著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.11-22, 2016-03-17

This paper explores London citizens' attitudes towards immigrant presence, particularly, their legal status in early modern London. First, I will describe an outline of the legal status that immigrants acquired, focusing on denization and a London citizenship for them in the latter half of the sixteenth century. Second, I will investigate the meaning of the 'freedom of the City' and its privileges for immigrants. The evidence shows that although they were crucial to their success in London, only a small percentage of them enjoyed those privileges. The national government could have encouraged the City's authority to grant them legal status. The introduction of such a policy, however, garnered fierce opposition from Londoners, as the citizenship of London was the core value of local identity and Englishness as well as political and economic rights. To conclude, the City government could have continued imposing strict economic and social restrictions on immigrants for their lineage's sake.
著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度においても、帰化・居留権取得者に関する史料集(Letters of Denization and Acts of Naturalizaion…)の解読とそのデータベース化を前年度に引き続き実施した。また、データ処理と同時に、イギリス議会の議会史料(両院議事録や審議録)とその関連図書、一般帰化法制定に関する文献・史料、ユグノー、パラタイン、ユダヤ人移民関係の文献・史料、ナショナル・アイデンティティ関連の文献・史料の収集を行った。これまでの文献・史料に加えて、新たに収集した文献・史料の整理・精読を進めた。グローバルな視点から帰化法の問題を考察するべく、イングランド(本国)とアイルランドや北米植民地(いわゆる第一次帝国)における帰化法制定と規定内容の比較研究の準備も引き続き進めた。本年度も、帰化法制定や移民政策(とkuに移民支援政策)において、重要な対象となる18世紀初頭のパラティン移民に着目し、イギリス側の外国人支援のありかたについて重点的に研究を進めた。彼らの帝国内移動や彼らへの支援を、移民の国際移動の問題や対ユグノー支援と関連させつつ考察した。現在、パラティン移民に関する研究はまだ途上であるが、そめ成果の一部は2005年2月川北稔・藤川隆男編著『空間のイギリス史』の所収論文(「嫌われ、行き「場のない」可哀想な移民たち」)として刊行された。また、帰化法や国民意識の議論にかかわるパラタイン移民について、基礎的な史料分析を行い、移民集団としての彼らの特徴を明らかにした。その成果は雑誌論文(「『到着者リスト』にみるパラタイン移民」)として今春刊行される予定である。現在は、パラタイン移民とユグノーへの支援策を帰化法制定の議論とナショナル・アイデンティティ形成の問題に関連させつつ分析・考察を進めている。その成果の一部を今年度5月に熊本歴史科学研究会で報告したが、加えて、来年度早々にも論文として公表する予定である。
著者
中川 順子
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題の研究成果は次の3点である。第一に、近世ロンドンの外国人教会による救貧は、同胞による困窮移民に対する救済活動として重要な役割を果たした。それは同時に、教会による移民の規律化とアイデンティティ形成の手段でもあった。第二に、18世紀初頭のドイツ系移民はロンドン流入後に支援獲得の手段としてパラタイン移民という自己意識を形成した。彼らの流入は移民に対するイギリス社会の態度を移民規制の方向に転換させた。第三に、他者の顕在化と他者との共生(救貧や法的地位の付与)を巡る議論は、近世イングランド社会(人々)に自己意識の形成を促した。