- 著者
-
中村 国則
- 出版者
- The Japanese Group Dynamics Association
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.1, pp.12-22, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
- 参考文献数
- 25
従来の社会的認知モデルは, 主に社会的対象の性質に注目し, 処理過程を記述している。しかしこれまで, 同じ対象に対する評定であっても客観的な数値に基づいて行うか (客観的評定), 主観的な印象に基づいて行うか (印象評定) によって評定結果が相違することが知られている。従来の社会的認知モデルでは, この相違を説明できない。本研究の目的は, 両評定の相違の背後に存在する処理過程を検討することである。本研究は, 代替帰結効果 (Windschitl and Wells, 1998) に基づいて, 両処理過程の相違を関連する事象間の比較プロセスの相違と解釈し, 2つの実験を行った。実験1では, 関連する比較事象が存在しない状況で, 実験2では, 関連する比較事象が存在する状況で, 被験者は架空の国における疫病対策プログラムの効果を評価することを, 両評定で求められた。その結果, 実験2において両評定の相違が確認された。以上の結果から, 客観的評定と印象評定との相違を確認し, 両評定の相違が比較プロセスの影響にあることを示した。また, 社会的認知に対する幾つかの示唆を論じた。