著者
津山 孝人 中村 将太 乗冨 真理 Radka Vladkova
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>環境ストレスは光合成を阻害する。低温や乾燥により炭酸固定速度が低下すると光は過剰になり、葉緑体で活性酸素の生成を引き起こす。活性酸素は各種タンパク質および脂質を酸化し、光合成を不可逆的に阻害する。植物は光合成電子伝達反応を制御することで過剰光を安全に処理する。光合成電子伝達反応のうち、チラコイド膜における酸素還元反応は、その能力が被子植物よりも裸子植物の方が高い。酸素還元反応はフラボプロテインFlvによって触媒される。同タンパク質はらん藻から裸子植物まで保存されている。本研究ではまず、酸素還元反応の能力の評価法を確立するために、らん藻<i>Synechocystis</i> sp. PCC 6803のFlv1欠損株を作製した。酸素還元能は、暗適応後の試料に飽和光パルスを照射して誘導されるクロロフィル蛍光の強度の変化(蛍光減衰)により評価される。蛍光減衰は、野生株よりも欠損株の方が遅かった。これは、蛍光法により酸素還元能を正しく評価できることを示す証拠となる。一方、被子植物の酸素還元反応は小さいが、光化学系Ⅰ循環的電子伝達の能力は高い。裸子と被子、どちらの光合成制御が過剰光処理に有利かを議論する。</p>