著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.917-922, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2

有機酸溶液にCa-Algを浸漬加熱した場合のアルギン酸の分子量の変化についてゲル浸透クロマトグラフィーで検討した.1. 浸漬温度が50℃までは,有機酸(酢酸,乳酸,リンゴ酸およびクエン酸)の種類に関係なく1.0Mの高濃度でも分子量低下はわずかであったが,70℃以上になると,浸漬後60分までに分子量が急速に低下した.0.2~2.0Mの範囲では,有機酸の種類に関係なく分子量低下に及ぼす影響は濃度によってほとんど差がなく,70℃では,始発分子量(1.1×106)の10分の1に,90℃では,25分の1になった.2. 分子量低下に及ぼす有機酸の影響は,クエン酸>リンゴ酸>乳酸>酢酸であった.浸漬時間が長くなるにしたがってこの影響は小さくなった.3. 分子量分布は,分子量の低下にともなって狭くなった.いずれの有機酸も70℃では,始発分子量分布(Mw/Mnで表示)3.7が1.7に,90℃では,1.5前後に収束した.
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.727-730, 1996-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

水,乳酸,NaClおよびSuc溶液中で加熱した昆布の軟化機構を明らかにするため,これらのモデル調味液中で浸漬加熱した昆布の細胞壁構成物質の組織形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した.TEM観察の結果,水透析のみ行った試料は,組織の表面にわずかに浮き出た不規則に分布する微小繊維がアモルファスな細胞壁基質の中に半ば埋まった状態,水区は微小繊維が浮き出た状態,乳酸区は,水区と同様アモルファスな細胞壁基質が除去されていたが,水区と比べて繊維の丸みが取れ偏平で押しつぶしたような様相,NaCl区は,アモルファスな細胞壁基質が除去されており,繊維は水区と同様丸みがあって長く伸びた状態,Suc区は,微小繊維間を埋めるアモルファスな細胞壁基質がわずかに観察され,水区に近い形態であった.