著者
中島 栄之介
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.211-219, 2018-09

特別支援学校における人権教育について、兵庫県立A特別支援学校での実践例をもとに検討した。特別支援学校における人権教育は在籍する生徒が差別を受けてきていると同時に差別をする側にもなるという特徴がある。しかし、これまでの特別支援学校の人権教育は性教育などの男女共生教育が中心であり障害者差別を取り上げることは少なかった。A特別支援学校では継続的に人権教育を行うことを目的とし、人権教育の実践を積み重ね障害者差別を題材として取り上げるまでに至った。生徒にとって障害者差別を取り上げることは生徒にとって過去自らが受けてきた差別と向き合うことであり、自身の障害と向き合うこと、さらに今後受けるであろう差別と向き合うこと、そして、自らの持つ差別性と向き合うことでもあった。また、人権教育を継続していくためには、組織やシステムを構築するとともに組織やシステムを動かしていく人材の育成も継続的に必要であると考えられた。
著者
中島 栄之介 森 一弘
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Nara Gakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.119-126, 2018-10

特別支援学校において感染性胃腸炎の集団発生を経験した。感染性胃腸炎の集団発生から終息までの欠席・学級閉鎖の状況、対応策等の記録を分析し、感染ルート、感染拡大の原因、対応策等について検討した。感染源をトイレと推定したが、感染経路の特定できない広がりも見受けられた。学校医の助言を受け消毒等を行った。しかし、一般的対応だけでは著効なく、全クラスが時期をずらして学級閉鎖となるほど感染が拡大した他、保護者への感染も確認された。その後、約2週間で新規の感染者は確認できなくなり約3週間で終息した。感染拡大の背景として、感染力の強さに加え、施設設備、児童生徒数の増大による過密化、種々の集団の形成など特別支援学校特有の要因が示唆された。また、保護者への情報提供は感染拡大にも有効であったと考えられた。
著者
中島 栄之介 松﨑 泰
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-26, 2019-01

肢体不自由者教育における対象の変遷と教育的対応上の課題を「重度・重複障害」という言葉に着目して定義とその変遷、学習指導要領上の位置づけを中心に検討した。いわゆる「重度・重複障害」を有する子どもたちの教育は、戦後の福祉制度や特別支援教育の開始時期よりすでに問題になっており制度改革や学習指導要領の改訂ごとに課題とされてきた。特に就学猶予がなくなった養護学校義務化、医療的ケアが話題となっていた特別支援教育の開始時期に課題が顕著になっていた。また、「発達障害」の概念が広がった現行学習指導要領や次期学習指導要領以降には「発達障害」と併せ有する障害、「発達障害」を視野に入れた学びの連続性などが今後「重度・重複障害」を考える上でポイントになると考えられた。