著者
中村 世名
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.97-105, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
37

伝統的にマーケティング研究は競争を回避すべき対象と見なしてきた。しかし,激しく,素早い競争行動によって特徴づけられる今日の環境を踏まえると,競争が不回避であるという前提のもと,競合企業との競争に勝ち続けるために必要な要因を探究する新たなマーケティング研究が求められるであろう。本論は,そのような研究を「競争志向型のマーケティング戦略研究」と呼称し,競争志向型のマーケティング戦略研究が依拠すべきフレームワークを検討した。分野横断的なレビューの結果,オーストリア経済学をルーツとする競争ダイナミクス・ビューが競争志向型のマーケティング戦略論の依拠するフレームワークとしてふさわしいことが特定化された。また,今後の研究の方向性として,競争ダイナミクス・ビューの知見に(1)顧客との関係性,(2)流通業者との関係性,(3)ポートフォリオの視点を加えた研究を行うことによって,新たな示唆を提供できることが指摘された。
著者
中村 世名
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.40-51, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
16

競争行動の採用傾向と企業成果の関係を探究してきた競争ダイナミック研究は,優位性が非持続的な市場で企業が生き残っていくためには,積極的な競争行動の採用が必要であると主張してきた。主張を経験的にテストするために,彼らは,積極的な競争行動を行動の量,複雑性,および競争的異質性の3つの次元で捉え,3つの次元と企業成果の因果関係を分析してきたが,その際,因果関係の複雑性,非対称性,および同結果性については考慮してこなかった。本論は,これらの性質を有する因果関係の分析に適した手法であるfsQCAを用いて,積極的な競争行動(製品導入行動)の3つの次元と企業成果(市場シェアの拡大/縮小)の関係を探究した。清涼飲料水産業のデータを用いた分析の結果,市場シェアの拡大に成功した企業に共通する2つの製品導入行動の採用傾向と市場シェアの維持に失敗した企業に共通する2つの製品導入行動の採用傾向がそれぞれ見出された。