著者
中島 實 安間 哲文 石島 亨
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.97-101, 1949-03-15

緒言 1916年Smithが腦下垂體を摘出すると蛙の體色が白變することを發見し,Alten,Swingle等によつて腦下垂體に色素細胞を擴張させる物質即ちメラノフオーレンホルモン(以下MHと略す)の存在が確認された。1933年JoresはBi-rch-Hirschfeld光神計を用い,MH點眼後12〜15分で暗順應時間が著しく短縮され且疲勞が少く明瞭に見える樣になると報告し,その追試によりScardacioneは賛成し,Bugchkeは反對した。其後Joresは40回の點眼で34回の陽性成績を得て再び自説を強調している。尚彼が自説の裏付けに舉げている諸點は:1)夜間活動する動物例えば猫では腦下垂體アセトン乾燥末1mg中にMH3.0單位を含むのに,鶏では僅かに0.05,人間では0.2,モルモットでは0.8である。2)同じ動物でも明所よりも暗所に置いた方がMH含量が増加する,即ち家兎の血液1立中に含まれるMHの單位は明0.075,暗0.32,眼では明0.028,暗0,065,房水では明0,暗0.0013である。3)MH注射,浸漬等により蛙網膜色素の暗位移行を人爲的に起すことが出來る等である。 私共は昭和18年6月から19年末に亘り,夜間視力増強の試みとして,青山科學研究所伊藤正雄博士指導により作製されたMHを使用して次の樣な成績を得た。

1 0 0 0 OA 視質に就て

著者
中島 實
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会雑誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.3-12, 1940 (Released:2011-02-09)
参考文献数
30

網膜の視細胞には蛋白の他多量の類脂肪, 殊に燐脂體が多量に含まれて居り, 光の作用で減少する. 網膜から光によつて燐酸や稍複雑な含窒素化合物やヒヨリン等が遊離する. 是等の現象は盲にした網膜では起こらない. 從て視質は感光性の強い燐脂體の一種ではないかと考へられる.視紅は分解してビタミンAを出すから一種のカロチノイド系の色素と思はれ, 視質に結合して増感作用を營むものと思はれる. 是等の物質の光分解後, それを再生せしむるためのエネルギーは, 網膜内で特に旺盛な解糖作用によつて供給せられるやうである.