著者
遠藤 由美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.150-167, 2000
被引用文献数
1 1

自尊感情は心理学におけるもっとも重要な概念の一つでありながら, これまで自尊感情とは何かという議論はあまりおこなわれてこなかった。本稿では, これまで明示的に示されることがほとんどなかった自尊感情に関する従来の考え方を探り, 伝統的な「自己」が現実世界の社会的状況や人間関係性から切り離され過ぎていたという問題点を指摘した。次に, 最近提唱されつつある自尊感情への生態学的・対人的視点をとったアプローチを紹介し, これまで整合性のある説明を与えられなかった点について, 新たな観点から議論した。最後に, 今後の研究課題と意義を提唱した。
著者
堀毛 一也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.116-128, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
34
被引用文献数
11 4 17

本研究では, これまで行われてきた異性関係スキル研究の問題点を整理するとともに, 1) 異性関係スキルの分類および基本的スキルとの関連性の検討, 2) 関係の発展・崩壊とこれらのスキルの関連性の検討という2点を目的とした調査研究を行った。そのためにまず, 現在進行中の恋愛体験について, 熱中度や, 類似性, 重要性などいくつかの項目で評定を求めた。また, 過去の失恋体験についても, ショックの大きさ, 関係から得た自信などについて評定を求めた。同時にオリジナルに開発した社会的スキル尺度 (ENDE2) と異性関係スキル尺度 (DATE2) により, 基本スキルと異性関係スキルの測定を行った。因子分析の結果, ENDE2では, 男子4因子, 女子3因子が得られた。このうち記号化スキルと解読スキルはどちらにも共通に含まれていた。DATE2の分析からは, 男子7因子, 女子6因子が抽出された。2つのスキル間の関連性を検討したところ, 女子では記号化・解読スキルと異性関係スキルの問に中程度の相関が見られた。一方男子では, 基本スキルのそれぞれが, 異性関係スキルの諸因子と別個の相関を示していた。この結果は, デート場面でイニシアチブを求められることにより, 男子は多様なスキルを早めに高め, 状況に応じて使い分けることが必要になるものと解釈された。また, 現在進行中の恋愛関係とスキルの関連を分析した結果, 異性・基本スキルとも関係の発展と共に高まる傾向が示されたが, その発展の過程には明確な性差がみられた。男性は, 発展の初期に相手への情熱を高め, スキルを洗練させてゆく傾向があった。これに対し, 女性は相手の特性を慎重に検討し, 関係が重要であるという認識を得た後に, 急速にスキルを発展させることが明らかになった。さらに, 過去の失恋体験もスキルの向上に影響しており, 男性では過去の失恋から得た自信やショックの大きさがスキルの向上と有意な関連をもっていたのに対し, 女性では自分から強い愛情を示しながら失恋した場合にはスキルが高まるが, それ以外に過去体験との関連はみられなかった。これらの知見はこれまでの恋愛や失恋に関する研究結果を支持するものと考えられる。
著者
樂木 章子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.146-165, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

本研究では, 乳児院や児童養護施設で生活する乳幼児が, 血がつながらない育て親 (養親) に養子として引き取られるに至る過程において, その重要な前提である, 育て親となる夫婦が養子を迎える決断をなす過程に着目した。具体的には, ある養子斡旋団体が養子を迎えようとする夫婦を対象に実施している養親講座の現場でのフィールドワークに基づき, そこで用いられている言説戦略を分析した。この養親講座においては, 養子の子育ての困難さ, とりわけ, 施設で生活する子どもとの縁組によって直面する問題が生々しく語られ, 夫婦がこれまで築いてきた生活を根底から揺るがされるものであることが強調された上で, 夫婦に養子を迎える決断を迫る。このようなプロセスを通して, 夫婦がそれまで無自覚に依拠していた諸前提が明確化され, 無意識のうちに抱いていた親子関係のイメージが否定されていく。養親講座の言説戦略は, いわば, 養子を迎えるという決断が, その後の人生における「公理」として機能しうるような状況を構成していることが示唆された。言い換えれば, 養親講座の言説戦略は, 血縁という先験性を持たない養親子において, 血縁に代替しうるような先験性を構築する試みであることが考察された。
著者
Keiko Ishii
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1909, (Released:2019-10-02)
参考文献数
13

