著者
奥田 弘枝 田坂 美央 由井 明子 川染 節江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-9, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
3

食品の色彩識別と味覚の関係について若年層の傾向を把握することを目的に20歳前後の男女826名を対象にアンケート用紙に色見本を添え調査し,次のような知見を得た. 食べ物の色が食欲増進に影響するという認識は,男8(8)食品の色彩と味覚の関係子80.6%に対し,女子は92.4%と1割程度高く,影響しないとの回答は男子が9.3%に対し,女子は1.9%と低く,この回答率についての性差はx2検定により有意と認められた. 20歳代の男女が食欲を増進させると意識している色は,上位から赤,オレンジ,黄の3色,逆に減退させると意識している色は黒茶,紫,青の4色が主であった. この男女の選択率を変量としたスピアマンの順位相関係数は高く有意と認められ,男女が共通した意識をもっていることが分かった. 味覚と色彩との関連では,男女とも甘味からはピンクとオレンジの暖色系を,酸味からは黄色,塩味から白,苦味からは茶と無彩色,うま味からはオレンジ,赤,茶をそれぞれイメージし,これらの結果にも相関係数により男女間の一致性は高く有意と認められた. 食べ物の配色については,色相の隔りが小さく色みの近いもの,あるいは,隔りの大きい色相の異なった色が選ばれていた. 性別でみると男女に共通しているのはオレンジ,黄,黄緑若干異なるのが緑,白,大差が見られるのは茶であった. 料理の色の組み合わせについての関心度は,女子のほうが男子よりも高く「大変ある」の回答者は,男子6.5%に対し女子は24.3%と男子の4倍であり,この男女差はZ2検定により有意が認められた.
著者
渡部 佳美 奥田 弘枝 岡本 洋子 上村 芳枝 木村 留美 杉山 寿美 原田 良子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】各地には地域の気候、風土、産業、文化、歴史等に培われ、伝承された行事食が残されている。しかし食生活の変化に伴い、食文化が変容している現状がある。そこで、行事食の認知状況や摂食状況等を明らかにするため、日本調理科学会特別研究として平成21~23年度に実施した「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査から得られた行事食「土用の丑」「重陽」「月見」の結果を報告する。【方法】当学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行った。広島県に在住する大学・短期大学の学生およびその家族等を対象とし広島県の地域間および世代間の比較を行うため、地域を安芸地域(西部)と備後地域(東部)とした。年代を10~20代の学生と30代以上の一般に大別し、西部の学生143名、一般166名、東部の学生87名、一般129名、計525名とした。解析にはエクセル統計2003を用いた。【結果】調査対象者のうち「月見」「土用」は90%以上の者が行事を認知していたが、「重陽」は西部で約20%、東部では約10%と低かった。また、行事および喫食の経験についても「重陽」は他の行事に比べ低く、「月見」は「月見だんご」の喫食経験が高く、東部に比べ西部の方がより高い割合であった。また、「月見だんご」は「買う」と答えた割合が高く、「小芋」は「家庭で作る」割合が高かった。「土用」は、「鰻のかば焼き」を「毎年食べる」と答えた割合が学生約50%、一般約60%と高い割合であった。喫食経験はすべての行事で一般の方が学生に比べ高い割合であったが、いずれの行事食も「家庭で作る」が、現在の方が以前に比べ減少していた。
著者
渕上 倫子 田村 咲江 奥田 弘枝
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.649-654, 1993-08-15
被引用文献数
5

煮熟野菜の軟化に及ぼす陽イオン(ナトリウム,マグネシウム,カルシウム)と蔭イオン(酢酸,硫酸,塩化物)の影響を検討するために,ダイコンの円盤を9種類の塩溶液中で煮熟した.塩濃度が増すに従って塩化カルシウム(10〜1,000mM),硫化カルシウム(0.1〜0.25mM)では硬化し,反対にその他の塩類では軟化した.以下の0.2M溶液中で煮熟したとき,組織中に残存したペクチン質量は,酢酸ナトリウム<硫酸ナトリウム<食塩,酢酸マグネシウム,酢酸カルシウム<硫酸マグネシウム<塩化マグメシウム<蒸留水<硫化カルシウム<塩化カルシウムの順に多かった.煮熟後の円盤の硬さとペクチン質の残存量の間に相関があった.円盤が柔らかいほど,組織中の水溶性ペクチンが多く,反対に希硫酸可溶性ペクチンや酢酸塩緩衡液可溶性ペクチンが少なかった.円盤の硬さへの陽イオンの影響は,Na^+<Mg^<2+><Ca^<2+>の順に大であった.ナトリウム,マグネシウム塩はペクチン質の溶出と組織の軟化を促進した.円盤の硬さへの蔭イオンの影響は,酢酸塩<硫酸塩<塩化物の順に大で,カルシウム塩において最も大きな違いがみだれた.塩類溶液のpHは塩化物<硫酸塩<酢酸塩の順に高く,酢酸塩はpHが高いためにペクチン質の溶出と軟化を促進した.煮汁中にCa^<2+>とCl^-が存在すると硬さが著しく増した.
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.917-922, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2

