著者
中川 憲次
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.269-294, 2003-09-30

ベギンの信仰生活は信仰と生業が絶妙に一元化されたものであった。その信仰は生活から離れたものではなかった。日々の労働へと信仰が結実したべギンの生は、中世後期のヨーロッパにおいて輝いている。一方、マイスター・エックハルトはパリ大学に学び、またそこで教えもした神学者である。エックハルトの説教において、生と学の絶妙な一致が見られる。それは、ベギンとの関わりの故であったとわれわれは考える。ベギンの労働観を、聖書やベネディクトゥス修道院規則の労働観と比較すると、その独自性は顕著である。また、ベギンの信仰と生業の一元化された有様は、妙好人 浅原才市の下駄職人としての仕事と仏教信仰の一元化された有様にも通じている。ベギンの聖体拝領に基づく信仰は、生業に誠実に勤しむという態度に結実した。それは、生業に勤しむことにとどまらず、食事や睡眠等という日常の生を丁寧に生ききるという態度にも繋がっていた。