いSARS-CoV S タンパク質を作製し直した。このタンパク質を抗原としてマウスに 1 匹あたり 1 回、1, 0.5, 0.1, 0.05 μg をそれぞれ皮下免疫したところ、2回の免疫で S タンパク質に対する IgG の産生が見られた。IgG 抗体の産生は免疫した抗原濃度に依存して見られ、1 μg, 0.5 μgでは免疫した全てのマウスで高い IgG 抗体産生があった。中和抗体に関しても 1, 0.5, 0.1 μg では産生が見られたが、0.05 μg の免疫群では検出限界以下だった。また、各抗原量に金ナノ粒子を添加して同様に免疫をした場合、1 μg, 0.5 μgを免疫した群では抗原のみを投与した群と比較して中和抗体の産生に違いはなかったが、0.1 μg を投与した群では金ナノ粒子を添加した場合の方が IgG 抗体および中和抗体の産生はわずかに高かった。しかし、これらの免疫マウスを用いてウイルス攻撃実験を行なった結果、金ナノ粒子を添加した免疫群はどの抗原量においても感染後の体重の回復が悪く、さらに金ナノ粒子添加 0.1 μg、0.05 μg を免疫した群では、生存率が抗原のみの群よりも悪かった。この結果に基き次年度は、金ナノ粒子を添加したことによる副反応の影響を追求する。
著者
白戸 憲也
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多くのエンベロープウイルスはエンドサイト―シス経由で細胞侵入する。ヒトコロナウイルス(HCoV)229EもエンドゾームのカテプシンLを利用すると考えられてきた。本研究では、我々はHCoV229Eの臨床分離株はATCC株のような細胞順化株とは異なり、エンドゾームのカテプシンLよりも細胞表面のTMPRSS2の利用を好む事を発見した。エンドゾームはTLR認識など、自然免疫応答の主要な場所であり、本来のHCoV229Eはおそらく細胞表面からの細胞侵入によってエンドソームを飛び越えるように進化したと考えられる。ATCC株におけるこれらの性質は、長い間の細胞継代によって失われたと考えられる。
著者
田口 文広 松山 州徳 森川 茂 氏家 誠 白戸 憲也 座本 綾 渡辺 理恵 中垣 慶子 水谷 哲也
出版者
国立感染症研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

1)SARSコロナウイルス(SARS-CoV)に関する研究SARS-CoVは通常エンドゾーム経由で細胞内へ侵入することが報告されているが、我々はSARS-CoVのS蛋白の融合活性を誘導するプロテアーゼ(trypsin, elastase等)存在下では細胞膜径路で侵入することを明らかにした。更に、この径路による感染は、エンドゾーム径路感染より100-1000倍感染効率が高いことが判明した(PNAS,2005に発表)。SARSの重症肺炎の発症機序は、ウイルス感染を増強する様なプロテアーゼの存在が重要ではないかと考え、マウスに非病原性細菌感染で肺elastaseを誘導し、SARS-CoVを感染させることにより、ウイルス増殖及び肺の組織障害が高くなることを観察した。今後、更に重症肺炎に至るウイルス側及び宿主側因子の同定を進めたい。2)マウスコロナウイルス(MHV)に関する研究神経病原性の高いMHV-JHM株は受容体発現細胞に感染し、その細胞から受容体を持たない細胞に感染することが知られている。我々は、JHM株を直接受容体非発現細胞へ吸着させることにより、感染が成立することをspinoculation法(ウイルスが接種された細胞をウイルスと共に3000rpmで2時間遠心)により証明した。また、受容体非依存性感染にはJHM株のS蛋白の自然条件下で融合能が活性化されるという性質によることも明らかにされた(J.Viro1.2006発表)。
著者
西條 政幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により.世界で初めてウイルス学的に証明されたアシクロビル耐性HSV-1による新生児脳炎患者の報告をした.DNApol関連ACV耐性HSV-1の性状を解析し,多くの耐性株は神経病原性が低下しているものが多いものの,中には病原性が維持されているウイルスも存在する.また,DNApol関連ACV耐性HSV-1のほとんどがガンシクロビルに感受性を有し,逆にフォスカルネットには交叉耐性を示すことが明らかになった. ACV耐性HSV感染症の増加等が予想されることから,今後,病原ウイルスの薬剤感受性を調べる耐性の構築と,その結果に基づく適切な治療ができるようにする必要がある.