Previous research has demonstrated that when people have to choose a product for which they do not have a preference and can observe their partners’ choices in advance, they are more likely to imitate their partners’ choices when choosing privately, whereas they are likely to choose differently when they are with their partners. The present study extends this evidence by testing Japanese participants and examining individual differences in the need for uniqueness. Despite the Japanese cultural norm of interdependence, which is positively associated with conformity, less than half of the participants imitated their partners’ choices, whether they chose privately or publicly. Moreover, people with a high need for uniqueness tended to choose a different option when choosing in front of their partners. Implications for the consequences of social influence are discussed.
著者
和田 実
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.38-49, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

本研究は, 大学生が恋愛関係崩壊に際してどのような対処行動をとり, 崩壊時にどのような感情を抱くのか, さらに崩壊後にどのような行動的反応をとるのかを性差と崩壊時の恋愛関係進展度の観点から調べた。被験者は大学生239 (男性116, 女性123) 名であった。いずれも, 異性としばらく付き合った後に, その関係が崩壊した経験のある者のみである。恋愛関係崩壊への対処行動として“説得・話し合い”, “消極的受容”, および“回避・逃避”, 崩壊時の感情として“苦悩”, 崩壊後の行動的反応として“後悔・悲痛”と“未練”が見いだされた。恋愛関係が進展していた者ほど, 崩壊時に説得・話し合い行動がより多くとられ, 崩壊時の苦悩が強く, 崩壊後の後悔・悲痛行動と未練行動が多かった。女性は, 関係が進展していた者ほど回避・逃避行動をとらなかった。関係進展度に関わらず, 男性は女性よりも消極的受容行動を多くとった。さらに, もっとも進展した関係が崩壊した場合のみで, 男性よりも女性の方が多くの説得・話し合い行動をとる一方, 回避・逃避行動をあまりとらなかった。
著者
矢守 克也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.66-82, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
64
被引用文献数
3 2

本研究は, 災害・事故が集合的に風化するプロセス-社会的な現実感が特定の災害・事故から消失していく長期的かつ社会的な過程-を測定・表現する方法について検討したものである。まず, 風化の長期的なトレンドを, マスメディアの報道量の長期変化を通して近似的に測定・表現した先行研究の成果を踏まえ, それを撹乱する2つの個別的な要因について実証的に検討した。具体的には, 第1に, 相次いで発生した複数の事象が相互に影響し, 後続事象の発生によって先行事象に関する報道量が低下する現象 (相互干渉現象) をとりあげた。第2に, 事象の発生期日をピークとして, 周期的かつ一時的に報道量が増加する現象 (周期変動現象) について検証した。その結果, これらの現象は, 一面では, マスメディア報道による風化現象の測定にとっての撹乱要因であるが, 他面では, むしろ, 災害・事故の風化現象に固有の社会過程を明示し, 記述するために利用可能であることが示された。次に, マスメディア分析を補完する新たな方法として, 災害・事故の発生後, 人々が実際に示す行動 (変数) を長期的に追尾する方法をいくつか提起し, その有効性を確認するとともに, こうした行動変数とマスメディア報道との関連性についても検討した。さらに, 共同想起の概念に依拠して, 本稿で検討した集合的な記憶と個人的な記憶との相互連関についても論じた。
著者
唐沢 かおり 三谷 信広
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.158-166, 2006
被引用文献数
2