有機酸溶液にCa-Algを浸漬加熱した場合のアルギン酸の分子量の変化についてゲル浸透クロマトグラフィーで検討した.1. 浸漬温度が50℃までは,有機酸(酢酸,乳酸,リンゴ酸およびクエン酸)の種類に関係なく1.0Mの高濃度でも分子量低下はわずかであったが,70℃以上になると,浸漬後60分までに分子量が急速に低下した.0.2~2.0Mの範囲では,有機酸の種類に関係なく分子量低下に及ぼす影響は濃度によってほとんど差がなく,70℃では,始発分子量(1.1×106)の10分の1に,90℃では,25分の1になった.2. 分子量低下に及ぼす有機酸の影響は,クエン酸>リンゴ酸>乳酸>酢酸であった.浸漬時間が長くなるにしたがってこの影響は小さくなった.3. 分子量分布は,分子量の低下にともなって狭くなった.いずれの有機酸も70℃では,始発分子量分布(Mw/Mnで表示)3.7が1.7に,90℃では,1.5前後に収束した.
著者
岡本 洋子 上村 芳枝 原田 良子 奥田 弘枝 木村 留美 杉山 寿美 渡部 佳美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】平成21~23年日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」データベースから、広島県に10年以上在住している回答者のデータを抽出し、広島県における行事食・儀礼食の実態を明らかにした。とくに本報告では、人日・節分・上巳の行事について、年代間および地区間の「認知と経験」「行事食の喫食状況」等の相異を調べることを目的とした。【方法】広島県10年以上在住者データ(625名)を、10~20歳代(学生;46.6%)と30歳代以上(一般:53.4%)、安芸地区(45.6%)と備後地区(50.9%)に分類した。年代間、地区間の喫食状況等の比較には、独立性の検定(カイ2乗検定)を用い、有意水準は1%未満および5%未満とした。行事食として、七草粥、いわし料理、いり豆、巻きずし、白酒、もち・菓子、ご飯・すし、はまぐり潮汁を取りあげた。【結果】(1)人日・節分・上巳行事の認知は、地区による相異はみられなかったが、経験では30歳代以上で地区間に有意差がみられ(p < 0.01)、備後地区の経験度が高かった。(2)七草粥、いわし料理、はまぐり潮汁の喫食状況では、10~20歳代において地区間に有意差がみられた。いわし料理は、30歳代以上において地区間に有意差がみられた。いずれも備後地区の喫食経験度が高い傾向がみられた。(3)認知と経験、喫食状況では、いずれの地区においても、年代間に相異がみられる行事食が多かった。(4)「行事食を家庭で作る」・「買う」では、いずれの地区においても年代間に有意差がみられる行事食が多く、行事食を家庭で作る機会が失われていることが示唆され、家庭内の調理担当者からその子や孫へと受け継がれた食文化が変容している状況がうかがえた。
著者
広島県食文化研究グループ 三好 康之 岡本 洋子 前田 ひろみ 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 亀井 文 上村 芳枝 倉田 美恵 土屋 房江 三谷 璋子 吉永 美和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.369-377, 2006-12-20
被引用文献数
1

広島県で摂取されている魚料理を把握する目的で,広島県在住者171名を対象として質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。回答数は4,551件であった。魚料理にはあじ,いか,ぶり,あさり,さばがよく用いられ,広島県で漁獲量の多い牡蠣,ちぬ,たちうお,こいわし,なまこはこれらより少なかった。また,島嶼地域では,自給の魚介類で調理する魚料理が他の地域よりも多かった。調理法は,焼き物が最も多く,なま物,煮物,揚げ物の4つの調理方法で総回答数の75.1%を占めていた。和風調理が多く,焼き物の64.4%を塩焼きが,煮物の75.2%を煮付けが占めていた。対照的に,こしょう,バターなどを用いた洋風調理は少なかった。広島県特有の魚介類であるこいわしは,天ぷらや刺身として,ちぬは塩焼きとして,えびじゃこは汁物や塩茹でとして料理されていた。
著者
岡本 洋子 土屋 房江 前田 ひろみ 三谷 璋子 三好 康之 吉永 美和子 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 上村 芳枝 亀井 文 倉田 美恵 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.160, 2005