著者
川端 寛樹
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ライム病はスピロヘータの一種ボレリア感染に起因する慢性の感染症で、抗菌薬による治療を行わなかった場合、慢性の関節炎、皮膚炎、神経炎に移行する。本研究では、ライム病ボレリアゲノムシークエンスが完了したボレリアB31株を用い、マウス感染モデルにおける病原性機構、特に関節炎発症メカニズムの解明を目的として以下の研究を行った。結果:1)B31株エピソームである28kb線状plasmid-4(lp28-4)を欠失した変異体では、接種部位から遠位に位置する関節組織において、関節炎の重症化が起らない事、即ち、この表現型では関節周囲組織へのボレリア侵入能、定着能もしくは組織での病原性が低下していることを明らかにした。2)炎症の度合いは組織での定着菌数と比例すること、すなわちlp28-4欠失変異体では、関節組織での定着菌数が低下していることを見出した。3)Lp28-4プラスミド上の因子同定を目的として、3種類の推定表層抗原遺伝子(BBI16,BBI36,BBI42)を相補し、感染実験を行った。これは、ライム病ボレリアは病原因子等の分泌機構を有さないこと、すなわち表層抗原に依存した病原機構が多いと考えられるためである。しかしながら親株であるlp28-3欠失変異体と比較し、本相補株では有意の関節炎増悪はみられなかった。まとめ:以上の結果から、lp28-4領域に関節炎を増悪させる因子が存在する可能性が示唆された。本因子には、ボレリアの関節周囲組織への浸潤を促進する機能があると考えられた。一方でlp28-4上の因子の特定にはいたらなかった。
著者
小川 基彦
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ツツガ虫病の起因菌Orientia tsutsugamushiはリンパ球や血管内皮細胞など細網内皮系細胞に主に感染する.その結果,ヒトには免疫応答など様々な生体反応が誘発され,発熱,発疹,CRP,肝酵素の上昇などの症状が起きる.また,一部の患者は播種性血管内凝固(DIC)をおこし重症化する.そこで,本研究ではツツガ虫病の免疫応答と病態の関係に注目し解析をおこなった.まず,患者の発生状況や臨床所見に関して行った調査票による疫学調査の中で,特に免疫応答に関連するリンパ球を含む白血球減少,DICなどの所見に注目し疫学的な解析をおこなった.その結果,主に春に発生が多くGilliamおよびKarp株の感染が多い東北・北陸地方は白血球減少およびDICをおこす頻度が高く,重症度が高いこと,一方で秋に発生が多くKawsakiおよびKuroki株の感染が多い関東および九州地方では頻度が低く,症状が軽いことが明らかになった.これらの結果から,本菌の血管内皮細胞やリンパ球への感染による免疫応答が病態と密接に関係している可能性が示唆された.次に,ヒト臍帯内皮静脈細胞(huvec)に病原性の強いKarp株を感染させ,免疫応答のメディエーターであるサイトカインの誘導を解析した.huvecにKarp株を感染後,感染細胞からRNAを抽出しRT-PCRによりmRNAレベルでサイトカインの発現を解析した.その結果,感染後72時間でIL-6,8,GMCSF, MCP-1,RANTES, TNFαの発現がみられた.また,同様の解析をヒト単球セルラインU937で行ったところ,IL-1β,8,RANTES, TGFβの発現がみられた.また,U937にはKarp株への感受性が高かったが,別の単球セルラインのK562は感受性が低かった.また,huvecを用いた血管透過性の解析では,およびを用いて,Transwellメンブレン上のモノレイヤーの感染後の電気抵抗の変化をEndohmにより解析した.その結果,Karp株の感染およびTNFα(陽性対照)により透過性が亢進した.今後,産生されるサイトカインの役割,内皮透過性,単球への感受性,病原性の異なる株による違いに注目した解析を行い,各細胞のin vitroにおける役割・応答を解析するための基礎データが蓄積できた.
