著者
中山 和則
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

近年PAMELA衛星、Fermi衛星によって宇宙線陽電子、電子フラックスの超過成分が観測され、これが暗黒物質対消滅の痕跡である可能性が指摘されている。これを受けて、暗黒物質対消滅とビッグバン元素合成との関係、銀河外拡散ガンマ線への暗黒物質の寄与、銀河中心方向からの高エネルギーニュートリノによる検証可能性などを調べた。将来観測によって暗黒物質対消滅の証拠を検証、あるいは排除出来ることが明らかになった。また、最近CDMS実験が暗黒物質起源と解釈され得るシグナルイベントを報告した。これに関して、超対称標準模型のパラメータへの示唆、および将来実験での観測可能性を調べた。一方、宇宙の構造形成の種となる密度揺らぎに関する研究を進めた。特に、密度揺らぎの非ガウス成分と、その素粒子物理への示唆を中心に研究を行なった。暗黒物質の有力候補の一つであるアクシオンにより、等曲率揺らぎの中に非ガウス性が現れる可能性があり、その特徴を詳しく調べた。また、超対称性模型において、超対称性を破る場によって同様の大きな非ガウス性が生成される可能性があることを明らかにした。また、非ガウス性と重力波の観測を組み合わせることで、カーバトンシナリオを検証可能であることを示した。