著者
飯塚 和也 相蘇 春菜 大久保 達弘 逢澤 峰昭 平田 慶 石栗 太 横田 信三 吉澤 伸夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

福島原発事故により広範囲わたり飛散・拡散した人工放射性核種の中で重要な放射性セシウム(Cs)は,同族のアルカル金属であるカリウム(K)と化学的性質が類似しているため,植物体において,Kの輸送系により吸収されていると考えられている。Kの同位体である天然放射性核種であるK40の一部は,γ崩壊をする。そこで,樹体中に取込まれた放射性セシウムの挙動を調査するに当たり,K40に着目して,放射性核種ごとにCs134,Cs137とK40の比放射能(Bq/kgDW)の測定を行なった。材料は宇都宮大学演習林(空間線量率0.2~0.3μSv/h)のスギ,ナラ類,コシアブラである。供試材料の比放射能は,U8容器を用い,Ge検出器(SEIKO EG&G)で測定した。測定時間は,木材で6000S,葉で2000Sまたは4000Sとした。若齢木において,コシアブラの葉はナラ類のそれと比べ,非常に高い比放射性を示した。また,コシアブラの核種ごとの比放射能の季節変動では,晩秋は夏に比べ,Csは1.8倍の増加を示したが,K40では1.5倍の増加であった。
著者
野口 英之 ソウザ カシルダ アデリア サンパイオ シルバ ホジアニ オリベイラ オウリケ ルーカス 諏訪 錬平 梶本 卓也 石塚 森吉 ピント アルペルト カルロス マーティンス リマ アドリアーノ ジョゼ ノゲイラ サントス ジョアキン ヒグチ ニーロ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

細根は森林の炭素循環の重要な構成要素であるが、その動態を測定する各種の手法には、微環境の改変や測定値の信頼性、機材の価格等、それぞれに問題点がある。とくにアマゾン等の熱帯地域では細根の成長・枯死・分解のサイクルも早いと考えられるため、環境条件に応じた適切な測定方法の検討が不可欠である。本研究では、ブラジル・マナウス近郊の熱帯林において、砂質土壌が分布する斜面下部と、粘土質の土壌が分布する斜面上部で、フラットベッド・スキャナを用いて直径2 mm未満の細根の成長と枯死の動態を測定した。イングロースコアを用いた細根成長量の測定も併せて実施し、結果を比較した。また地形単位ごとに土壌含水率の変動も測定し、細根の動態との関係を検討した。スキャナによる測定では、とくに多雨期に斜面下部で活発な成長と枯死が観察されていたが、斜面上部では成長・枯死のサイクルは非常に緩慢であった。一方、イングロースコアによる測定では、斜面下部と上部で1年間の細根生長量にほとんど差がなかった。後者では埋設期間中の枯死分を測定できず、とくに斜面下部ではかなりの過小評価になっていた可能性が高い。
著者
大場 孝裕 大橋 正孝 山田 晋也 大竹 正剛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

鳥獣保護法が、鳥獣保護管理法に改正された。増え続けるニホンジカ(以下、シカ)に対しては、個体数削減のための管理、そのための捕獲事業の実施強化と、それを担う事業者制度の導入が明確化された。しかし、従前の銃やわなを用いた捕獲が困難な場所や状況も存在し、無理な捕獲強化は、人身事故の増加や、錯誤捕獲など他の動物への悪影響も懸念される。シカを減らすためには、従来の方法に加え、新たに安全で効率的な捕獲技術の開発が必要と考えた。<br> 反芻動物は、硝酸イオンを摂取すると、第一胃にいる微生物が、これを亜硝酸イオンに還元する。亜硝酸イオンは、血中で酸素運搬を担っているヘモグロビンと反応し、酸素運搬能力のないメトヘモグロビンに変える。進行すると酸素欠乏症に陥り、死に至ることもある。人間など単胃動物の酸性の胃では、亜硝酸イオンは増加しない。<br> シカ飼育個体の胃に硝酸イオンを注入し、致死量を明らかにした後、作成した硝酸塩添加飼料を採食したシカ野生個体の捕獲(致死)に成功した。この硝酸塩経口投与によるシカ捕獲について、インターネット上で行われた意識調査では、実用化すべきとの意見が過半数を占めた。
著者
柳田 邦玲雄 松本 武 岩岡 正博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