本研究は有利な立場にいる人たちの不公平さの認知が他集団に対しての支援的態度に与える影響を,責任帰属と罪悪感の媒介的役割に着目して検討した。データは仮想世界ゲーム(SIMINSOC)の参加者124人がゲーム前半終了時に回答した質問紙から得た。仮想世界ゲームは2つの豊かな地域と2つの貧しい地域から構成されており,貧しい地域に所属する参加者がゲーム内で生存するためには豊かな地域からのサポートを得ることが重要である。豊かな地域に所属した参加者からのデータをパス解析により分析した結果,不公平さの認知が,貧しい地域の苦境に対して自分たちの地域が責任を持つという認知につながり,罪悪感を喚起した。さらに,罪悪感が友好的な関係志向につながり,そのような関係志向が支援的態度を高めた。考察では,罪悪感が実際の相互作用を伴う状況でより重要な役割を果たす可能性や,罪悪感の起源を視野に入れた研究の必要性を議論した。<br>
著者
Mizuka Ohtaka Kaori Karasawa
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1810, (Released:2018-07-10)
参考文献数
16

Although previous studies have verified that perspective-taking differs according to the individuals involved and their relationships, the balance between individual and relationship effects remains unclear. Thus, we examined perspective-taking in families based on the social relations model (Kenny, Kashy, & Cook, 2006). We conducted a triadic survey of 380 undergraduates and their fathers and mothers. We analyzed the triadic responses of the 166 families in which all three members completed the survey. It was found that perspective-taking in families is affected by the family itself, each actor, fathers as partners and all dyadic relationships. The relative contributions of individual effects and relationship effects differed between parent-child relationships and marital relationships. We discuss the implications of our findings for enhancing perspective-taking.
著者
Juri hori
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1802, (Released:2018-04-14)
参考文献数
13

Recognizing the structure of human well-being related to ecosystem services is an important first step to addressing the associated environmental issues. This paper aims to analyze the structure of human well-being related to ecosystem services in Japan (including coastal and inland areas). Satisfaction levels with the five components of human well-being (basic material for a good life, health, good social relations, security, and freedom of choice and action), as defined by the Millennium Ecosystem Assessment, were investigated using a questionnaire. Of the five components, structural equation modeling analysis indicated that “security” and “basic materials for a good life” functioned as explanatory variables, while “freedom of choice and action” acted as a dependent variable through its effects on the intermediate variables “health” and “good social relations”. This study obtained similar findings to previous studies regarding the structure of human well-being. The present results also indicate that the structural model of human well-being related to ecosystem services might be psychologically shared among people.
著者
Hirofumi Hashimoto
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1815, (Released:2019-03-30)
参考文献数
20

The purpose of the current study was to clarify whether interdependent behavior among the Japanese is aligned with their expectations regarding others’ behavior or their own preferences. The participants were privately asked about their preference for independence or interdependence and their expectations regarding others’ independent or interdependent behavior. Then, they were asked to publicly express whether their own behavior was indicative of independence or interdependence. When comparing the participants’ preferences, expectations, and actual behavior, I found that interdependence was only evident in their expectations and public behavior; i.e., the participants answered that they preferred independence rather than interdependence, whereas they expected that others are interdependent and identified themselves as interdependent in public. These findings suggest that interdependent behavior among the Japanese is based on their expectations regarding others’ behavior rather than their own preferences.
著者
小出 寧
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.129-136, 2001-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

本研究では, 性別受容性尺度を作成し, その信頼性・妥当性を確かめることを目的とする。方法は質問紙法で, 学生 (男性117人, 女性117人) を対象に調査を行なった結果, 信頼性は十分に確認されなかったが, 妥当性は確認された。得られた知見は, (a) 性別受容性は男性より女性のほうが低く, (b) 男女とも, 自己の性別と一致するジェンダー・パーソナリティが高いほど性別受容性が高くなる方向で作用する一方, (c) 男女とも, 自己の性別と反対のジェンダー・パーソナリティが高いほど性別受容性が低くなる方向で作用し, (d) フェミニスト志向が強いほど性別受容性が低くなる, の4点であった。
著者
坂元 章 三浦 志野 坂元 桂 森 津太子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.87-101, 1995
被引用文献数
1

