著者
石坂 昌司 中川 真秀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

エアロゾルを足場とした雲粒の発生過程は、気候変動予測における最大の不確定要素である。大気中には多種多様な微粒子が混在しているため、微粒子集合系の平均値解析では現象の解明に限界があり、個々の微粒子を直接観測可能な分析手法の開発が強く望まれる。本研究では、特に気候への影響が大きく、従来のレーザー捕捉法が適応できない黒色炭素粒子に着目し、単一の黒色炭素粒子を空気中の一点に非接触で浮遊させ、雲粒の発生を再現する新規計測法を開発する。これまでに我々が開発したドーナツビームを用いるレーザー捕捉法では、ロウソクの燃焼により発生した煤を一旦、固体基板の上に捕集し、マイクロマニピュレーターを用いて固体基板から黒色炭素微粒子を気相中に持ち上げ、レーザー捕捉空間内に導入する必要があった。2019年度は、燃焼によって発生した黒色炭素微粒子を固体基板に捕集することなく、そのままレーザー捕捉し計測するための実験手法の改良を行った。線香の燃焼によって発生した煙(黒色炭素微粒子)を光学顕微鏡のステージ上に設置した反応容器へ直接導入し、気相中において観測することに成功した。また、黒色炭素微粒子のオゾンによる不均一酸化反応を誘起するため、オゾン発生装置を設備備品として導入した。オゾンの発生量は、原料ガスの種類(空気または酸素)及びガスの流量に依存する。ヨウ化カリウム水溶液にオゾンガスを通過させ、遊離したヨウ素を酸化還元滴定することによりオゾンを定量し、実験条件の検討を行った。