我が国には山間部,平地を問わず, 各地に山の神のための祭事,行事,儀礼,習慣など(以下,祭行事)が多様に存在する。人びとの信仰する山の神と生業とに関する研究では,林業と山の神との考察には至っていない。そこで,林業者の集団である森林組合において山の神はどのように信仰されているか,山の神のための祭行事の内容や山の神の特徴を通して明らかにすることを目的として,近畿地方にある89の森林組合を対象に電話調査を行った。その結果,88組合からデータを得て(回答率98%),所在地にマッピングし地域性の有無を明らかにした。88組合中32組合で祭行事が行なわれており,そのうち26組合には山に入らないという習慣があり,25組合には行事があった。また,祭行事を年に2回行う組合が5組合あった。祭行事の実施月は,5月にだけ行う1組合を除くと,11月,12月,1月の冬期であった。そのうち2組合では冬期と4月の年に2回行い,3組合では冬期に2回行っていた。祭行事の実施日は,奈良県,和歌山県の組合では7日,滋賀県,京都府,兵庫県の組合では9日であり,南部と北部に分けられた。山の神に「山の神」以外の名前はなかったが,21組合では女性格の神であった。
著者
日和佐 楓 嶋田 大作
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

長距離自然歩道は、環境省が全国に設置している歩道で、九州自然歩道もその一つである。豊かな自然環境に触れることによって、自然保護意識を高めることを目的にしており、環境政策の基盤的手段と位置づけられる。しかし、これまでの研究では、長距離自然歩道の利用者の特性や環境保護意識の解明は、充分に行われていない。本研究では、この課題について、九州自然歩道における利用者アンケート調査を実施して、その解明に取り組む。調査方法は、ルート上の山頂や登山口の3ヶ所で、調査員が自記式質問紙を配布・回収する形で2015年秋に行った。特に、環境意識については、一般的な環境意識と自然歩道利用者のそれを比較するため、内閣府の世論調査と同じ内容とした。その結果、九州自然歩道の利用者は、森林への親しみや生物多様性への取り組みに関して、世論調査よりも環境意識が高い結果となった。また、これらの項目では、九州自然歩道の利用頻度が高い利用者ほど環境意識も高くなることが分かった。他方、自然環境との関係性が低い循環型社会の形成に関する質問では、自然歩道利用者の環境意識において、世論調査との差や利用頻度との関係はみられなかった。
著者
山場 淳史 児玉 憲昭
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>広島県南部では元来,アカマツが優占する里山二次林が主要な植生景観であったが,現在ではそのほとんどが松枯れ被害を受け利用されないまま放置されている。部分的に市民・住民による維持管理作業が行われている箇所もあるものの,林業施策的にはほぼ取り残されている状態である。本報は,こうした地域における里山林利用を再構築する事例として,東広島市(旧黒瀬町・安芸津町を除く)と三原市大和町を所管する賀茂地方森林組合が主体となった取り組みを解説する。木の駅方式を一部取り入れ収集した木質バイオマスをチップ・ペレット化する拠点を整備するとともに,地域に立地する企業・団体の取り組み(小規模バイオマス発電や農畜産業など)と連携し地域内で循環することを目指している。併せて,その仕組みを補強し収益性をより高めるモデルとして,松枯れ跡林分に特徴的な未利用樹種ネズ(別名ネズミサシ:<i>Juniperus rigida</i>)の球果(香料)および幹材(木工用材)の新たな需要開拓を行い商品開発に繋げた過程を紹介する。そのうえで他地域との連携も含めた里山林利用の再構築のための将来的なフレームワークを提示する。</p>
著者
岡本 透 志知 幸治 池田 重人
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>東北地方の日本海側における江戸時代のスギの分布変化を解明するにあたり、秋田県を対象にして絵図の有効性を検討した。江戸時代初期の山地植生を正保国絵図とその郷帳により確認した。郷帳の山林の種別は、由利領は「芝山」「松山」など細分されていたが、秋田領は森林全般を示す「はへ山」のみであった。国絵図の描写を郷帳の記載と比較すると、由利領はおおむね山林種別ごとに描き分けられていた。一方、秋田領は「はへ山」にあたる場所に「杦山」「雑木」と注記があり、針葉樹と広葉樹が描き分けられていた。秋田藩では17世紀後半には森林資源の減少が進み、領内の森林資源の調査が進められた。山絵図が作成された地域では、その注記により当時の植生や林相の推測が可能である。また、同時期に作成数が増加した山論、水論などに関わる裁許絵図の中にも植生や土地利用が詳しく記載されるものがあり、利用することができる。秋田藩は19世紀始めに抜本的な林政改革を行い、山林区分ごとに絵図を数多く作成した。こうした大縮尺の山絵図では、描写による情報だけでなく、樹種や林相が注記されることが多いため、当時の植生の分布や状況を把握することができる。</p>
著者
芝 正己
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>「土地純収益説」と「森林純収益説」の論争の渦中の1885年, H.v.ザーリッシュの『森林美学』の初版が刊行された(1902年:第2版, 1911年:第3版が刊行)。この第2版の英訳本が米国ジョージア大学のW.クックJr.とD. ヴェーラウにより2008年に出版され,2018年の昨年,その日本語翻訳版が出版された。かって日本では,1918年に北大の新島善直と村山醸造が『森林美学』として, 当時のドイツの森林施業法や美学的分析法を北海道の天然林に応用を目指した。これは,我が国の森林美学に関する大系化された初めての書物であり,今田敬一による「森林美学の基本的問題の歴史と批判」の研究へと受け継げられることになる。近年,エコツーリズムやレクリエーション,森林セラピーなど生態系サービスの文化的価値が認識されてきており,森林美学はその価値を具現化するツールとして今日的意義を見出そうとしている。 本研究では、沖縄島北部やんばる地域の国立公園・世界自然遺産化の動向を念頭に、その現代的意義を論考する。</p>
著者
田中 洋太郎 勝山 正則 長野 龍平 鷹木 香菜 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

