著者
"篠原 ひとみ 中新 美保子 小林 春男"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.75-84, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,唇顎口蓋裂児のビン哺乳時の顔面筋の動きについて,健常児との違いやHotz床装着前後の違い,そして使用乳首との関係を明らかにすることである.方法は,健常児1名,口唇顎裂児1名,口唇口蓋裂児1名のビン哺乳の状態を児の顔面を中心にビデオカメラで左右から撮影した.顔面筋の動きを見るために児の顔面に,2〜3 mm角のテープを貼付した.連続9〜11回の吸啜運動から下顎を最大に下げた画像と上げた画像をコンピュータ処理し,18〜22枚取り出した.そして,その18〜22枚の画像をもとに顔面に貼付したテープ間の距離5区間とその角度(5点)を測定し,下顎の上下運動間で対応のあるt検定を行った.その結果をもとに,顔面筋の動きについて,健常児とHotz床装着前の口唇顎裂児や口唇口蓋裂児との違い,Hotz床装着前後の変化,および使用乳首による顔面筋の動きの違いを比較,検討し以下のことが明らかになった.1.健常児に比べてHotz床装着前の口唇顎裂児は患側の動きが大きく,健側の動きは健常児と似ていた.2.Hotz床装着後の口唇顎裂児は患側の動きが減少し,特に口輪筋の動きが減少していた.3.Hotz床装着前の口唇口蓋裂児の患側は,健常児に比べて口輪筋の動きが活発であり,健側は口輪筋の動きが少なかった.4.Hotz床装着後の口唇口蓋裂児は患側,健側ともに動きが減少し,健常児に比べて患側,健側ともに動きが少なかった.5.吸啜時の顔面筋の動きは,口蓋裂用乳首を使用した場合は普通乳首使用に比べて患側,健側ともに少なく,Hotz床装着後は健常児よりも動きが少なかった."