著者
中村 健正
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.45-52, 2020-01-25 (Released:2020-02-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2

目的:回復期リハビリテーション病棟に入棟した高齢脳卒中患者における誤嚥性肺炎の危険因子,誤嚥性肺炎が脳卒中後の摂食状況および日常生活動作の回復に及ぼす影響を明らかにすること.方法:対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入棟した脳卒中症例のうち入棟時65歳以上で嚥下障害を有していた463例(80.2±8.1歳).診療録から後方視的に調査項目を抽出し,誤嚥性肺炎の危険因子,誤嚥性肺炎と入院中のfunctional oral intake scale(摂食状況の指標)のレベル上昇および機能的自立度評価法(日常生活動作の指標)の運動項目点数増加(以下,運動FIM利得と略す)の関係について多変量解析を用いて検討した.解析にあたって運動FIM利得は16点以上=1,15点以下=0に変換した.結果:誤嚥性肺炎は52例に発症し,性別(男性のオッズ比(OR)3.07,95%信頼区間(CI)1.59~5.95,P<0.001),入棟時geriatric nutritional risk index(栄養状態の指標,1単位上昇のOR 0.94,95% CI 0.90~0.97,P<0.001),入棟時経管栄養の有無(有りのOR 3.89,95% CI 1.71~8.83,p=0.001)が誤嚥性肺炎の有意な発症予測因子であった.誤嚥性肺炎は入院中のfunctional oral intake scaleレベル上昇の有無を従属変数とした多変量解析で有意な独立変数であり(OR 0.29,95% CI 0.12~0.66,p=0.003),運動FIM利得にも関連していた(OR 0.23,95% CI 0.09~0.55,p=0.001).結論:男性,入棟時低栄養,入棟時経管栄養が誤嚥性肺炎の危険因子であること,誤嚥性肺炎は脳卒中後の摂食状況および日常生活動作の回復に関連することが示唆された.