- 著者
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中川 皓陽
北村 俊平
- 出版者
- 特定非営利活動法人バードリサーチ
- 雑誌
- Bird Research (ISSN:18801587)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.A55-A68, 2017 (Released:2017-12-07)
- 参考文献数
- 66
本研究では自動撮影カメラを利用して,中部日本のスギ林における常緑低木ヒメアオキの果実消費者とその持ち去り量を記録し,ヒメアオキの量的に有効な種子散布者を特定することを目的とした.2015年4月に石川県林業試験場内のスギ林に4箇所の調査区を設定した.ヒメアオキ51個体980個の結実数を計数し,週一回,樹上に残る果実数を記録した.さらにヒメアオキ28個体に自動撮影カメラを設置し,樹上353個と落果75個の計428個の果実を持ち去る動物を記録した.調査開始から1週間後に全体の41.7%,2週間後に97.2%,3週間後に98.3%の果実が樹上から消失した.調査期間中にのべ465カメラ日の観察を行った.撮影された鳥類6種と哺乳類6種のうち,ヒメアオキの果実を持ち去る瞬間が確認されたのはヒヨドリのみだった.ヒヨドリの採食は全ての調査区で確認され,訪問あたりの持ち去り果実数の中央値は2個(1-6個,N=41)だった.樹上・落果のいずれの調査区もヒヨドリとヒヨドリが食べた可能性が高い果実数の合計で全体の80%を占めた.そのため本調査地では,ヒヨドリがヒメアオキの量的に有効な種子散布者であると考えられた.より一般的な結論を導くには,複数地点・複数年の継続調査が望ましく,それには本研究で採用した自動撮影カメラによる果実持ち去りの観察が有効な調査手法の一つであると考えられる.