著者
東尾 篤史 高間 勇一 三藤 賢志 中岡 達雄 米田 光宏 中村 哲郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.272-276, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
14

近年ロタウイルス感染性胃腸炎予防のためにワクチン投与が行われている.ワクチンの副作用として腸重積症が知られているが,今回我々はロタウイルスワクチン初回投与後に腸重積症を発症し,非観血的整復中に消化管穿孔をきたし手術を要した症例を経験したので報告する.症例は2 か月男児.嘔吐と血便を主訴に前医受診.腹部CT 検査で腸重積症と診断された.初発症状から41 時間後に非観血的整復を施行されたがその途中で穿孔をきたし当院に搬送,緊急開腹術にて腸切除および腸瘻設術を行った.症状発現の4 日前にロタウイルスワクチンの初回接種の既往があったが,家族はワクチン接種後の腸重積症発症リスクの認識が不充分であり,そのため医療機関受診が遅くなった可能性が考えられた.ロタウイルスワクチン接種にあたっては,事前の患者家族への十分な情報提供が重要である.
著者
中川 賀清 植村 貞繁 矢野 常広 中岡 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.683-687, 2007
被引用文献数
1

【目的】漏斗胸と自然気胸は,身長が高く痩せ型という共通した体型に多い疾患である.われわれはNuss手術後の自然気胸を6例経験したが,その頻度は比較的高く,Nuss手術の影響もあるのではないかと考えた.これらの自然気胸の特徴について調べた.【対象と方法】2006年12月までにNuss手術を施行した漏斗胸症例382例のうち,約2年間のバー留置期間中に自然気胸を発症した6例の特徴およびNuss手術との関連について検討を行った.【結果】6例のうち5例は10代男性で,1例は20代女性であった.6例の身長は170.2±4.9cm,体重は47.6±3.2kgであり,BMIは16.5±1.6で,すべて長身痩せ型であった.男性の1例はマルファン症候群を合併していた.Nuss手術前のCT indexは7.2±3.1で,全382例の5.2±2.8と比べ大きかった.また胸部レントゲン画像から計測したvertebral index, frontosagittal indexの術前値および変化率は,気胸を起こさなかった同年代の患者群に比べて,有意差がそれぞれ認められた.自然気胸を起こした群は陥凹が高度で,手術の改善度も大きかった.気胸発症までの期間は術後1から22か月で,右気胸が3例,同時性両側例が2例,異時性両側例が1例であった.5例に胸腔鏡下肺ブラ切除を行い,1例は様子観察で軽快した.非手術症例も含め,すべて肺ブラの破裂によって生じたと考えられたが,肺ブラは漏斗胸術前のCT検査で指摘されていなかった.【結論】Nuss手術後のバー留置期間中の自然気胸は,全漏斗胸症例の1.6%に発生した.自然気胸の原因は肺ブラであるが,胸腔を拡げるNuss手術が肺ブラへ影響を及ぼした可能性が考えられた.自然気胸はNuss手術後に起こりうる合併症として留意すべきと考えられた.