滋賀県南部の桐生試験地において、鉛直及び横方向の地中水移動過程における溶存有機態炭素の動態解明を目的に、土壌水、地下水、渓流水を採取し、三次元蛍光分析を行った。検出されたピークは、難分解性フルボ酸様物質(A)、易分解性フルボ酸様物質(C)、変質性フルボ酸様物質(M)、アミノ酸様物質(T)であった(Wu et al., 2009)。土壌水のフルボ酸様物質の蛍光強度は表層0-20cmの鉛直浸透過程で分解・吸着によって急低下した。下層では蛍光強度が表層に比べ緩やかに低下するとともに、ピークM,Tが複数回確認された。地下水帯表層でも強度の低下が継続した。しかし、地下水帯下層では再び蛍光強度が上昇し、ピークC,Mが下層土壌層 と同程度の強度になった。Katsuyama et al. (2005)は、地下水帯下層が斜面部で基岩に浸透した地下水によって涵養されることを示したが、本結果はこの水が土層の蛍光特性を保持したまま移動することを示唆する。飽和帯地下水帯での横方向移動から渓流流出に至る過程では蛍光強度の変動は小さかった。以上から、DOC蛍光特性は地下水帯に至るまでに概ね決まるとともに、渓流へのDOC供給源を考える場合、地下水帯の層位に着目した質の評価が必要である。
著者
岩澤 勝巳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

千葉県では、県中部~南部を中心にイノシシが生息域を拡大し、農作物の被害が大きな問題となっている。一方、千葉県では放置された竹林が周囲に拡大し、これらの竹林がイノシシの隠れ場所・餌場になって生息域の拡大要因の1つになっている可能性が指摘されている。そこで、対策の基礎資料とするため、モウソウチク林におけるイノシシの出没状況を無人センサーカメラで調査するとともに、イノシシによる掘り返し等の食害状況を調査し、隣接した人工林と比較することで、モウソウチク林の餌場としての評価を行った。 調査の結果、イノシシは人工林に比べてモウソウチク林に年間を通して多く出没し、特に晩秋と春に多く出没した。一方、掘り返しは夏と晩秋~春に多く認められ、夏には新しく伸長した地下茎を、晩秋~春にはまだ地下にあるタケノコを掘り出して食害していた。このことから、モウソウチク林は周辺に餌が多い秋などの時期を除いて、イノシシの重要な餌場になっていると考えられた。
著者
木庭 慧 竹内 啓恵 上原 巌
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

