著者
中山 由紀子 松本 芳之
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.61-68, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
13

本研究は,コンピュータの音声ガイドが使用者に及ぼす影響を検証したものである。音声ガイドのあるコンピュータは自律的に作動し,使用者の課題に対する統制感を低下させるため,リアクタンスを経験する。そこで,使用者は統制感を維持するために,コンピュータの評価を低め,課題の失敗を外的要因,特にコンピュータに帰属するであろう。この考え方が実験で検証された。66名の男女大学生からなる被験者は,質問形式の問題を提示され,回答とは無関係に成功,失敗のフィードバックを受けた。文字呈示条件では,テキストは画面上に表示された。音声ガイド条件では,画面表示に加え,テキストは合成音声で読み上げられた。仮説通り,音声ガイド条件の被験者は,コンピュータに対する評価を低下させた。しかしながら,被験者が失敗すると,文字呈示条件では次回は成功すると予測したのに対し,音声ガイド条件では成功を予測しなかった。この結果は,統制感の低下を反映したものであると解釈された。