著者
中島 裕司 安藤 克己 山岸 敏之
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-123, 2006-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
85
被引用文献数
1

ヒトの心臓形態形成は胞胚期(受精後2週)から始まり胚子期の終りに完成する(受精後7~8週)。拍動する原始心筒は3週の終り頃形成され,d-loop形成,心内膜床形成,中隔成分の形成とそれらの整列融合といった複雑な発生過程を経て,四腔を持った心臓が完成する。これらの形態形成過程の異常は先天性心疾患の原因となる。分子発生生物学,分子遺伝学の研究により,心臓形態形成過程をコントロールするさまざまな遺伝子が明らかにされ,先天性心疾患を伴うヒトのHolt-Oram症候群やdel22q11症候群の原因遺伝子は,それぞれTbx5,Tbx1の点突然変異であることが報告された。また成体の骨髄や心臓で心筋に分化転換可能な幹細胞が発見されたことにより,変性心筋による機能不全に対する心筋再生医療の可能性が示され,今後の臨床応用への展開が期待されている。