著者
中川 賀清 植村 貞繁 矢野 常広 中岡 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.683-687, 2007
被引用文献数
1

【目的】漏斗胸と自然気胸は,身長が高く痩せ型という共通した体型に多い疾患である.われわれはNuss手術後の自然気胸を6例経験したが,その頻度は比較的高く,Nuss手術の影響もあるのではないかと考えた.これらの自然気胸の特徴について調べた.【対象と方法】2006年12月までにNuss手術を施行した漏斗胸症例382例のうち,約2年間のバー留置期間中に自然気胸を発症した6例の特徴およびNuss手術との関連について検討を行った.【結果】6例のうち5例は10代男性で,1例は20代女性であった.6例の身長は170.2±4.9cm,体重は47.6±3.2kgであり,BMIは16.5±1.6で,すべて長身痩せ型であった.男性の1例はマルファン症候群を合併していた.Nuss手術前のCT indexは7.2±3.1で,全382例の5.2±2.8と比べ大きかった.また胸部レントゲン画像から計測したvertebral index, frontosagittal indexの術前値および変化率は,気胸を起こさなかった同年代の患者群に比べて,有意差がそれぞれ認められた.自然気胸を起こした群は陥凹が高度で,手術の改善度も大きかった.気胸発症までの期間は術後1から22か月で,右気胸が3例,同時性両側例が2例,異時性両側例が1例であった.5例に胸腔鏡下肺ブラ切除を行い,1例は様子観察で軽快した.非手術症例も含め,すべて肺ブラの破裂によって生じたと考えられたが,肺ブラは漏斗胸術前のCT検査で指摘されていなかった.【結論】Nuss手術後のバー留置期間中の自然気胸は,全漏斗胸症例の1.6%に発生した.自然気胸の原因は肺ブラであるが,胸腔を拡げるNuss手術が肺ブラへ影響を及ぼした可能性が考えられた.自然気胸はNuss手術後に起こりうる合併症として留意すべきと考えられた.
著者
向井 基 高松 英夫 野口 啓幸 田原 博幸 加治 建 矢野 常広 坂本 浩一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.579-584, 2003
被引用文献数
1

【目的と方法】当科で経験した小腸原発消化管重複症7例の患者背景,症状,診断・治療,重複症の形態的特徴を示し,症状と形態的特徴との関連を中心に考察を加える.【結果】年齢は1ヵ月から4歳で,性別は男児4例,女児3例であった.合併異常を認めた症例はなかった.重複腸管は全例が回腸にあり,そのうち3例が回腸末端に存在した.形態は7例とも嚢腫型であった.腸間膜との位置関係は重複腸管を腸間膜側に認めた症例が4例,反腸間膜側に認めた症例が3例であった.固有筋層を共有しなかった症例は1例のみであった.異所性胃粘膜は検索可能な6例中4例でみられた.重複症の形態的特徴と,症状との関連の検討では,重複腸管が回腸を圧迫し比較的早期より通過障害を認めた2例では重複腸管と回腸の固有筋層が共有されていたが,年長時まで通過障害をきたさなかった1例では,固有筋層の共有はみられなかった.また,乳児期早期に腸重積で発症した症例では,重複腸管が反腸間膜側にみられ,回腸内腔に突出していた.【結論】消化管重複症は発生部位により臨床像が異なるが,今回の小腸原発症例のみの検討からも重複腸管の形態の違いにより,症状とその発現時期が異なることが予想された.