本研究の目的は, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 人々の, 自己イメージ, 更には, 行動に影響するかどうか, また, その影響の強さが, 学術的な心理テストのそれと異なるかどうかを検討することであった。筆者たちは, 1つの実験を行い, 64名の女子の被験者を2つの群に分け, 1つの群には通俗的心理テストに回答させ, もう1つの群には学術的心理テストに回答させた。そして, それぞれの群の半分には, 外向性の偽のフィードバックを与え, もう半分には, 内向性の偽のフィードバックを与えた。実験の結果は, 外向性のフィードバックを受けた被験者が, 内向性のフィードバックを受けた被験者に比べて, 自分は外向的であると考え, 初対面の人物 (サクラ) に対して外向的に行動するようになることを示した。そして, この行動に対する影響の程度は, 通俗的心理テストと学術的な心理テストの間で同じであった。これは, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 学術的心理テストのそれと同じ程度に, 人々の行動に影響し, 自己成就現象を引き起こしうることを示唆している。実験の結果は, また, 通俗的心理テストと学術的心理テストは, 行動への影響では違いがないが, 心理的安寧への影響では違いがあることを示した。通俗的心理テストのほうが, 学術的心理テストよりも, 心理的安寧を与えていた。また, 筆者たちは, 補足的調査を行って, それぞれのフィードバック文の特徴を調べた。
著者
堀江 尚子 渥美 公秀 水内 俊雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-17, 2015

本研究は,ホームレスに対する支援のための入所施設において,継続的な支援の関係の構築を目指したアクションリサーチであり,支援の関係性の継続と崩壊という現象を理論的に考究するものである。近年,急増したホームレスの人々が抱える問題は多様である。なかでも対人関係に問題を抱える人は少なくない。ホームレスの支援活動では,当事者と支援者の関係性の継続が重要である。関係性の継続には,関係の本来の様態である非対称が非対等に陥らないことが要請され,そのためには偶有性を喚起・維持する方略に希望がある。本研究はこの方略を組み込んだアクションリサーチである。具体的には,ホームレスを多く引き受ける生活保護施設Yが開催するコミュニティ・カフェに注目し,その施設の退所者と地域の人々の協働の農作業プロジェクトを実践した。偶有性の概念を媒介にして戦略的な実践によって継続的な関係が構築された。支援関係の継続と崩壊について理論的考究を行い,労働倫理を強く持つ人々は支援を受ける当事者になることが困難であることを指摘した。
著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005
被引用文献数
6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。<br>
著者
菊地 雅子 渡邊 席子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.23-36, 1997-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
46
被引用文献数
20 17

他者一般の信頼性についての信念である一般的信頼の高さが必ずしもその人の騙されやすさを意味しないというRotter (1980) の議論, および高信頼者は低信頼者よりも他者の信頼性 (ないしその欠如) を示唆する情報により敏感であるという小杉・山岸 (1995) の知見を, 情報判断の正確さにまで拡張することによって導き出された「高信頼者は低信頼者に比べ, 他者の一般的な信頼性についての判断がより正確である」とする仮説が実験により検討され, 支持された。この結果は, 他者一般の信頼性の「デフォルト推定値」としてはたらく一般的信頼の高低と, 特定の他者の信頼性を示唆する情報が与えられた場合のその相手の信頼性の判断とは独立であることを示している。すなわち, 高信頼者は騙されやすい「お人好し」なのではなく, むしろ他者の信頼性 (ないしその欠如) を示唆する情報を適切に処理して, 他者の信頼性 (ないしその欠如) を正確に判断する人間であることを示唆している。最後に, 社会環境と認知資源の配分の観点からこの知見を説明するための一つのモデルが紹介される。
著者
相澤 寛史
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-145, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
48
被引用文献数
3 2

