著者
中川 博雄 伊東 潤一 岡田 昌之 岩村 直矢 今村 政信 北原 隆志 佐々木 均 室 高広
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.176-181, 2019-05-25 (Released:2019-11-25)
参考文献数
6

病棟配置された処置用の軟膏剤やクリーム剤に対して,これまでに管理方法や微生物汚染の実態を複数施設で調査した報告はない.そこで本研究では,長崎県病院薬剤師会感染制御ワーキンググループの会員施設で協力が得られた3施設を対象に,病棟配置された処置用の軟膏剤やクリーム剤の衛生管理に関する聞き取り調査および微生物汚染の実態調査を行った.さらに,病棟配置された処置用の軟膏剤やクリーム剤の開封後の使用期限について検討する目的で,基剤の異なる代表的な軟膏剤やクリーム剤に手指の常在微生物を塗布する評価法を用いて,微生物汚染までの期間を調査した.その結果,3施設いずれにおいても軟膏剤やクリーム剤の衛生管理マニュアルは整備されていなかった.また,微生物汚染の実態調査では,3施設の軟膏剤やクリーム剤128個全てで微生物汚染は認められなかった.さらに,実験による評価では,基剤の違いや防腐剤の有無に関わらず,6か月間にわたり軟膏剤やクリーム剤で微生物汚染は認められなかった.よって,処置用の軟膏剤やクリーム剤は直接素手で採取しないなどの衛生管理に注意を払えば,開封後6か月間まで使用可能であることが示唆された.
著者
中川 博雄 松田 淳一 栁原 克紀 安岡 彰 北原 隆志 佐々木 均
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.8-12, 2011 (Released:2011-04-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

消毒剤の効果の要因の1つは,微生物と薬液の接触時間に依存する.そのため,速乾性手指消毒剤のゲル製剤およびリキッド製剤をそれぞれ3 mL擦り込んだ場合,ゲル製剤の方が長い時間を要することから,ゲル製剤はリキッド製剤に比べ,少ない擦り込み量で十分な擦り込み時間と消毒効果が得られる可能性が考えられる.本研究では0.2 w/v%クロルヘキシジングルコン酸塩含有エタノールゲル製剤の擦り込み量を変えて,リキッド製剤と消毒効果を比較検討した.その結果,ゲル製剤は1 mLでリキッド製剤3 mLと同等の効果を示した.さらに16種類のゲル製剤およびリキッド製剤について,揮発による重量変化率を測定した.ゲル製剤はリキッド製剤に比べて重量変化率が低く,粘度との間に相関を示した.
著者
中川 博雄 佐々木 均 室 高広
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.277-281, 2019-11-25 (Released:2020-05-27)
参考文献数
7

注射剤は患者の組織に直接取り込まれるため,薬剤師が無菌的な環境下で調製することが望まれる.しかし,一般病棟の非無菌的な環境下で,看護師による注射剤調製が行われている施設も少なくない.そのため,注射剤の微生物汚染による医療関連感染の問題も未だに散見される.感染対策に携わる薬剤師は,自施設の注射剤調製時の無菌操作や製剤の衛生管理の整備に努めるとともに,注射剤調製の作業手順に関して監督指導を行う立場でなければならない.本稿では,薬剤師による無菌的な環境下での注射剤調製の手順を見直すとともに,看護師による非無菌的な環境下での注射剤調製に関する注意点をまとめた.