著者
小関 至 山口 将功 中島 知明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.606-618, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
113

亜鉛は300種類以上の酵素の活性中心または補酵素として働くことから,生命維持にとって不可欠な微量元素であり,亜鉛欠乏により多彩な症状が出現する.従来,本邦では治療薬として承認された亜鉛製剤はなかったが,2017年3月,ウィルソン病に対して長期の安全性と効果が認められていた酢酸亜鉛水和物が低亜鉛血症に対して効能追加となった.慢性肝疾患の患者では低亜鉛血症の頻度が高く,低亜鉛血症の病態が種々の自覚症状の出現のみならず,肝線維化の進展や肝発癌リスクの増加と深い関係があることが近年明らかとされた.今後,酢酸亜鉛水和物による治療が普及するものと推測され,亜鉛欠乏と慢性肝疾患に対する知見を概説する.
著者
木村 睦海 小関 至 狩野 吉康 荒川 智宏 中島 知明 桑田 靖昭 大村 卓味 佐藤 隆啓 髭 修平 豊田 成司 佐藤 繁樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.607-613, 2013-09-20 (Released:2013-10-22)
参考文献数
22

症例は65歳,女性.1996年にHBV陽性を指摘されIFN治療を受けるも改善無く,その後肝硬変に進展した.2001年よりLamivudineを開始し,その後LamivudineとAdefovirの併用,更にEntecavirとAdefovirの併用へと切り替え,ALTは正常範囲内を維持するに至り,HBV-DNA量も低下した.2009年8月,AFPが26.5 ng/ml,従来法AFP-L3分画が48.0%と上昇を認め,翌9月のMRI検査にて肝S3に径10 mmの典型的な肝細胞癌を認めた.2010年2月に肝外側区切除を施行し,組織診断は高分化型肝細胞癌であった.保存血清を用いて2010年より測定可能となった高感度AFP-L3分画をretrospectiveに再測定したところ,肝細胞癌が臨床診断される3年前,2006年から高感度AFP-L3分画が上昇し続け,切除後に正常化していたことが確認された.高感度AFP-L3分画は,AFPの上昇と肝細胞癌の臨床診断に先行して異常高値となる症例もあり,肝細胞癌のhigh riskグループを抽出する腫瘍マーカーとして有用と考えられた.