本研究では, 相手との対人関係から得られる成果と, 相手以外の関係からの成果, 相手への投資によって対人関係が維持されるとする投資モデルの精緻化を検討した。大学生 (N=414) の同性友人関係について1) 投資モデルにないが衡平理論の概念である怒りや罪悪感という感情も含めてコミットメントへの影響を調べた結果, コミットメントへは満足が大きな影響を与えていた。関係が続くか否かはその関係への満足により大きな影響を受けており, 投資モデルの概念のみでコミットメントの説明は十分であった。2) さらに我々の成果・相手の成果を用い, 成果概念を詳細に検討した。モデル中の対人関係より得られる成果を我々の成果・相手の成果と置き換えて共分散構造分析を行った。また, 同時に親密さごとについても分析を行った。その結果, 親密さが低くなるほど相手の成果を重視する傾向が見られた。怒りを除く全ての社会的交換変数及び罪悪感は親密になるにつれ大きくなった。投資の影響は少なく, 女性では親密になればなるほど投資がコミットメントを下げる (関係を崩壊する) 方向に働く傾向が見られた。全般的に投資モデルの変数から投資を除いた方がモデルの適合が良くなる傾向を示した。
著者
吉川 肇子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-54, 1989
被引用文献数
1 1 6

ポジティヴな評価の印象 (好印象) よりも, ネガティヴな評価の印象 (悪印象) の方が, 持続しやすく, 覆しにくいことを明らかにした。あわせて, 帰属の違いを変数として導入し, 印象変化との関連を検討した。被験者は95名の男女大学生であり, 刺激人物の行動を記述した文章を与えて, はじめの印象を形成させた。10分間のディストラクション課題をはさんで, はじめの印象と反対の情報を与え, 印象の変化を分析した。さらに1週間後, 印象評定のみを行い, 印象の持続を調べた。帰属の違いは, はじめに与える刺激文中で操作した。<BR>仮説は次の通りである: 1) 悪印象は好印象よりも覆しにくい。2) 悪印象は好印象よりも持続しやすい。3) 悪印象であれ, 好印象であれ, 状況帰属されるよりも傾性帰属される方が, 印象は残りやすい。<BR>実験の結果, 仮説1), 2) ともに支持された。帰属の操作は有効でなかったために, 仮説3) は検証できなかった。さらに, 活動性の次元の印象の変化の分析から, 印象の残りやすさには, 何を最頻的と考えるかということが決め手となるという, 各次元共通のメカニズムが働いていることが示唆された。
著者
矢守 克也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.20-31, 1996-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1 6

「災害は忘れたころにやってくる」-この警句は、災害体験がいかに「風化」しやすいかを暗示している。しかし、実際に、「風化」はどのくらいの速度で進むものなのだろうか。また、そのようなことを測定する方法があるのだろうか。本研究は、1982年7月の長崎大水害を事例として、災害の記憶が長期的に「風化」していく過程を、同災害に関する新聞報道量を指標として定量的に測定することを試みたものである。災害を単なる自然現象ではなく、一つの社会的現象としてとらえる立場にたてば、その「風化」についても、それは言語を介した社会的現象の形成・定着・崩壊過程として把握されねばならない。現代においては、マスメディアは明らかにその作業の一翼を担っている。本研究では、被災地の地元地方紙である長崎新聞に掲載された水害関連記事を災害後10年間にわたって追跡し、月ごとの報道量を測定した。その結果、報道量は指数関数的に減少することが見いだされた。ただし、新聞報道量の減少、すなわち、災害の「風化」とは単なる忘却の過程ではない。それは、当該の出来事の意味が人々のコミュニケーションを通してこ・定の方向へと収束し、共有され、定着していく過程でもある。
著者
Ryosuke Yokoi Kazuya Nakayachi
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1819, (Released:2019-01-31)
参考文献数
11

This study examined the determinants of trust in artificial intelligence (AI) in the area of asset management. Many studies of risk perception have found that value similarity determines trust in risk managers. Some studies have demonstrated that value similarity also influences trust in AI. AI is currently employed in a diverse range of domains, including asset management. However, little is known about the factors that influence trust in asset management-related AI. We developed an investment game and examined whether shared investing strategy with an AI advisor increased the participants’ trust in the AI. In this study, questionnaire data were analyzed (n=101), and it was revealed that shared investing strategy had no significant effect on the participants’ trust in AI. In addition, it had no effect on behavioral trust. Perceived ability had significantly positive effects on both subjective and behavioral trust. This paper also discusses the empirical implications of the findings.