内閣府の調査(2011)によると、森林へ行く目的は「優れた風景、景観を楽しむ」との回答が最も多く、人がどのような森林景観を好むかを把握することは重要である。 そこで本研究では、森林において快適さを感じさせる要素のひとつであり、林相によって異なる色彩を切り口に、人がどのような色彩の森林を好むのか考察した。 調査は林相の異なる6プロットと、対照区(東京農業大学構内、和泉多摩川河川敷)において、写真撮影とアンケートを実施した。撮影した画像は代表色を抽出し、RGB値の三次元グラフ内での分布から色の豊かさを考察した。アンケート調査では、回答からプロット毎に全体の好感度と色の好感度を算出した。 その結果、林内では色の好感度と全体の好感度とで正の相関関係が認められたほか、対照区に比べ林内のプロットの方が、色の好感度が全体の好感度に影響を与えていた。 林相では、常緑樹林と対照的に落葉広葉樹林の好感度、色の豊かさが高く、より好まれることがわかった。一方の常緑樹林は、好感度と色の豊かさが共に低かったが、落葉広葉樹林を引き立てる重要な役割があり、両者のバランスが快適な林内景観を造る鍵になると示唆された。
著者
石橋 聰
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

森林を管理していくうえでその成立過程を知ることは重要であるが、北海道の針広混交林の場合少なからず火山の爆発による噴出物等の影響を受けており、その林分推移を調べることで施業への貴重な知見を得ることができると考えられる。そこで本研究では、北海道中部の十勝岳の爆発による泥流跡に成立した森林において61年間観察を続けたデータを用いて、その林分推移を解析した。調査地は十勝岳山麓標高700mの美瑛川左岸にあり、安政年間(1854~1860)の十勝岳爆発による泥流跡に成立した林分内にある。設定は1954(昭和29)年で、調査区面積は1ha(100m×100m)である。 その結果、立木本数は61年間減少傾向を示し、調査開始時のほぼ半分の本数となった。一方、林分材積は増加し続けていたが、10年前をピークに減少に転じた。これはこの10年間にエゾマツ、トドマツ大径木の枯死が多く発生したためであり、二次林が成熟林に移行しつつあるとみられる。また、林型については下層に広葉樹の更新木が見られることから、今後は単層林型から複層林型へ変化していくと予想される。
著者
栗生 剛 衣浦 晴生 中森 由美子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

紀伊半島で発生しているカシノナガキクイムシの防除手法を検討するため,樹種およびウバメガシ幹サイズの違いによる発生頭数,及びコナラ・ウバメガシが優占する林分での被害推移を調査した。発生頭数調査はカシナガ穿孔被害を受けた常緑広葉樹林(試験地A,B)で行った。試験地Aではコナラとウバメガシ穿入生存木に各5本,Bではウバメガシ大径木4本と小径木5本に羽化トラップを取り付け,6月から11月の毎週,トラップを回収した。また,試験地Aに調査区(面積0.3ha)を設定し,DBH10cm以上のブナ科樹木を対象に胸高直径,高さ2m以下の穿孔数を2年間調査した。ウバメガシの穿入生存木からの平均発生頭数はコナラよりも多く,ウバメガシの小径木(平均DBH11cm)においても,大径木(平均DBH21cm)と同程度の発生頭数であった。林分調査では,累積被害率は2年間共にシイ>コナラ>アラカシ>ウハ゛メカ゛シであった。1年目の平均穿孔数はコナラ>ウハ゛メカ゛シ>シイ>アラカシ,2年目はコナラ>アラカシ>ウハ゛メカ゛シ>シイとなった。これらから被害発生初期林分ではコナラ,ウバメガシの取り扱いが重要であると考えられた。
著者
甘粕 瑞季 下出 昭彦 古川 康二 芦部 文一朗 松見 繁
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.655, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

クロモジ(Lindera umbellata Thunb.)はクスノキ科の落葉低木で、日本固有種の香木として知られており、枝から採れる精油はリラックス作用や抗菌作用があり、アロマテラピーなどにも活用されている。クロモジ精油の主成分はリナロールであるが、その組成は産地によって大きく異なることが知られている。今回、組成の異なるクロモジ精油について6種の細菌に対する抗菌活性を測定し、比較した。産地の異なるクロモジの枝から水蒸気蒸留によって精油を得、ジンジバリス菌、ミュータンス菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、大腸菌及びモラクセラ菌に対し最小発育阻止濃度試験又はハロー試験により抗菌作用を評価した。その結果、大腸菌を除く5種の菌に対してクロモジ精油が抗菌作用を示した。更に、ミュータンス菌及び黄色ブドウ球菌に対してはリナロール含量の高いクロモジ精油の方がより強い抗菌活性を示した。以上より、クロモジ精油は幅広い抗菌活性を有し、成分の組成の違いによりその抗菌活性は異なると考えられた。
著者
高取 千佳 謝 知秋 森山 雅雄 三宅 良尚 香坂 玲
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.34, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

