著者
松井 利充 伊藤 光宏 中本 賢 BERGEMANN An AARONSON Stu
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

増殖因子受容体の生物学的機能の発現には、リガンド結合にはじまる内因性チロシンキナーゼの活性化が必須であるが、キナーゼ活性を持たない増殖因子型受容体が正常組織にも発現していることが見いだされた。本研究においては私共が見いだしたキナーゼ欠損型のEphファミリー受容体、EphB6の生理機能を解明するために、キナーゼ欠損型受容体ErbB3とEphファミリー受容体研究のそれぞれにおいて世界をリードしている米国の研究者達と共同研究をすすめた。研究代表者松井は3度ニューヨークに赴き、研究分担者であるAaronson、Bergemann、伊藤博士らと本研究領域に関する最新の情報交換を行うともに、in situ hybridization法の技術指導をうけた。また、中本およびBergemann博士を招へいし、本学の院生に直接技術指導を行ってもらった。EphB6受容体発現は、健常人末梢血白血球では主にCD4陽性のTリンパ球の一部に認められるが、CD4+/CD8+胸腺細胞にはより強い発現がみられ、T細胞の分化/成熟に伴う生理的な遺伝子発現調節機構の存在が示唆されることや、既知のEph受容体リガンドの中ではephrinB2がEphB6受容体に高親和性に特異的結合する事を明らかにした。また、世界に先駆けEphB6遺伝子ノックアウトマウスの作製にも成功しが、当該マウスの中枢神経機能の解析をさらに進めるため、クリーブランド・クリニックに移籍した中本賢博士にマウスを送付するとともに、マウス作成にたずさわった松岡博士を派遣し、人的・物的交流をさらにすすめ国際的学術共同研究を推進しており、キナーゼ欠損型の本受容体の生理機能の解明はチロシンキナーゼ型増殖因子受容体を介する細胞間相互作用の活性発現の分子機構にも新しい概念をもたらす可能性があると考えている。