- 著者
-
中嶋 文子
赤澤 千春
BECKER CARL.B
- 出版者
- 椙山女学園大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
SOC(首尾一貫感覚)はストレスを乗り越える力とされ、SOCが高い人ほどストレスを乗り越える力があり、ストレスを乗り越えた経験を積み重ねることはSOCを高めるとされている。就職後間もない新人看護師は、ストレスを乗り越えてゆくことでSOCを高める機会とすることもできる。我々の先行研究では、SOCを高める介入によって、就職時のSOCが低い場合、就職3ヶ月後には一旦上昇するが、その後は低下することが明らかとなった。また、教育担当者からは、看護実践の意味を言語化することが難しい者のSOCが低い傾向が指摘された。そこで、SOC得点の低い者に特化した支援を開発するため、新人看護師へのインタビューを実施した。分析対象となった6名の就職時のSOC合計得点は、50点未満の者4名、51点以上60点未満の者1名、60点以上の者はいなかった。研究協力機関では、継続的な研修とともに6ヶ月間のローテーションを行っているが、就職後6ヶ月は本配属の直前の時期であり「部署配属への期待と不安」を語っていた。そして、「看護実践の困難感」を抱きながらも「成長の実感」や「対人関係の困難感」を感じつつ「患者中心の看護の希求」を「自己実現への意欲」としていることを語っていた。また、就職後12ヶ月までに到達可能な目標をイメージできない者は、就職時SOC得点が低い傾向にあった。就職後12ヶ月のインタビューにおいて「成長の自覚」「職場チームへの帰属感」「看護の手応え」を語った者は、就職時のSOC得点が低くても、その後徐々に上昇していた。一方で、12ヶ月のインタビューにおいて「否定的な教育体制」「成長の遅れに対する焦り」を訴え、患者への看護に目を向ける余裕のなかった者は、1年間を通してSOC得点が低下していた。新卒看護師が定期的に到達可能な目標を描き、自らの成長を自覚する支援が求められていることが明らかとなった。