国内の中山間地域では、人口減少・農業従事者の高齢化に伴い、耕作放棄される農地が増加し、獣害や生物多様性の低下などの環境面、景観面への悪影響が課題となっている。将来の農地の活用方針を定める上では、現状の耕作放棄地の分布状況の把握方法の定量化、およびその立地条件の把握が不可欠である。そこで、本研究では、三重県松阪市櫛田川流域を中心に、農地の生産、耕作放棄地の分布状況調査及び立地条件の把握、リモートセンシングデータの活用による自動化についての検討を行った。第一に、農地の管理労働量について統計資料の調査、農林業の管理者の把握およびヒアリング調査を基に、農地単位面積当たりの労働力・コストの算出、耕作放棄地の把握を行った。第二に、Sentinel-2のリモートセンシングデータを基に、合成開口レーダ及び光学センサの年間の変化量を分析し、耕作放棄されている箇所の自動的な把握を行い、ヒアリングによって得られた管理労働量および耕作放棄地との比較分析を行った。第三に、以上のデータに対し、平野部から中山間部に至る農地の管理労働量に、立地条件(地形・水系・集落や道路からの距離等)が与える影響について明らかとした。
著者
柳澤 賢一 小山 泰弘
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.582, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

硫黄を有効成分とした塗布型忌避剤をスギやヒノキの成木の根元付近に塗布することにより、ツキノワグマによる剥皮害本数が有意に低減することが確認されている。しかし、豪雪地帯で根曲がり木が多く、剥皮害が激害化している栄村秋山の試験地においては、根曲がり部を足掛かりにして立ち上がったクマが、忌避剤を塗布していない高さで剥皮していた。そこで本試験では、忌避剤を根元だけではなく、地上高1m程度の高さにも点状塗布することで、クマの剥皮害をより効果的に防除できるかを検証した。忌避剤を塗布しない無処理区、根元のみに塗布した区、根元と地上1m程度の山側樹幹部に塗布した区を単木ごとランダムに設け、塗布から約5か月後の2022年10月上旬に被害調査を行った結果、被害率はそれぞれ21.8%、4.1%、1.4%となり、根元と山側樹幹部に忌避剤を塗布することで被害が有意に低下した。また、試験地内に設置した自動撮影カメラの画像を解析した結果、2021年と比較してクマの出没頻度が少なくなった。本剤を適切な方法で処理することにより、クマの剥皮害を有効に防除するとともに出没を抑えられる可能性があった。
著者
小林 慧人 久本 洋子 福島 慶太郎 鈴木 重雄 河合 洋人 小林 剛
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.461, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

タケ類(イネ科タケ亜科)の生活史において有性繁殖は極めて稀なイベントであり、開花周期や開花習性や更新様式に関する知見は未だ限られる。一方、2010年代から現在にかけて、およそ120年周期とみなされるマダケ属ハチクの大規模開花が生じており、その実態解明の好機を迎えている。予測困難なタケ類の有性繁殖の機会を広域に把握するためには、研究者のみならず多くの市民の協力を得た記録や情報共有が有効な手段の一つになると考えられる。ハチクだけでなくさまざまなタケ種にかかわる有用な情報を蓄積するため、発表者らは Google MapやGoogle Formなどを活用し、市民参加による情報の収集・共有システムを試行した。研究者による現地観察、メディアの報道、SNSや各種アプリに挙げられた記載などに基づいて開花にかかわる情報を2019年から収集した。その結果、現段階で西日本を主とする日本各地から1400件に及ぶ情報を得た。情報の約9割はハチク類の開花であり、タケ類の有性繁殖の理解の基礎をなす情報も含まれた。本発表では、成果の報告にとどまらず、市民の協力によって得られる情報の学術的な活用のあり方や、今後の展望についても議論する。