<br>【目的】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:魚介類」の一環として、広島県において調査を行った。今回は、あなご、かき、まだこ(食品成分表の食品番号10015:10292:10361)の利用実態について調べることを目的とした。<BR>【方法】広島県内の14地域で、質問紙調査を実施した。14地域を島嶼部、都市沿岸部、都市内陸部、中国山地に4区分した。調査項目は、魚介類の種類、入手方法、手作り・購入、調理法、日常食・行事食度等である。調査対象者は20歳代から70歳代の171名である。調査時期は2003年10月_から_2004年2月。<BR>【結果】(1) 記載魚介類は212種類(食品成分表)、総記載料理数は4,684であった。(2) 調査者数に対するあなごの出現比率では、島嶼部83.5%、都市沿岸部80.6%、都市内陸部45.9%、中国山地18.8%であった。調理法では、焼き物と飯料理が多くみられ、照り焼き、ちらしずし、あなご飯、巻きずし、刺身(島嶼部)、雑煮、茶碗蒸し等に調理された。(3) かきの出現比率では、島嶼部63.1%、都市沿岸部91.2%、都市内陸部89.5%、中国山地73.0%であった。調理法では、4地域いずれにおいても、フライ、鍋物、酢がきが多くみられた。殻付き素焼きやグラタン料理もみられた。(4) まだこの出現比率では、島嶼部69.9%、都市沿岸部63.1%、都市内陸部36.3%、中国山地75.3%であった。調理法では、4地域いずれにおいてもなま物(刺身、酢の物)や茹で物(ゆでだこ、ぬた)が多くみられ、揚げ物(島嶼部ではたこ天)、たこの煮物やたこ飯(都市沿岸部)、にぎり寿司、たこ焼き等に調理された。
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.727-730, 1996-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

水,乳酸,NaClおよびSuc溶液中で加熱した昆布の軟化機構を明らかにするため,これらのモデル調味液中で浸漬加熱した昆布の細胞壁構成物質の組織形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した.TEM観察の結果,水透析のみ行った試料は,組織の表面にわずかに浮き出た不規則に分布する微小繊維がアモルファスな細胞壁基質の中に半ば埋まった状態,水区は微小繊維が浮き出た状態,乳酸区は,水区と同様アモルファスな細胞壁基質が除去されていたが,水区と比べて繊維の丸みが取れ偏平で押しつぶしたような様相,NaCl区は,アモルファスな細胞壁基質が除去されており,繊維は水区と同様丸みがあって長く伸びた状態,Suc区は,微小繊維間を埋めるアモルファスな細胞壁基質がわずかに観察され,水区に近い形態であった.
著者
奥田 弘枝 田坂 美央 由井 明子 川染 節江
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-9, 2002-02-20
被引用文献数
5

食品の色彩識別と味覚の関係について若年層の傾向を把握することを目的に20歳前後の男女826名を対象にアンケート用紙に色見本を添え調査し,次のような知見を得た。食べ物の色が食欲増進に影響するという認識は,男子80.6%に対し,女子は92.4%と1割程度高く,影響しないとの回答は男子が9.3%に対し,女子は1.9%と低く,この回答率についての性差はx^2検定により有意と認められた。20歳代の男女が食欲を増進させると意識している色は,上位から赤,オレンジ,黄の3色,逆に減退させると意識している色は黒,茶,紫,青の4色が主であった。この男女の選択率を変量としたスピアマンの順位相関係数は高く有意と認められ,男女が共通した意識をもっていることが分かった。味覚と色彩との関連では,男女とも甘味からはピンクとオレンジの暖色系を,酸味からは黄色,塩味から白,苦味からは茶と無彩色,うま味からはオレンジ,赤,茶をそれぞれイメージし,これらの結果にも相関係数により男女間の一致性は高く有意と認められた。食べ物の配色については,色相の隔りが小さく色みの近いもの,あるいは,隔りの大きい色相の異なった色が選ばれていた。性別でみると男女に共通しているのはオレンジ,黄,黄緑,若干異なるのが緑,白,大差が見られるのは茶であった。料理の色の組み合わせについての関心度は,女子のほうが男子よりも高く「大変ある」の回答者は,男子6.5%に対し女子は24.3%と男子の4倍であり,この男女差はx^2検定により有意が認められた。