著者
福富 聡 中川 宏治 石塚 満 宮崎 勝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.1090-1094, 2006-05-25
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

症例は53歳,男性.自殺企図により刃渡り20cmの刺身包丁で腹部を刺し当院に緊急搬送された.腹部CT検査では,胆嚢内腔の高吸収域と腹腔内液体貯留が認められ,胆嚢損傷,腹腔内出血と診断した.全身状態が安定していたため保存的治療を選択した.第5病日の血液検査でT. Bil, CRP値が増加傾向を示し,腹部CT検査で胆嚢周囲の液体貯留の増加を認めたため,経皮経肝胆嚢造影により損傷部位を確認しPTGBDチューブを留置した.以後,腹腔内における液体貯留は減少し,全身状態および肝機能の増悪もみられず,第24病日に退院となった.<br> 腹部鋭的外傷による胆嚢損傷は極めて稀である.本邦では全例に開腹手術が行われており,合併症なく保存的に治癒したのは自験例が初めてであった.胆嚢損傷例に対しPTGBDは有効な手段であり,症例を選んで適切な管理を行えば,開腹手術は必須ではないと考えられた.
著者
中川 宏治
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.54-59, 2012-07-01
被引用文献数
1

2007年度から,広域自治体を単位とした学校教育における森林教育の取組が滋賀県で始まっている。この事業の推進に当たって,教員対象の研修会が毎年開催され,全学校から1名以上の教員が参加している。本研究では,事業開始から5年を経過して,教員研修および事業に対する学校現場の課題の現状や事業に対する認識を把握するために,研修参加者を対象に実施したアンケート調査の結果を整理した。その結果,事業の認識はまだまだ薄く,教員の現場からは煩雑な事務手続きなどに対する否定的意見が目立つ。しかし,教員の指導資質能力の養成に関しては,教員研修での間伐体験など体験型の学習が有効であり,やまのこ事業の体験学習への実践的な参加も指導能力を高める効果があると考えられた。滋賀県での森林教育に関する一連の取組は,学校教育で自然体験学習を導入する際の学校現場の課題解決に向けた貴重な先行事例となりうるであろう。