著者
池辺 忠義
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

劇症型溶連菌感染症(STSS)は、発病からの病状の進行が急激かつ劇的で、いったん発病すると数十時間以内に、死に至る可能性の高いことが知られている。本研究において、劇症型溶連菌感染症臨床分離株で、新たにrgg遺伝子に変異があることを見出した。マウスモデルにおいて、このrgg変異株は、致死性が高く、様々な臓器に障害を与え、ヒトの好中球を殺傷することが明らかとなった。STSS株と非侵襲性感染株におけるrgg遺伝子の変異頻度を調べた結果、劇症型溶連菌感染症臨床分離株の約25%を占めていた。また、咽頭炎などの非劇症型感染臨床分離株では、1.7%しかこの遺伝子に変異が見られず、有意に劇症型感染症臨床分離株においてrgg遺伝子に変異がみられることが判明した。このことから、このrgg遺伝子の変異は、劇症型感染症に重要な役割をしていることが考えられた。
著者
宮村 達男 吉田 弘 清水 博之 PHAN Van Tu 米山 徹夫 萩原 昭夫 松浦 善治 武田 直和 RADU Crainic DELPEYROUX F CRAINIC Radu
出版者
国立感染症研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

ポリオウイルスは代表的なエンテロウイルスであり、経口感染によりヒトからヒトへと伝播する。そしてヒトのみが唯一の感受性自然宿主である。糞口感染が日常的におこらないような衛生状態が恒常的に保たれれば、ポリオの伝播は次第に絶ち切られ、ポリオという疾患は消滅するはずである。一気にポリオを根絶する為には、更に強力な免疫計画とサーベイランスが必要であり、この目的をもって世界レベルの根絶計画がWHOの強力な指導のもとにスタートした。我が国の属する西太平洋地域では野生株ポリオウイルスは激減しているが、本研究は最後までウイルスが残っているベトナムをその対象領域として、野生株ポリオウイルスが弱毒性ワクチン株に置き換えられてゆく最後の過程を検証することにある。1997年、ベトナムでは1例、隣国のカンボジアでは8例の野生株が分離された。これらは現地で急性弛緩性マヒ(Acute Flaccid Paralysis:AFP)を生じた小児の糞便検体が当研究室に送付され、ウイルス分離、同定、型内鑑別が行われたものである。そしてこれらの分離株のVP-1領域の塩基配列を決定し、これまで周囲で分離されていた野生株と比較した。その結果、インドシナ半島で複数存在していた株のうちの一つのみが残っていることがわかった。北ベトナムでAFP例から分離されたウイルスは、ここ2年間、すべてワクチン由来株であったが、この1年はワクチン株の分離も減少している。一方、南ベトナムの国家ラボで得られた成績と日本のラボでの成績には、一部不一致がみられた。その問題点を解決する手段として、野本らにより樹立されたポリオウイルスのレセプターを発現しているマウス細胞株(Lα細胞)を用いた、ポリオウイルス選択的なウイルス分離が提唱され、実行されつつある。かくして、1997年3月19日のカンボジアの1例を最後として、野生株は分離されておらず、これが最後の例となるか、更なる強力な監視が必要である。
著者
永宗 喜三郎 川原 史也 アンドラビ ビラル
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

トキソプラズマにおいて最近「細胞外」原虫でのみ形成され、原虫の細胞外環境適応能力を規定している可能性があるオルガネラ(PLV/VAC)の存在が報告された。申請者らは独立した研究によりこれらと類似のオルガネラを発見し、詳細な解析からこれらのオルガネラが3つのサブコンパートメントに区別できることを見出した。また申請者らは抗マラリア薬として知られているプリマキンが、3つのサブコンパートメントの1つであるPLV2の水素イオンおよびカルシウムイオンを細胞質内に遊離させる作用を持つことも見出し、またプリマキン耐性トキソプラズマ原虫クローンを確立することにより、その責任遺伝子を同定した。
著者
寺原 和孝 横田 恭子 岩渕 龍太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はHIV-1感染伝播における樹状細胞の役割についてヒト化マウスモデルで明らかにすることを目的とした。ヒト化マウスは樹状細胞等の骨髄系細胞の分化が乏しいため、まず、ヒト由来サイトカインであるGM-CSFおよびFlt3-Lの導入による樹状細胞の分化誘導について検討したところ、骨髄系樹状細胞亜集団であるBDCA-1+ MDC1およびBDCA-3+ MDC2の顕著な分化誘導が可能となった。そして、これらヒト化マウスにHIV-1を感染させた結果、感染前の単球数と感染後1週目の血中ウイルス量が有意に相関した。つまり、HIV-1初期感染において樹状細胞がその伝播効率に関与することが推察された。