著者
大森 政美 長神 康雄 橋木 里実 川西 美輝 神代 美里 中川 英紀 力久 真梨子 加藤 達治
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-45, 2018-04-30 (Released:2019-03-07)
参考文献数
15

【目的】 摂食嚥下障害は,高齢者によく認められ誤嚥性肺炎を引き起こすといわれている. VFや VEは摂食嚥下障害の診断に最もよい検査法であるが,高齢者肺炎患者においては認知症や全身状態から必ずしも実施できない. The Mann Assessment of Swallowing Ability(MASA)は, 2002年にアメリカで開発された初発の脳卒中患者の摂食嚥下機能評価法である.この研究の目的は,高齢者肺炎患者に対する MASAの摂食嚥下機能評価法としての有用性の検討である.【対象と方法】 この研究は前向き研究であり, 2014年 12月から 2015年 6月までに入院した 153例の肺炎患者(平均年齢 85.4±9.9歳)を対象に,入院 3日以内に MASAを施行した.評価項目は,経口摂取の有無と 30日以内肺炎再発とした.【結果】 経口摂取群と非経口摂取群,肺炎再発なし群と肺炎再発群の平均 MASAスコアには有意な差を認めた(p< 0.001). ROC曲線を用いて AUCを計算したところ, MASAスコアと経口摂取・肺炎再発の AUCは 0.87・ 0.76であった.経口摂取,肺炎再発のカットオフ値は 113点と 139点であった.多変量解析では, MASAスコアは肺炎再発の独立した危険因子であった.【結論】 MASAは高齢者肺炎患者の摂食嚥下機能評価法として有用であった.